昨日の「朝日新聞」が大きく取り上げていましたが、母子家庭にたいする児童扶養手当を削るかわりにと、政府が鳴り物入りで始めた就業支援事業があまり利用されていない実態が明らかに。
正社員化を促すための企業への助成金(「常用雇用転換奨励金」)は平均実施率12.4%。予算を組んだ31都道府県のうち22都道府県が実績ゼロという惨憺たる状況。「自立支援教育訓練給付金」「高度技能訓練促進費」と言っても、母子家庭の多くは、とりあえず毎日の生活に追われ、資格取得のための時間がとれない、授業料などの当座のお金がない、などなどの理由で利用できないのが実態。政府が考えるより、母子家庭はうんと深刻なのです。
母子家庭「使えぬ」就業支援 正社員化助成、利用1割(朝日新聞)
母子家庭「使えぬ」就業支援 正社員化助成、利用1割
[asahi.com 2007年10月22日06時02分]母子家庭への児童扶養手当を減らす代わりに厚生労働省が力を入れるとしていた就業支援事業の利用が進んでいない。06年度の実施状況を朝日新聞社が都道府県などに聞いたところ、正社員化を促す企業への助成金は予算見込みの約1割、資格取得のための給付金も半分以下しか使われていない実態が浮かび上がった。
厚労省は来年4月から、受給後5年を超える母子家庭の手当を最大半分まで減らす方針だが、これとセットになった自立支援が進んでいない実態を受け、手当削減の凍結を検討している与党の判断が注目される。調査は、母親の資格取得を支援する「自立支援教育訓練給付金」▽資格取得に期間がかかる場合に支援する「高等技能訓練促進費」▽企業に母子家庭の母親の正社員化を促す「常用雇用転換奨励金」の3事業について、06年度当初予算に対する利用実績(決算・決算見込み)を調べた。主に町村部をカバーする都道府県と、県庁所在地の市、政令指定市に聞き、都道府県ごとに合算した(東京は都のみ)。
厚労省は03年度の事業開始から毎年、実施している自治体数を公表しているが具体的な実施状況は明らかにしていない。
もっとも実績が低かったのは、常用雇用転換奨励金で、平均実施率は12.4%。予算を組んだ31都道府県のうち22都道府県が実績ゼロ。制度を始めてから4年間ずっと利用がないため、今年度は予算計上自体を見送った県もあった。
自立支援教育訓練給付金も、平均の実施率は45.6%。高等技能訓練促進費は、一部で予算を上回ったが実績ゼロの所もあり、地域によってばらつきが大きかった。
厚労省母子家庭等自立支援室は「制度の周知不足や、自治体による取り組みの差がある」と説明するが、自治体側からは「母子家庭の実態に合っていない」「制度の使い勝手が悪い」といった声が出ている。厚労省も来年度から、母子家庭向けの貸付金の返済期間を10年から20年に延ばす▽高等技能訓練で入学一時金支給の制度を設ける――など、使いやすくする見直しを検討している。
母子家庭は約123万世帯で、うち児童扶養手当を受けているのは95万5844世帯(07年3月)。この約3割が、受給開始から5年以上がたち手当削減の対象になるとみられている。
02年11月に成立した改正母子・寡婦福祉法の衆・参両院の付帯決議では、実際に児童扶養手当を減らすための政令を決める際には法改正後の就業支援策の進み具合や母子家庭の状況なども考慮するとされている。◇
〈母子家庭の就業支援事業〉 中心は、ホームヘルパーなどの講座を受けて資格を取った場合に費用の4割(10月から2割)を支給する「自立支援教育訓練給付金」▽看護師など2年以上かかって資格を取る際に12カ月を上限に最後の3分の1の期間に毎月10万3千円を支給する「高等技能訓練促進費」▽母子家庭の母親を正社員で雇った企業に30万円の助成金を出す「常用雇用転換奨励金」の3事業。厚労省はこれらの事業を含む「母子家庭等対策総合支援事業費」として、06年度、自治体への補助金19億円を計上している。
厚生労働省の調査によれば、母子家庭の勤労収入は3年前より9万円増。しかし、勤労収入が増えれば生活保護が削られるので、実質的な収入増はわずか1万円。今後、児童手当が削減されれば、いったいどうなるのか。この痛みが、厚労省には分かるのだろうか?
