キヤノン御手洗会長は「偽装請負の率先解消を」

日商の山口会頭が、日本経団連の御手洗会長にたいして、偽装請負を「率先して解消すべき」と発言。

こんなふうに日商会頭が日本経団連会長を批判するのは、9月に、キヤノン宇都宮光学機器事業所が偽装請負で栃木労働局から是正指導をうけていたから。民主党、共産党など野党4党が、偽装請負問題で御手洗会長の国会参考人招致を求める方針を明らかにしているため。財界トップの国会招致という”不祥事”を避けるため、山口会頭が、招致される前に問題を解決すべきだとコメントしたもの。

日商会頭「率先して解消を」 キヤノンの偽装請負(朝日新聞)

日商会頭「率先して解消を」 キヤノンの偽装請負
[asahi.com 2007年10月04日18時56分]

 日本商工会議所の山口信夫会頭は4日の記者会見で、違法な労働形態である「偽装請負」で行政指導を受けたキヤノンの御手洗冨士夫会長(日本経団連会長)の参考人招致を民主党が求めていることについて「(キヤノンが)率先して(違法状態を)解消し、民主党の理解を得ればいいのではないか」と語った。
 キヤノンは違法状態の解消や非正規社員の直接雇用などに取り組んでいるが、山口氏の発言はそうした作業を急ぐよう促したものとみられる。
 さらに山口氏は「財界の代表だから、そういう(国会などの)場ではないところで解決した方がいい。政局に(利用)されるのは気の毒だ」と御手洗氏の参考人招致に否定的な考えを強調した。

で、問題のキヤノンの偽装請負事件とは何か、インターネットを調べてみました。

「偽装請負」内部告発者らを直接雇用 キヤノンが表明(朝日新聞 8/29)
栃木労働局、キヤノンに是正指導 宇都宮で偽装請負(朝日新聞 9/13)
グッドウィル系人材会社にも指導 キヤノン偽装請負(朝日新聞 9/14)

「偽装請負」内部告発者らを直接雇用 キヤノンが表明
[asahi.com 2007年08月29日]

 キヤノン宇都宮光学機器事業所(宇都宮市)で働く請負労働者ら82人について、キヤノンは29日、期間社員(期間工)としての直接雇用を申し入れる方針を明らかにした。請負労働者の大野秀之さん(32)らが違法な偽装請負で長年使用されてきたとして正社員としての雇用を求めていた。同社は「事態の早期解決を図る」と説明したが、最長2年11カ月で職を失う可能性のある期間工にとどまったことに、労働者側からはなお不安の声もあがっている。
 キヤノンによると、昨年5月以降に離職した19人を含む請負労働者82人に10月1日付で期間工として採用したいと申し入れる。契約期間は5カ月で、最長2年11カ月まで更新する。正社員への登用試験も受けられるが、何人が正社員になれるかは「めどがたたない」という。請負会社とキヤノンの契約は終了するため、請負労働者が職場に残るには直接雇用に応じなければならない。
 キヤノングループでは昨年、労働者の派遣を受けている実態があるのに形式的には「請負契約」を結ぶ偽装請負が各地の工場で発覚。大野さんらは、自分たちも偽装請負の状態で働かされているとして昨年10月、職場の偽装請負を栃木労働局に申告し、正社員雇用をキヤノンに指導するよう求めていたが、まだ結論は出ていない。
 栃木県庁で記者会見したキヤノンの諸江昭彦(あきよし)常務は「労働局への申告から10カ月が経過し、直接雇用への社会の関心、キヤノンに対する注目を考慮した」と述べた。
 大野さんは「不安はあるが、正社員になる話に期待して申し入れを受けようと思う」と述べた。栃木労働局には引き続き、偽装請負の認定と正社員採用の指導を求めていくという。

栃木労働局、キヤノンに是正指導 宇都宮で偽装請負
[asahi.com 2007年09月13日]

