と思ったのですが、どうもそうではないようで。
米国防総省が、インド洋で海上自衛隊から補給を受けた燃料がどのように使われたかについて、声明を発表。防衛省は、これで「転用は否定された」と言っているけれど、
- 任務ごとに追跡するのは困難
- タンクに入ってしまえば後は区別できない
- 補給艦が補給を受けた分は、さらにどこに補給され、何に使われたか追跡は一層困難
- 米艦船はもともと複数の任務に従事している
というのだから、誰が読んでも、「何に使ったかは分かりません」という回答でしかない。
唯一はっきりしているのは、「米政府はOEFに従事する艦艇だけに燃料が供給されるという日本政府との合意に忠実に従っていると確信する」という根拠のない確信だけ。わざわざ声明を出して「確信している」といわなければならないということ自体が、転用を否定できないことの証拠でもある。
海自給油:使途の完全特定は困難 米国防総省が説明(毎日新聞)
声明は転用疑惑を否定、政府が見解(TBS News-i)
「同盟国を信頼するのは当然」 米声明で石破防衛相(朝日新聞)
海自給油:使途の完全特定は困難 米国防総省が説明
[毎日新聞 2007年10月19日 1時39分 (最終更新時間 10月19日 10時27分)]【ワシントン及川正也】米国防総省は18日、インド洋での海上自衛隊からの補給燃料について、すべての米艦艇がアフガニスタンでの「不朽の自由作戦」(OEF)支援のためだったとし、イラク戦争への燃料転用疑惑を否定する声明を発表した。ただ、艦艇が「複数の任務」を受けることもあり、任務ごとの追跡調査は「困難」と指摘した。補給燃料の使途を完全に特定できなかったことで、給油活動継続のための「新テロ対策特別措置法案」の審議にも影響を与えそうだ。
声明では「日本から給油されたすべての米艦艇はOEF支援のために補給を受けたことを確認した」と転用を否定。米政府は、OEF以外には使用しないとする日米間の合意に「忠実に従っていると確信している」と述べた。
一方、使途の特定が困難な理由として(1)補給燃料は個別のタンクに貯蔵されず、他からの燃料と混合される(2)給油を受けた艦艇が別の艦艇に補給することが一般的に行われる(3)同一艦艇が複数の任務に従事することがある??などを挙げた。■米国防総省声明の要旨は次の通り。
一、米政府は、日本から給油されたすべての米艦艇は「不朽の自由作戦」(OEF)支援のために補給を受けたことを日本政府に確認する。
一、供給された燃料を、任務ごとに追跡することは困難だ。
一、供給された燃料は個別のタンクに分離に貯蔵されておらず、すべての燃料の一部となっている。
一、燃料が補給艦に給油され、そこから他の艦艇に供給された場合、追跡はより困難になる。
一、艦艇は複数の任務に参加していることもある。
一、米政府はOEFに従事する艦艇だけに燃料が供給されるという日本政府との合意に忠実に従っていると確信する。
一、海自の給油活動は日本が設定したOEF支援活動区域内で実施された。
【ワシントン及川正也】
声明は転用疑惑を否定、政府が見解
[TBS News-i 2007年10月19日11:22]日本政府は、国防総省の声明について転用疑惑を否定したものという受け止めをしていて、高村外務大臣は、逆に疑惑追及を続ける民主党など野党側を批判しました。
「結論は、流用とか転用とかを 否定したものであるというふうに受け止めている」(町村信孝 官房長官)
「(米側が)使った油のうち、日本が提供した油はほんの一部だということを発表した。(野党から)子供だましのことが要求されているから子供だましの議論に入ってしまった」(高村正彦 外相)
一方、野党側は、この声明により疑惑が深まったと攻勢を強めるのは確実で、自衛隊の補給活動を巡る与野党の攻防は激しくなりそうです。
「同盟国を信頼するのは当然」 米声明で石破防衛相
[asahi.com 2007年10月19日10時55分]石破防衛相は19日、閣議後の記者会見で、米国防総省がインド洋で海上自衛隊が給油した燃料の転用疑惑を否定する一方で、使途をたどるのは複雑だとする声明を発表したことについて、「唯一の同盟国である米国の表明を信頼するのは当然、政府としてあるべきこと」と述べた。
高村外相も「あれで十分なのではないか。米国が(対テロ作戦に)全部使ったうち、日本から提供したのはほんの一部だと発表した。これが大人の議論だ」と述べ、転用疑惑を否定する材料になるとの認識を示した。町村官房長官は「結論は流用や転用を否定したものと受け止めている」としながらも、「彼らが言っているように、油の色が違うわけでもないから、どこまで検証できるのかという難しさはあるんだろうなと思う」と話した。
それにしても、石破防衛相の「同盟国である米国の発表を信頼するのは当然」というのは、いよいよもって説明不可能になったということ。苦し紛れとはいえ、これほど何の根拠もないことをもっともらしくいえるのは、さすが慇懃無礼な石破氏だけでしょう。