民主党の「憲法提言」は、2005年10月31日に同党の憲法調査会で承認されたもの。小沢代表のISAF(国際治安支援部隊)への自衛隊派遣発言を念頭に、あらためて読んでみました。
民主党は、日本の固有の自衛権について、それは「制約された自衛権」だとしながら、その自衛権の発動は「必要最小限の武力の行使」でなければならない、「武力の行使については強い抑制的姿勢の下に置かれるべきである」という形で、「武力の行使」そのものを認める立場を明確に宣言している。
さらに、「自衛権の行使はもとより、国連が主導する集団安全保障活動への関与のあり方について、不断に強い議論に晒されてきた」として、「自衛権の行使」と「国連が主導する集団安全保障活動」とを対立させて、後者は「自衛権の行使」ではないという論理を展開している。
そのうえで、次のように述べて、「武力の行使」を含む「集団安全保障活動」への参加を認める立場を宣言している。
<3>国連の集団安全保障活動を明確に位置づける
憲法に何らかの形で、国連が主導する集団安全保障活動への参加を位置づけ、曖昧で恣意的な解釈を排除し、明確な規定を設ける。これにより、国際連合における正統な意志決定に基づく安全保障活動とその他の活動を明確に区分し、後者に対しては日本国民の意志としてこれに参加しないことを明確にする。こうした姿勢に基づき、現状において国連集団安全保障活動の一環として展開されている国連多国籍軍の活動や国連平和維持活動(PKO)への参加を可能にする。それらは、その活動の範囲内においては集団安全保障活動としての武力の行使をも含むものであるが、その関与の程度については日本国が自主的に選択する。
つまり、「国際連合における正統な意志決定」にもとづくものであれば、国連PKOだけでなく、「多国籍軍」であっても、自衛隊の参加を可能だ、というのである。小沢代表がISAFへの参加を打ち出したのも、この考え方に立ったもの。ISAFが実際に武力行使を含むものであっても、国連決議にもとづいているのだから自衛隊の参加は可能であるということになる訳である。
繰り返しになるけれども、民主党の議論は、国連PKOへの参加に限られていない。湾岸戦争時の多国籍軍のようなケースでも、自衛隊の参加は可能としており、自衛隊の海外での武力行使に道を開くものになっていことに注意しておく必要がある。
しかし、今回の小沢氏の発言にかんしていえば、自衛隊のISAFへの派遣は、現行憲法下でのこととして提起されている。現行憲法下で、「国際連合における正当な意思決定」にもとづく「集団安全保障活動」への参加が可能だというのであれば、なぜ、「憲法提言」で、憲法改正すべき点として提起されているのか? 憲法改正しなければ、「集団的安全保障」への参加がかなわないというのであれば、ISAFへの自衛隊派遣がなぜ憲法上許されることになるのか? いたって面妖な話である。