 キヤノンの宇都宮光学機器事業所で違法な偽装請負があったとして、厚生労働省栃木労働局は12日、労働者派遣法にもとづき是正を指導した。同事業所で働く請負労働者が昨年10月、労働局に違反を申告していたが、キヤノンはこれまで同事業所での偽装請負を否定。請負労働者でつくる労働組合との団体交渉にも応じていなかった。
 キヤノンの製造現場では、実際は派遣労働者として働かせているのに、派遣元の人材会社との間で形式的に請負契約を結ぶ偽装請負が問題化。今年2月には、野党各党が御手洗冨士夫会長の国会への参考人招致を要求。同事業所の請負労働者の大野秀之さん(32)が、衆院予算委員会の公聴会で実態を語った。
 キヤノン広報部によると、12日夕、労働局から文書で「労働者派遣に該当し、請負としては不適正」と指摘され、「状況を解消すること」「全社にわたって同様の状況がないか点検すること」を求められた。
 偽装請負で労働局がキヤノングループに文書指導をするのは8度目だが、これまでの指導は03?05年に行われている。
 キヤノンは同事業所での偽装請負を否定する一方で、8月末、大野さんら82人を対象に、期間社員としての直接雇用を申し入れた。キヤノンはその際、「社会の関心を考慮して、事態の早期解決を図る」と説明していた。
 労働者側によると、長い人では約10年にわたって請負会社から派遣され、キヤノンの正社員や他の請負会社の社員と混在して働いていた。労働者派遣法では、製造業への派遣期間は最長1?3年に制限されている。

グッドウィル系人材会社にも指導 キヤノン偽装請負
[asahi.com 2007年09月14日07時54分]

 キヤノンの宇都宮光学機器事業所における偽装請負問題で、グッドウィル・グループ(GWG)の人材会社「ハイライン」(旧コラボレート、東京都港区)が、栃木労働局から労働者派遣法にもとづく是正指導を受けていたことがわかった。
 ハイラインによると、05年5月から06年10月17日まで、同事業所で不適正な請負状況であったことを指摘されたという。労働者が偽装請負を労働局に申告した直後の同月末、キヤノンとの契約をうち切っており、「現在は不適正な請負契約はない」と説明している。
 ハイラインの前身のコラボレートは、GWGが同月末に買収したクリスタルグループの中核企業で、同月3日に大阪労働局から偽装請負に絡む初の事業停止命令を受けている。
 同事業所の偽装請負を巡っては、人材会社「アイライン」(宇都宮市)も指導を受けた。
 厚生労働省で13日会見したキヤノン非正規労働者組合の大野秀之さんは「キヤノンなどが指導されても、雇用が安定しないと意味がない。正社員採用をキヤノンに求めていく」と述べた。

キヤノン偽装請負:「不安定、変わらぬ」 直接雇用、一歩前進の提案だが/栃木(毎日新聞 8/30)
キヤノン偽装請負:栃木労働局が是正指導 全社的な点検要請(毎日新聞 9/13)
キヤノン偽装請負:栃木労働局・是正指導 安易なコスト削減、警鐘(毎日新聞 9/14)
キヤノン偽装請負:「やっと認められた」 栃木労働局の是正指導に労組/栃木(毎日新聞 9/14)

キヤノン偽装請負:「不安定、変わらぬ」 直接雇用、一歩前進の提案だが /栃木
[毎日新聞 2007年8月30日]

 「希望も不安も増えた」「根本的な悩みは解決していない」。大手精密機器メーカー・キヤノンが29日、「偽装請負」問題解決のため、宇都宮光学機器事業所(宇都宮市清原工業団地)で働く請負労働者82人について、「期間社員」として直接雇用する方針を発表した。正社員を目指す請負労働者にとって一歩前進の提案だが、契約期間は最長2年11カ月。「雇用の不安定さに変わりはない」と、将来を悲観する声も上がった。
 キヤノンの提案は、基本時給を1300円とし、通常の期間社員に比べ100円増額した。継続して業務にあたることを考慮したという。標準的な月収は約28万円、年収ベースでは約360万円。最初の契約期間は5カ月で、最長2年11カ月まで半年ごとに更新する。この間に、正社員登用制度の適用があるが、採用人数は「分からないので、コメントできない」としている。
 これに対し、82人中22人が加入する「キヤノン非正規労働者組合」の宇都宮支部は、「拒否すると、職場に残れない」を理由に同意する。現在、人材派遣会社から受け取っている月給は29万?22万5000円、年収ベースでは400万?270万円といい、福利厚生を含め待遇が改善される組合員も多いという。
 しかし、同労組の山崎富美子執行委員は「雇用の不安定さは一切ぬぐえず、将来を見据えることができない。決してうれしい話ではない」と述べた。期間社員として採用後、団体交渉で正社員化を求めていくという。
 大野秀之支部長らは昨年10月、請負労働者が派遣労働と同じようにキヤノンの指揮下で働く「偽装請負」が続いていたとして、栃木労働局に是正指導を求める申告書を提出したが、まだ結論が出ていない。大野支部長は「5カ月後に契約更新があるか不安だ」と話した。【沢田石洋史】

