国連総会で、人権にかかわる2つの決議が採択された。もし、国連総会で多数の賛成で可決されることが国際的な正当性となるのであれば、日本は、一方の正当性だけを主張するのでなく、もう一方の、自らは反対した主張についても真剣に受け止めるべきだろう。
北朝鮮の人権侵害非難決議、過去最多支持で採択…国連総会(読売新聞)
国連総会、死刑執行停止求め決議 大差で採択(朝日新聞)
北朝鮮の人権侵害非難決議、過去最多支持で採択…国連総会
[2007年12月19日20時47分 読売新聞]【ニューヨーク=白川義和】国連総会は18日、北朝鮮の人権侵害に「非常に深刻な懸念」を示し、拉致被害者の即時帰国の保証などを北朝鮮に強く求める決議案を賛成101、反対22、棄権59で採択した。
北朝鮮の人権非難決議の採択は3年連続で、賛成票は過去最多を記録した。
北朝鮮の核問題の一定の進展とは別に、国際社会が北朝鮮の人権侵害に依然、厳しい視線を向けていることが示された。韓国は昨年は賛成したが、今年は南北関係への配慮から棄権した。中露は反対票を投じた。
今年の決議は、拉致被害者の即時帰国の保証など具体的行動を初めて要求し、北朝鮮が「透明な形で緊急にこの問題を解決する」ことを求めている。また、北朝鮮での国民への拷問や非人道的な拘束、公開処刑、人身売買など組織的、広範囲にわたる重大な人権侵害への懸念を表明し、即時中止を要求している。
国連総会、死刑執行停止求め決議 大差で採択
[asahi.com 2007年12月19日11時36分]国連総会は18日、死刑執行の停止を求める決議案を賛成多数で採択した。日本を含む死刑制度の存続国に対し国際世論の多数派が「深刻な懸念」を示した形だ。決議に法的拘束力はないが、存続国には死刑制度の状況を国連に報告するよう求めており、制度の見直しへ向けた国際圧力が高まるのは確実だ。
国連加盟国192カ国のうち、欧州連合(EU)のほか、南米、アフリカ、アジア各地域の87カ国が決議の共同提案国になった。採決は、賛成104、反対54、棄権29。死刑制度を続けている日本、米国、中国、シンガポール、イランなどは反対した。
決議は、人権尊重の意義や、死刑が犯罪を抑止する確証がないこと、誤審の場合は取り返しがつかないことなどを指摘。存続国に対し、執行の現状や死刑囚の権利保護を国連事務総長に報告▽死刑を適用する罪名の段階的な削減▽死刑制度の廃止を視野にした執行停止――などを求めている。
採択後、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「世界の多様な地域から支持されて心強い。死刑廃止へ向けた潮流の証しだ」と歓迎の声明を出した。
国連総会は71年と77年にも死刑に関する決議を採択した。当時は制度の乱用が問題視され、死刑の対象となる罪名の規制に力点を置き、廃止については「望ましい」との表現にとどまっていた。今回は廃止を視野に入れ、その前段階として存続国に執行の停止を求めたのが特徴だ。
死刑廃止の動きはEUの主導で広がっている。国連総会での死刑廃止要求決議案は90年代に2回提案されて採択に至らなかったが、今回は「予想を超える大差の賛成数」(EU代表)になった。
決議の内容を死刑の即時廃止ではなく、執行停止に緩めたことで中間派が賛成に回った事情もある。だが最大の主因は、廃止・停止に動く国々の急速な広がりだ。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、77年当時、死刑を廃止した国は16だったが、現在は90。制度は残っていても執行を長期停止した韓国やロシアなどの停止国を加えると133カ国に達する(今年11月現在)。この10年間だけでも約30カ国が廃止・停止した。
一方、存続国は中国、イラン、サウジアラビア、米国など64カ国。そのうち昨年中に執行した国は25カ国。死刑制度を維持し、実際に執行も続ける国は日本を含め世界の少数派になった。