『資本論』第31章(終わり)

第2節に入ります。

●868ページ――対象の限定
 ここでマニード・キャピタルの蓄積というのは、商業信用の停滞のことでも、支払い手段の節約によって余った貨幣のことでもない。
それ以外にマニード・キャピタルの蓄積が起こるとしたら、それは新金鉱の発見などによって金が流入する場合である。
※本当にそうなのか? これはマルクスの時代のことだけ? 現在の管理通貨制のもとだとどうなるのだろう?

●869ページ訳注の後ろから――
 冒頭の一文は、währendの訳し方を間違えている。「他方」から後ろの部分を前にもってくること。そうしないと、次の文に続かない ((既訳では、長谷部訳も岡崎訳も向坂訳も、みんな同じように間違えている。))。で、その次の文もmüssenの訳し方がおかしい。ここは、「せざるをえない」かどうかではなく、必ずそうなるという意味 ((長谷部訳は「促進するに違いない」と訳している。))。

 ということで、この部分は次のようになります。

 われわれがすでに見たように、産業資本家たちの現実の蓄積は、通例、再生産資本そのものの諸要素を増加させることによって行なわれるが、それにたいして、貨幣を貸し付けるすべての資本家の蓄積は、言うまでもなくいつでも直接に貨幣形態で行なわれる。したがって、信用制度の発展と、大銀行の手中における貨幣貸付業務の途方もない集中とは、それ自体がすでに、現実の蓄積とは別の形での貸付可能な資本の蓄積をかならず促進させるのである。(新書版869ページ参照)

 要するに、ここでマルクスが言っているのは、産業資本家の蓄積が現物でおこなわれるのにたいし、マニード・キャピタルの蓄積は貨幣でおこなわれる、だから、信用制度が発展し、貨幣貸付業務が銀行に集中されればされるほど、マニード・キャピタルの蓄積は促進される――というごく当たり前の話。現行訳では、それがよく分からないと思います。

 マルクスは、これまで、マニード・キャピタルの蓄積と現実の蓄積とは別物だと言ってきたが、ここで明らかにしたような形でのマニード・キャピタルの蓄積は、現実の蓄積の結果だと言っているのである。これが、ここでマルクスが言わんとしていること。

次に、マルクスは、マニード・キャピタルの蓄積が現実の蓄積と関連するケースを、もう1つ取り上げている。

すなわち、マニード・キャピタルが上げる利潤というのは、もともと産業資本や商業資本が獲得した剰余価値なのだから、特殊な部類の資本家としてのマニード・キャピタリストが儲けるためには、資本主義が発達している必要がある、ということ。これもごく当たり前のこと。

●870ページ後ろから5行目から――
ここでマルクスは、利子率が低ければ、マニード・キャピタルのこの価値減少は、主として預金者の負担になり、銀行の負担にはならない、と書いているが、これはどういう意味か? よく分かりません。(^_^;)

●870ページの最後から――
貸付可能なマニード・キャピタルとして市場に投げ込まれるものは何か――。

  1. まず利潤のうち、収入に回されずに蓄積に回されるが、すぐには支出されない部分。
  2. 収入として支出される部分も、一度に全部支出される訳ではないので、徐々に消費される間、銀行に預金として預けられ、マニード・キャピタルになる。だから、収入として支出される部分が増える場合でも、マニード・キャピタルは増大する。
  3. 蓄積に予定されている部分も、実際に投下されるまでの間、銀行に預金として預けられ、銀行の手でマニード・キャピタルに転化する。
  4. したがって、信用制度が発展すると、収入の増加もマニード・キャピタルの蓄積として現われる。
  5. その他、地代や不生産的諸階級の所得など、収入として徐々に消費に回されるものは、すべて、預金になって、マニード・キャピタルに転化される。

 ――と、このあたりも、ごく当たり前のことが書かれています。

●よく分からないのは、872ページ3行目からの部分。

 もしある紡績業者が彼の生産物である糸を綿花と交換し、彼収入部分は貨幣と交換する場合のことをマルクスは取り上げている。そのなかでマルクスは、紡績業者の産業資本の現実的定在は、織物業者あるいは個人的消費者の手に移った糸だ、と書いているが、なぜ突然ここに織物業者が登場するのか? 紡績業者が糸を売ったのは、綿花の販売業者だったはず。そこに織物業者が出てくる理由が分からん…。

 しかし何にせよ、生産物に含まれている剰余価値は貨幣に転化されるのであり、そうして実現された貨幣はマニード・キャピタルの契機となる。そうした貨幣がマニード・キャピタルに転化するためには、預金として銀行に預けられるだけでいい。それにたいして、生産資本に転化するためには、必要とされる一定の最低限度の大きさに達している必要がある。

これで第31章は終わり。続いて第32章に入りますが、32章は文脈がとれない部分がたくさん出てきて、悩む…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください