守屋前防衛事務次官、宮崎元専務、それに久間元防衛相、額賀財務相をつなぐもの…

額賀財務相が宴席に座っていたかどうかより、そういう宴席を含む防衛産業と防衛族とのつながりのなかで、いったい何が話され、何がおこなわれていたのかが問題。

そこを追及しないといけないのですが、民主党は、たとえば前原元代表(現・副代表)が「安全保障議員協議会」の常任理事だったり、日米平和・文化交流協会の理事だったり、要するに、久間さんや額賀さんと同じ側にいる人だったりするので、肝心のところが追及できないんですね。

核心 守屋前次官逮捕 防衛利権解明なるか 久間氏、山田洋行と親密 額賀氏、ロビイストと接点(中日新聞)

中日新聞「防衛利権 蜜月の構図」シリーズ。なかなか面白いです。
“焼け太り”豪腕転落 逮捕の守屋前防衛次官(中日新聞 11/29)
<蜜月の終焉> 「鶴の一声」ヘリ購入(中日新聞 12/05)
<蜜月の終焉>“茶番”のエンジン選定(中日新聞)

核心 守屋前次官逮捕 防衛利権解明なるか 久間氏、山田洋行と親密 額賀氏、ロビイストと接点
[中日新聞 2007年11月29日朝刊]

 前防衛事務次官、守屋武昌容疑者(63)と妻幸子容疑者(56)を収賄容疑で逮捕した東京地検特捜部は、リクルート事件やゼネコン汚職などに近い検事約30人の捜査体制を敷いた。防衛専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)=贈賄容疑で再逮捕=から接待以外の資金提供についての調べと並行し、巨額の防衛利権に絡む政界への金の流れの解明をも視野に入れた捜査を進めるもようだ。(前防衛次官汚職取材班)

「代理戦争」に

 今月15日の証人喚問。守屋容疑者が明らかにした久間章生元防衛相の言葉に注目が集まった。
 「次官を辞めた後、『君に言わないでおったことが一つあった。GEと直接契約できないか担当課長に指示しておいた』と(久間)大臣から言われた。辞めた人間に対してどうしてそういう話をされるのか、という違和感を持ちました」
 GEとは、航空自衛隊次期輸送機(CX)のエンジンを製造する米防衛企業大手のゼネラル・エレクトリック。その代理店契約をめぐっては、山田洋行と同社から独立した宮崎容疑者の日本ミライズとの間で激しい攻防が繰り広げられていた。
 CXのエンジンは1000億円の商戦といわれる。守屋容疑者は「なぜ随意契約では駄目なんだ」などと、GEの代理店契約を山田洋行から奪ったミライズに有利な発言を繰り返した。
 一方、守屋証言が真実なら、防衛相だった久間氏は、商社を介さず防衛省とGEによる直接契約の検討など、「ミライズ外し」ともいえる指示を部下に出していたことになる。
 久間氏と守屋容疑者の確執は、沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題をめぐる意見の相違が原因だとされる。接待漬けで宮崎容疑者と一体化した守屋容疑者。一方、久間氏は山田洋行のオーナー側と親しい関係を隠していない。2つの防衛専門商社の背後で、「代理戦争」が火花を散らした。