母子家庭の就業状況、やや改善 年収は213万円
[asahi.com 2007年10月05日]母子家庭の年収や就業状況に関する厚生労働省の06年度調査の結果が4日、明らかになった。母親の就業率は84.5%で前回の03年度調査よりも1.5ポイント上がり、平均年収は1万円増の213万円。来年4月に予定される母子家庭を対象にした児童扶養手当の一部削減について、自民、公明党は連立政権合意で削減の凍結を打ち出したが、今回の「改善」を受けて凍結対象の限定が検討されることになりそうだ。
調査を受けて、与党の厚生労働関係議員からは「凍結対象は低所得世帯を中心に検討するのが適当だ」との声が出ている。
調査は06年11月1日現在、全国の約2000世帯を対象に実施、約1500世帯から回答を得た。
平均年収は児童扶養手当や生活保護、親からの仕送りなどを合わせたもの。これらを除いた就労収入の平均は171万円で、前回調査よりも9万円増えた。就労収入増に伴い生活保護費などが削減されるため、平均年収自体は1万円増にとどまる結果になった。
雇用形態別では、常用雇用者は5万円増の257万円、臨時・パートは3万円増の113万円。だが、母子家庭の平均年収の水準は、全世帯の平均所得の37.8%にとどまっている。
児童扶養手当は所得に応じて月額9850?4万1720円(児童1人の場合)が支給されているが、02年度の児童扶養手当法改正で、子どもが3歳になってから5年以上受給している世帯に対して、08年4月から手当の半額以上を確保して減額することが決まった。
厚労省の試算では、削減対象者全員について5割カットを凍結した場合には、160億円の税負担が必要。だが、現在手当が満額支給されている所得130万円未満に凍結対象を限るなど、低所得者層に絞った場合、税負担は数億から数十億円にとどまる。
↓こんな記事も。あしなが育英会の調査によると、遺児母子家庭の勤労年収はわずか139万円しかないことが明らかに。
遺児母子家庭の勤労年収139万円、一般家庭の3割(朝日新聞)
遺児母子家庭の勤労年収139万円、一般家庭の3割
[asahi.com 2007年10月18日12時35分]自殺や病気、災害で父親を亡くした遺児母子家庭の05年の平均勤労年収は139万5000円だったことが「あしなが育英会」(玉井義臣会長)の調査で分かった。一般家庭の平均年収の31.9%に過ぎないという。
遺児の心のケアや奨学金貸与をしている同育英会が高校1年生の遺児母子家庭を対象に調査した。それによると、統計を取り始めた98年の平均勤労収入は、一般家庭の43.2%だったが、翌年から30%台に落ち込み、この8年間で10ポイント以上広がった。
北海道や九州・沖縄在住では一般家庭の全国平均の20%台という実態も地域別の調査で初めて明らかになった。北海道は99万3000円と一般家庭の22.7%で、九州・沖縄も119万円で27.2%。最も高い中部でも175万2000円(40.1%)で、首都圏(1都3県)は141万4000円(32.4%)だった。
現在の高校1年生の奨学金希望者は過去最多の1455人。今年9月に実施した母親への聞き取り調査では、「生活保護を受け、高校生の娘が二つのバイトをして生活を支えてくれている」(50代・大阪)、「パートのレジ打ちで月収は手取り7万円」(50代、福岡)などと切実な声が寄せられたという。
今秋の街頭募金は20、21、27、28日の計4日間、全国の主要な駅頭や繁華街で行う予定。郵便振替(00140-1-541731)でも随時受け付ける。問い合わせは同育英会(03-3221-0888)へ。