この間もとりあげた、共産党の佐々木憲昭議員の予算委員会での質問ですが、そのなかで佐々木議員は、次のように発言されていました。
佐々木 お話を聞いていると、国民の税負担はどんどん増えるのが当たり前だ、大企業の税負担はどんどん減らすのが当たり前だと。何が常識ですか。国民はみんな怒っているんですよ。
政府税調の資料でも、日本の企業負担は、例えば自動車製造業はフランスの73%です。ドイツの82%。エレクトロニクス製造業では、フランスの68%、ドイツの87%。日本の方が負担が軽いんです。それなのに、まだ減税をする。これは、全く、国民からいって非常識なやり方です。
なに?! 日本の企業負担はフランスやドイツの7?8割しかない?! しかもそれが、政府税調の資料に載っている?!
というので、それを探してみました。で、ようやく見つけたのが↓これ。
今年10月2日の政府税調第16回企画会合に提出された資料です。それの、[企画16-2]の「分割PDF」の02という資料の3ページ目に出てきます。
http://www.cao.go.jp/zeicho/siryou/pdf/k16kai16-2-2.pdf
そこに「法人所得課税及び社会保険料の法人負担の国際比較に関する調査」というのが出ています。
それによると、「総売り上げから社会保障負担以外の費用を引いた額」に占める法人所得課税および社会保障負担の割合は、次の通りです。金融(銀行)業の場合だけ、ドイツの方が日本より負担率が小さくなっていますが、それ以外はみんな日本より負担率は高くなっています。
日本 | ドイツ | フランス | |
自動車製造業 | 30.4% | 36.9% | 41.6% |
エレクトロニクス製造業 | 33.3% | 38.1% | 49.2% |
情報サービス業 | 44.2% | 55.7% | 70.1% |
金融(銀行)業 | 26.3% | 23.8% | 31.3% |
これを、ドイツ、フランスの数値をもとにして逆算すると、佐々木憲昭議員が質問であげていた比率が出ます。
ドイツを基準にすると | フランスを基準にすると | |
自動車製造業 | 82% | 73% |
エレクトロニクス製造業 | 87% | 68% |
情報サービス業 | 79% | 63% |
金融(銀行)業 | 111% | 84% |
つまり、日本の企業負担は重い、というのはウソであるということ。それから、日本の企業だって、ドイツやフランスに進出したときには、きちんとこれだけの負担をして、なおかつちゃんと利益を上げているのだから、日本国内だって、もう少し負担できるし、していいはずだ、ということです。
ちなみに、昨年6月の「第46回総会・第55回基礎問題小委員会」の資料のなかには、こんな資料も含まれています。
http://www.cao.go.jp/zeicho/siryou/pdf/b46kai1.pdf
↑これのPDFで17ページ目(資料のページ付けでは14ページ)に、「法人税と社会保険料の負担の国際比較」というグラフが出ています。
その数値をつかって、法人税+社会保険料事業主負担の合計額の対GDP比を計算すると、以下のようになります。
法人所得税負担 | 社会保険料事業主負担 | 合計 | |
日本(2003年) | 3.3% | 4.4% | 7.7% |
ドイツ(2000年) | 1.8% | 7.1% | 8.9% |
イタリア(2003年) | 2.9% | 8.9% | 11.8% |
フランス(2003年) | 2.5% | 11.1% | 13.6% |
注)データの出所は、OECD“Revenue Statistics 1965-2004-2005Edition”。数値は、法人所得税、社会保険料事業主負担を名目GDPで割った数値。
要するに法人税+社会保険料の企業負担は、日本は7.7%。それに対して、フランスは13.6%、イタリア11.8%、ドイツ8.9%で、フランスやイタリア、ドイツの企業は、日本の企業よりもしっかりと税+社会保険料を負担している、ということです。法人税だけを比べると、たしかに日本の方が負担割合は大きくなっていますが、社会保険料の負担が軽いので、実際に企業が全体として負担する分は、はるかに少なくなっています。
にもかかわらず、法人税率をもっと下げよう、社会保険を全額税でまかなうようにして、企業の保険料負担をなくしてしまおう、こういう要求を大企業・財界は繰り返し繰り返し主張しています。ずいぶんと身勝手な主張だと思うし、日本国内ではそんなことをいいながら、ヨーロッパでは、ちゃんと必要な負担を払ってるわけだから、二重に国民を欺くものだと思います。