秋山氏の存在

 昨年12月、宮崎容疑者は東京・赤坂のスッポン料理店で久間氏と会食。山田洋行を辞め、ミライズを設立したことを報告したという。久間氏は、宮崎容疑者の独立には批判的だったとされる。
 「何でトラブったのかという話はした。宮崎さんは、山田さん(当時の山田洋行オーナー、正志氏)と前からあんなに良かったのに」。久間氏は本紙の取材などに語った。この会食に同席していたのが、社団法人「日米平和・文化交流協会」専務理事の秋山直紀氏(58)だった。
 守屋容疑者は証人喚問で、2、3年前に秋山氏から「(久間)大臣と飲むから来ないか」と誘われたと別の宴会を暴露。久間氏と秋山氏の深い関係をにおわせている。
 秋山氏は、防衛ロビイストとして、日米防衛関係者の間では有名な存在だ。2003年から日米の防衛関係者が一堂に会し、ミサイル防衛(MD)などの技術交流を深める「日米安全保障戦略会議」を主宰している。
 三菱重工業など数多くの防衛産業が協賛企業に名を連ねた、今月7日から3日間開いた会議。出席をキャンセルする政治家が相次いだが、入院中の久間氏がビデオ画像で登場。秋山氏との関係を印象付けた。また、宮崎容疑者が参加した宴席に同席したとして野党から証人喚問を求められた額賀福志郎財務相も、8月まで同協会の理事を務めていた。
 宮崎容疑者は逮捕前、周辺に「すべて話す」と漏らした。特捜部は、宮崎容疑者が長年、理事を務めた同協会の事務所を捜索、資料も押収している。防衛利権の全体像を解明するため、特捜部は防衛省幹部やOBなどから事情聴取、膨大な資料の任意提出を受けており、防衛利権の全体像に迫る方針だ。

          ◇

接待と収賄 壁に挑む

 解説 捜査による政局への影響を嫌う東京地検特捜部が、参院での証人喚問が決まっていた防衛省の前事務次官守屋武昌容疑者の逮捕に踏み切ったのは、山田洋行の元専務宮崎元伸容疑者との癒着の解明を入り口に、巨額の防衛利権をめぐる疑惑に切り込む決意の表れだ。
 宮崎容疑者が守屋容疑者へ接待を繰り返したのは、防衛装備品の受注をめぐり便宜を得たいとの期待からだ。本来、業者側からのアプローチを拒絶すべき守屋容疑者は、接待漬けとなり国防の根幹を担う防衛官僚としての意識をまひさせていった。
 接待による収賄容疑の立件には捜査上、高い壁がある。今回のように接待が長期間に及ぶと、わいろ性の趣旨が薄れるからだ。それだけに、山田洋行側から宮崎容疑者による接待や裏金づくりなどの資料が、捜査当局に提供されたことは大きかった。
 今回の逮捕容疑の対象は、宮崎容疑者が山田洋行在職時に行った接待であり、同社は捜査当局に提供した資料で、図らずも防衛商社としての暗部をさらけ出したことになる。(東京社会部・加藤文)

【防衛利権 蜜月の構図】
“焼け太り”豪腕転落 逮捕の守屋前防衛次官
[中日新聞 2007年11月29日]

 防衛省を去ってわずか3カ月、大物次官が転落した。東京地検特捜部は28日、収賄容疑で守屋武昌前事務次官(63)と妻幸子容疑者(56)を逮捕した。ライバルをけ落とし、防衛省に長年君臨した守屋容疑者。「女次官」と呼ばれ、省内でも存在感を示した幸子容疑者。「裏切りだ」「がっかりした」。山田洋行の元専務宮崎元伸容疑者(69)による夫婦丸抱えのゴルフ接待に、防衛省内からは怒りの声が上がった。巨大な防衛利権をめぐり何が行われていたのか。解明を目指し、政界への波及もにらんだ捜査が本格化する。

