不起立者の名簿作成はプライバシーの侵害

神奈川県の個人情報保護審査会が、同県教育委員会が「君が代」斉唱のさいに起立しなかった教員の名簿を作成するのは「思想信条にかんする個人情報」の収集だとして、作成中止の答申を出しました。

君が代不起立の教員名簿破棄へ 神奈川県教委
[asahi.com 2007年10月29日20時08分]

 卒業式や入学式の君が代斉唱の際、起立しなかった教職員の名簿を報告させていた神奈川県教育委員会は29日、昨春の卒業式から今春の入学式までの名簿を廃棄する方針を決めた。県個人情報保護審査会から24日付で「国会斉唱時における不起立という行為は、県個人情報保護条例が原則取り扱いを禁止している思想信条に基づく行為と認められる」として名簿の利用を中止すべきだ、との答申を受けていた。
 不起立の教員をめぐり、県教委は06年2月に名前と指導内容を報告するように県立学校の校長に指示した。これを不服とした教職員が06年6月、県教委に名前を報告しないように「利用停止請求」をしたが、県教委がこれを退けたため、17人の教職員が異議を申し立て、弁護士や大学教員らでつくる県個人情報保護審査会が審議してきた。
 29日に記者会見した県教委高校教育課は「答申の内容を尊重し、これまで報告された名簿については近く破棄することを正式に決める予定だ」と説明した。
 ただ県個人情報保護条例第6条には、県個人情報保護審議会に諮り、正当な事務や事業実施に必要があると認められた場合、例外的に取り扱えるという規定がある。同課は「適正に指導するために氏名情報は必要。審議会に諮問した上で、認められれば、今後も不起立者の氏名報告を続けていきたい」としている。
 県立学校の不起立者は延べ193人。

君が代不起立者 教委への報告『条例違反』 個人思想収集と指摘
[東京新聞 2007年10月29日 夕刊]

 神奈川県教委が、入学式などで君が代斉唱時に、起立しなかった教職員の氏名などを県立高校の校長から報告させていることについて、県個人情報保護審査会(会長・矢口俊昭神奈川大学大学院教授)が、県個人情報保護条例が禁止する「思想信条に関する個人情報の収集に当たる」と判断していたことが二十九日、分かった。
 同審査会は県教委に対し、収集を中止するよう答申。県教委は、二〇〇六年度と〇七年度に報告を受けた氏名などの情報の廃棄を検討する。
 個人の思想、信条や犯罪歴などのいわゆる「センシティブ情報」をめぐっては、神奈川県と同様に条例で取り扱いを原則禁止している自治体もあり、影響を与えそうだ。
 県教委は〇五年春から、各県立高校長に対し、卒業式や入学式で君が代斉唱時に起立しなかった教職員の人数、〇六年春からは氏名と指導経過を報告するよう指導している。これを不服とした教職員が個人情報保護条例に基づき、情報収集をやめるよう請求したが、県教委は「不起立者の氏名や人数は客観的事実。各教職員に不起立の理由を聞いておらず、思想信条は記載されていない」として請求を退けた。教職員十六人が昨年八月に異議申し立てをしていた。
 審査会の答申は今月二十四日付。答申では「起立しない理由の多くは、過去に日の丸・君が代が果たしてきた役割に対する否定的評価に基づくと考えられる。不起立者にその理由を問わないとしても、一定の思想信条に基づく行為であることが推定できる」とした。
 県教委高校教育課は「答申内容を尊重せざるを得ないが、これまで主張してきた内容が生かされず残念。今後も起立するように指導はしていく」とコメントした。

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