キヤノン偽装請負:栃木労働局が是正指導 全社的な点検要請
[毎日新聞 2007年9月13日 東京朝刊]

 キヤノンの宇都宮光学機器事業所(宇都宮市清原工業団地)の請負労働者が「偽装請負」是正を申し立てていた問題で、栃木労働局は12日、06年10月まで偽装請負状態にあったと認定、キヤノンに是正指導し、全社的に偽装請負がないか点検するよう文書で求めた。
 請負会社側が業務上の指揮命令をするのが適正だが、同事業所ではキヤノンの指揮で働く慣行が続いており、是正指導では「不適正であり、解消すること」を求めている。
 同社広報部は「真摯(しんし)に受け止め、全社点検し、順法状態を維持していきたい」と話した。

キヤノン偽装請負:栃木労働局・是正指導 安易なコスト削減、警鐘
[毎日新聞 2007年9月14日 東京朝刊]

 光学機器大手、キヤノンの宇都宮光学機器事業所が栃木労働局から「偽装請負」の是正指導を受けた問題は、安価な労働力として製造現場に請負労働者や派遣社員を広く受け入れてきた国内メーカーに、大きな警鐘を鳴らした。キヤノンの御手洗冨士夫会長は、日本経団連会長。経済界を代表するトップ企業の違法行為を国が認定した形だけに、他のメーカーも雇用形態の見直しなど抜本的な対策を求められそうだ。
 偽装請負は、実態は派遣労働なのに、派遣業者と業務請負契約を結んだかのように装う行為。派遣の場合、一定の派遣期間を超えるとメーカー側は労働者に直接雇用を申し入れなければならない。しかし、業務請負の場合、労働者の指揮・監督責任を派遣業者が負うため派遣期間の縛りがない。コスト削減のため製造現場の非正規社員化を進めるメーカーにとって、人件費を低く抑えられるメリットがあった。
 「偽装請負はない」としてきたキヤノンも問題発覚後の今年8月、同事業所の請負労働者82人に対し「期間社員」として直接雇用する方針を申し入れた。国は偽装請負の防止に向けたガイドラインを作成するなど労働者の処遇に厳しい目を光らせており、対応が遅れたメーカーは、企業イメージの低下など厳しい批判にさらされそうだ。【赤間清広】

キヤノン偽装請負:「やっと認められた」 栃木労働局の是正指導に労組/栃木
[毎日新聞 2007年9月14日]

 大手精密機器メーカー・キヤノンの宇都宮光学機器事業所(宇都宮市清原工業団地)を巡る偽装請負問題で、栃木労働局は12日、是正指導を文書で行い、全社的に偽装請負状態がないか点検するよう求めた。偽装請負を否定し続けていたキヤノン広報部は「真摯(しんし)に受け止める」とコメント。昨年10月、偽装請負解消を同労働局に申し立てていた「キヤノン非正規労働者組合」の大野秀之・宇都宮支部長は「やっと認められた」と語った。
 是正指導は、同社が「請負」として行っていた労働実態は、労働者派遣法に違反する「派遣」に該当すると判断。「不適正であり、解消すること」を求めている。違法状態は、申し立てがあった昨年10月まで続いていたと指摘している。適正な請負では、請負会社側が業務の指揮命令をするが、同事業所では派遣と同様、キヤノンの指揮下で働く慣行が続いていた。
 一般的に派遣労働の場合、労働者の安全確保義務などが派遣元と派遣先の双方にある。しかし、請負に「偽装」することで、派遣先が雇用上の義務を免れようとする場合がある。さらに、派遣労働が一定期間続くと、直接雇用の申し入れ義務が派遣先に発生するため、人件費抑制を目指した偽装請負が社会問題化していた。
 キヤノンは是正指導に先立ち今年8月、当該職場で働いていた82人に対し、契約期間が最長2年11カ月の「期間社員」として直接雇用を申し入れていた。大野支部長は「直接雇用は実現できたが、引き続き正社員化を求めていく」と話した。【沢田石洋史】

キヤノンによる「直接雇用の申し入れ」は以下のとおり。

キヤノン宇都宮光学機器事業所における直接雇用の申入れについて

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