 前防衛事務次官の守屋武昌容疑者は「省」昇格前の防衛庁をめぐる不祥事を巧みに利用し、“焼け太り”した。権力の階段を上るきっかけとなったのは、1998年に明るみに出た調達実施本部の背任事件だった。
 東北大を卒業後、71年に旧防衛庁に入庁した守屋容疑者は当時、防衛施設庁施設部長。事件で更迭された官房長の後任に指名され、「3階級特進だ」と驚きの目で見られたが、布石は打っていた。
 96年、内閣審議官として沖縄特別行動委員会(SACO)にかかわり、沖縄振興策をまとめて建設利権に強い当時の自民党橋本派に食い込んだ官房長への抜てきは橋本派の防衛庁長官だった額賀福志郎氏(現財務相)の「引っ張り」といわれた。
 「この責任は誰がとるんだ」。2002年に発覚した情報公開請求者の個人情報リストの作成問題。防衛局長になっていた守屋容疑者は会議で国会混乱の責任は官房長の柳沢協二氏(現内閣官房副長官補)にあると主張。
 柳沢氏は更迭され、次官レースから消えた。「守屋はずばり本質を突く。誰も逆らえなかった」と防衛庁OB。柳沢氏の部下だった課長は、後に守屋派と呼ばれる人物。必要な情報は柳沢氏に上がらなかった。
 翌年、事務次官だった伊藤康成氏の勇退を前に地震が発生した。対策会議に防衛施設庁長官だった嶋口武彦氏が酒に酔って出席した事実が週刊誌に書かれたことを理由に、首相官邸は伊藤氏が推す嶋口氏の次官就任を認めなかった。
 この晩、守屋容疑者は防衛庁近くの料亭でやはり酒を飲んで会議に出席したが、腹心の部下が週刊誌に話したのは嶋口氏の飲酒だけだった。
 次々にライバルをけ落とし、守屋容疑者は03年、事務次官に就任。2年後、防衛施設庁長官の山中昭栄氏の次官就任が確実視されていた。ところが、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、意見の合わない山中氏を次官室に呼び出した守屋容疑者は「大臣(大野功統防衛庁長官)の意向だ。辞めてくれ」と通告した。
 今年3月の定年退官前には「では、誰が次官をやるんだ」と繰り返し、定年延長を実現させた。延命工作が効いた4年間の長期政権。今年1月には省への昇格が実現した。
 首相官邸で開かれた最初の全省庁次官会議で、守屋容疑者は末席から省にふさわしい上席に移った。「防衛省の事務次官」。入庁以来の夢は晩年になって果たされた。(編集委員・半田滋)

【防衛利権 蜜月の構図】
<蜜月の終焉> 「鶴の一声」ヘリ購入
[中日新聞 2007年12月5日]

 収賄容疑で逮捕された前防衛事務次官の守屋武昌(63)は「防衛省の天皇」と呼ばれた。絶大な権力ゆえに、行動をいさめる部下はいなかった。
 今年の夏、次期輸送機(CX)のエンジン納入疑惑が報道されたころ、防衛省で政府専用ヘリコプター「スーパーピューマ」の後継機選定疑惑が再びささやかれた。
 政府専用ヘリは、1986年の東京サミットを前にフランスから3機購入され、陸上自衛隊の特別輸送隊が要人輸送に使用している。
 2004年11月、天皇、皇后両陛下が新潟県中越地震の見舞いの際に搭乗された。「騒音がひどい。ドアが小さく、陛下が頭を下げて乗り降りした」との話が広がり、防衛庁(当時)は“皇室への配慮”からも新しい機体の購入を決める。
 「守屋さんが言い出した。誰も口を出せなかった」(幹部)
 しかし、わずか3カ月前の同年8月には機体を修理して使い続けることが決まり、翌年度の概算要求書に改修費を計上していた。それが守屋の「鶴の一声」で方針変更されたことになる。
 補正予算で1機購入することとなり、政府専用ヘリと同じ仏ユーロコプター社の「EC225」と、伊アグスタ社「EH101」、米シコルスキー社「S92」の3機種が候補に挙がった。
 しかし、緊急性を要する“買い替え”であることを理由に、事務次官だった守屋を議長とする航空機機種選定会議は1度も開かれないまま、「EC225」に決定した。3機とも買い替えられ、合計100億円もするヘリが正式な手続きを経ずに導入された。
 「EC225」は、愛称こそ旧型機と同じスーパーピューマだが、中身はまったく違う高性能機。「(海上自衛隊の掃海ヘリである)EH101にすれば、隊員教育などで経費削減が図れたのに…」と選定を疑問視する声が上がったが、うやむやに終わった。
 防衛省の隊舎の一角に民間業者が経営する食堂がある。
 守屋の部下だった人物の知り合いが経営者とされる。昼食時の混雑が一段落するころ、黒塗りの公用車で守屋が乗り付ける。一人でトンカツ定食やみそラーメンを食べ、迎えの公用車で次官室へ戻る。わずか300メートルの距離を歩かない。
 防衛施設庁の施設部長だった1998年、庁舎の新宿移転が決まっていたにもかかわらず、2階の自室まで廊下や階段のじゅうたんを敷き直させた。「天皇」と呼ばれた独裁者のエピソードは事欠かない。 (文中呼称略)

