開き直り、逃げ切りはかる文科省

沖縄戦での軍による「集団自決」強制の記述を削除させた教科書検定について、渡海文科相は、検定意見の撤回拒否を明言。多少の表現修正でお茶を濁すつもりらしい。

他方で、教科書検定の「部会」議事要旨の公開について検討を開始したようだが、これはあくまで次回以降のこと。今回の検定については、撤回もしなければ公開もしない、開き直ったまま逃げ切りをはかるつもり。

文科相、撤回拒否を明言/記述修正は示唆
[沖縄タイムス 2007年10月12日(金)朝刊]

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、沖縄側から検定意見の撤回要求が出ていることについて、渡海紀三朗文部科学相は「検定意見そのものを撤回することにならないのではないか」と述べ、撤回には応じない考えを初めて明言した。11日午後の衆院予算委員会で赤嶺政賢氏(共産)の質問に答えた。
 文部科学省の金森越哉初等中等教育局長は、検定意見を決めた教科用図書検定調査審議会のメンバーに沖縄戦の専門家がいたのか問われたのに対し、「沖縄戦を専門に研究している委員はいなかったと承知している。(沖縄戦の記述に)委員から特段の異論はなかった」と述べ、文科省の調査官が提出した意見が、そのまま審議会で了承されたことを認めた。
 一方で、金森局長は「審議会委員は古代から現代までの各分野でバランスよく構成され、学術的・専門的な審議が行われた。政治的・行政的意図が入り込む余地はない」との認識を示した。
 また、調査官が審議会に提出する意見書をまとめる前に、専門家の意見を聞く手続きを踏んだかただされたのに対し、金森局長は「意見は出されていない」と回答。
 赤嶺氏は「学術的・専門的と言いながら、県民の検証には耐えられない意見が撤回されないのはおかしい」と批判した。
 渡海文科相は、教科書会社から訂正申請があった場合の対応について「ルールにのっとり、私が再度承認することが可能だが、その際に政治的介入を許さない意味でも再度、審議会に審議していただく」と述べ、審議会の議論で記述修正がされる可能性をあらためて示した。

↓検定意見の撤回拒否にたいする沖縄の怒り。

「絶対に撤回させる」/「自決」体験者怒り
[沖縄タイムス 2007年10月12日(金)朝刊]

 「要請行動で絶対に撤回させる」「大臣の資質に欠ける」――。検定意見撤回を求める県民の要請に対し、かたくなな姿勢を崩さずに国会答弁をした渡海紀三朗文部科学大臣に対し、15、16の両日に上京して検定意見撤回を訴える県民大会実行委員会の関係者や「集団自決(強制集団死)」の研究者や体験者からは怒りの声が上がった。
 県民大会実行委副委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長は「審議委員をひな壇のお飾りにした上で審議をせずに教科書調査官の検定意見を通していながら、撤回に応じないのは絶対に許せない」と憤る。「国会の場でもうそを突き通すなら誰が文科相でも変わらない。政府の大うそ、不正を撤回まで追及したい」と要請行動に向け、決意を新たにした。
 同じく副委員長の小渡ハル子県婦人連合会長(78)は、「ばかにするにもほどがある。どうしても納得がいかない」と語気を強めた。小渡会長自身は、新潟県で行われる全国地域婦人団体研究大会に出席し、教科書問題で検定意見撤回を求める決議を提起するため要請行動には参加できない。「全国の会員350万人の総意として決議し、総理や大臣に声を届けるようにする。全国に支援を広げていくことも必要」と多方面から声を上げることの重要性を指摘した。
 座間味島での「集団自決」の体験者、宮城恒彦さん(73)は「ただ『撤回できない』と言われても、納得できる県民は誰もいない。過ちを直すだけなのに、なぜ素直に、元通りにできないのか」と反発。「沖縄を見下しているような、差別的なものを感じる。沖縄戦の専門家を審議員に入れるという話も、沖縄だけの問題に封じ込めようとしているようだ」と怒りをあらわにした。「教科書が元通りになるまで、徹底して戦うしかない」と力強く話した。
 「政治介入はできない」とする渡海文科相の姿勢に対し「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史琉球大准教授は「歴史の事実判断が間違っているのを指摘することがなぜ政治介入にあたるのか」と批判。「行政の長、監督責任者として審議会の運用の間違いを正すことがまったく理解できないのは資質がない証拠だ」と分析した。

仲里県議長が依頼文を送付 44都道府県議会へ

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍強制の記述が削除された問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は11日までに、44都道府県議長に対し、政府に検定意見撤回と記述回復を求める意見書可決を求める依頼文を送付した。
 送付先は8日までに意見書を可決した奈良県、京都府を除いた。

「沖縄条項」新設 実行委が要望へ

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が11日、県議会で開かれ、15、16日の要請行動で、面会を求めている福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相、町村信孝官房長官への要望書を確認した。検定意見撤回と記述回復、審議会の再審議、沖縄戦研究家の参加に加え、沖縄戦に関する記述に配慮する「沖縄条項」の新設などを求める。11日までに121人が東京での要請行動への参加を決めている。(一部地域既報)

↓実際の検定審査官と「委員」とのやりとりは、部会の下にある「小委員会」でおこなわれるで、「部会」議事要旨を公開しても、実際の検定審議のプロセスは明らかになりません。

教科書検定「部会」要旨公開へ
文科省検討 次回以降に反映
[沖縄タイムス 2007年10月10日(水)夕刊]

 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省が、原則非公開としている教科書検定審議会のうち、実質的に教科ごとの検定の合否を判断している「部会」の議事要旨の公開について検討を始めることが10日、分かった。文科省は今回の問題が決着した後に具体的な検討を進め、次回以降の審議会運営に反映させたい考え。
 審議会は全体で行う「総会」を頂点とし、その下の教科ごとの「部会」、さらに専門ごとに内容を精査する「小委員会」で構成されている。
 議事はすべて非公開となっているほか、議事録も総会の会長あいさつや部会での審議結果の要旨を公開しているだけで、委員の発言内容や合否を判断した根拠などは一切、明らかにならない仕組みになっている。
 また審議会の委員に、沖縄の近現代史の専門家が選ばれていないとの指摘を受けていることから、文科省は委員の選任方法や専門家の意見聴取についても検討課題としている。
 渡海紀三朗文科相は9日の閣議後の記者会見で「今までのやり方でよかったのかどうかも含めて、少し検討したい」と発言。議事の全面的な公開については消極的な姿勢を示したが、審議終了後の議事録公開は検討の余地があるとの考えを示していた。

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