【防衛利権 蜜月の構図】
<蜜月の終焉>“茶番”のエンジン選定
[中日新聞 2007年12月7日]

 「GE(ゼネラル・エレクトリック)が有利なのは最初から分かっていた」。2002年末、防衛省技術研究本部(技本)が公募した航空自衛隊次期輸送機(CX)のエンジン提案に参加し、別のメーカーの製品を推したある商社幹部は苦笑しながら、振り返った。
 幹部によると、GEの有利をはっきり認識したのは公募前後のころ。防衛庁(当時)の機体開発の関係者から「そちらのエンジンは機体に合っていない。相当頑張らなきゃ難しいよ」と言われたからだ。
 「飛行機はエンジンありき。機体の主契約を狙ったあるメーカーのCXモデル図は、現在のCXとは全然違う。そのメーカーは系列商社と組み、ほかの米社製エンジンを推していた。エンジンが違えば機体にも影響が大きい」と幹部は語る。
 選定手続きが始まる前後には、すでにエンジンはGEに内定していたのではないか――。この商社幹部の推測を裏付けるように、複数の空自OBは「03年の春にはGEに決まっていた」「空中警戒管制機などで実績のあるGEを前提に機体を設計するのは当然だ」と証言する。
 03年8月、正式にGEを選定した「装備審査会議」。議長を務めた事務次官の守屋武昌(63)=収賄容疑で逮捕=はなぜか、「提案書受領から5カ月もたっている」「提案内容の確認はいつまでかかったのか」「選定の通知はいつか」と質問した。「事実上セレモニーにすぎない」(元技本関係者)会議で、なぜ、守屋は「時間」や「通知」を気にしたのか。
 防衛省元幹部は「GEで内定なのに、なんでモタモタしたんだと言いたかったのでは」と推測。別の元幹部は「GE側に守屋が選定を通知したと言われているが、筋論としておかしい。技本がやるべきだ」と疑問視する。
 その会議の翌日、守屋は、当時GE代理店だった山田洋行の元専務宮崎元伸(69)=贈賄容疑で再逮捕=からゴルフ旅行接待を受けた。一方、機体開発の主契約会社・川崎重工の顧問だった空自幹部OB2人は、この後、山田洋行の顧問に就任した。奇妙な符合。制服組の元トップは「そんなの“お礼”に決まってる」と吐き捨てるように言った。
 不可思議な「内定」をめぐる動きは、航空機ばかりではない。
 9月に行われた海上自衛隊の5000トン級護衛艦船体の技術提案公募では、エンジンについて何ら公式の動きがないのに「ロールスロイス製エンジンが、今年3月には事実上内定していた」(防衛省幹部)という。
 東京地検特捜部は、守屋がこの内定に待ったをかけ、GE製エンジンも検討するよう指示していたことが、便宜供与にあたるとみて調べている。だが、「内定」自体、競争入札を原則とする政府調達の公式にはあてはまらない。
 航空機でも、艦船でも、エンジンが最初に決まっているなら、正規の選定過程は「茶番劇」にすぎない。その裏側で暗躍したのは誰か。主役の1人を守屋が演じていたとしても、一人芝居でなかったことは間違いない。 (文中呼称略)=おわり

 この企画は半田滋、小嶋麻友美、大村歩、稲垣太郎、寺岡秀樹が担当しました。

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