民主党・小沢代表が、自衛隊のISAF(アフガニスタン国際治安支援部隊)への参加論をぶち上げたとき、自民党は、ISAFよりインド洋での給油活動の方が安全だといって反論しました。
けれども、自民党も民主党も、自衛隊を海外に派兵しようという点では同じ。だから、臨時国会を再延長して、再議決によってテロ新法成立のメドがたってくると、せっかく民主党が自衛隊の地上軍派遣を言い出してくれたのを否定してしまうのがもったいないと思ったんでしょうね。にわかに、自衛隊のISAF派遣は「憲法違反ではない」と言い出しました。
自民党と民主党が手に手を取って、自衛隊の恒久海外派兵――そんなことは絶対に許されません。
自衛隊のアフガン派遣、政府が「合憲」解釈
[2007年12月22日3時2分 読売新聞]政府が、アフガニスタン本土に展開する国際治安支援部隊(ISAF)本体への自衛隊参加に関し、憲法上、可能との見解をまとめていたことが、21日、明らかになった。
これまでの閣僚らの国会での答弁などでは、ISAF本体で自衛隊が活動することは、憲法が禁じる武力行使にあたるとしてきた。今回、政府は、こうした答弁を修正し、ISAF本体の活動が「国際法上の武力行使に当たらない」との見解を打ち出し、武器使用を伴う参加が憲法上認められる事例もあり得るとした。今後は、アフガン本土での「非戦闘地域」の認定が、自衛隊参加の条件となるが、将来のISAF本体への参加には可能性を残した。現時点での参加については、憲法上の問題が解消しても、アフガンの治安状況を見極めて慎重に判断する。
政府は、国または国に準ずる組織との交戦が行われている場所を「戦闘地域」として、そこへの自衛隊派遣は違憲だとの立場を取っている。
今回、政府はアフガンでのISAFの治安維持活動について、〈1〉アフガン政権の同意を得た、警察行為を補完するものと位置づけられ、国際法上の「武力行使」ではない〈2〉「武力行使」でない国際活動で、任務遂行のために武器使用が想定される場合でも、国または国に準ずる組織との交戦が行われていない「非戦闘地域」が認定できれば、その地域には参加できる――との見解をまとめた。
ただ、アフガンでは、過去に政権を掌握していたタリバンが反政府活動を展開しており、タリバンを「国に準ずる組織」と見なすのかどうかで、非戦闘地域の設定が異なってくる。この点に関する政府内の見解は一致していないため、今後の検討課題となっている。
ISAF本体への自衛隊参加については、民主党の小沢代表が10月初旬に提唱したが、この際、町村官房長官、高村外相、石破防衛相らは相次いで、憲法違反になるとの見解を示していた。その後、政府内では、こうした答弁が国会で定着すると、将来、国際平和協力活動を拡大する道が閉ざされかねないとして、外務省、内閣官房、内閣法制局などで対応を協議していた。
ISAF参加「合憲」解釈 恒久法の議論背景に
[読売新聞 2007年12月22日付朝刊]【解説】 政府が、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)本体への自衛隊参加について、憲法上許されるケースがあるとの見解をまとめたのは、民主党の小沢代表の「ISAF参加論」や、自衛隊の海外派遣に関する恒久法論議が活発になったことが契機となった。将来の国際活動への参加拡大の道を確保するため、憲法上認められる自衛隊の活動範囲をギリギリまで追求する必要があったからだ。
政府内には当初、ISAFを「武力行使をともなう活動だ」とする見方があった。自衛隊が「武力行為」に参加することは憲法違反になるため、そうした判断をした場合には、自衛隊は輸送などの「武力行使と一体化」しない、後方支援活動による協力しかできないことになる。これに対し、自衛隊の活動範囲を広げたい外務省が「ISAFの活動はアフガン政府の同意を得て警察行為や治安維持の補完をしているだけで、国際法上の武力行使にはあたらない」と巻き返し、内閣法制局もこの見解を是認した。
ただ自衛隊が海外で活動する場合の憲法上の制約はほかにもある。ISAFのような活動では、国際標準とされる任務遂行に対する妨害を排除するための武器使用を認めることが不可欠だが、自衛隊の場合、武器使用の相手方が「国または国に準ずる組織」であってはならない。この点、アフガンの現状に関し、「タリバンの残党が散発的な攻撃を仕掛ける程度なら、『国に準ずる組織』にはあたらない」と主張する外務省と、『タリバンが単なる犯罪集団と生きれるかどうか』と慎重な姿勢を崩さない内閣法制局の溝は埋まっていない。(政治部 小川聡)
読売のこの解説によると、アフガニスタンのタリバン勢力が、国際法上「国に準ずる組織」として認められるとすると、自衛隊のISAF参加は国際法上の戦力行使になるので憲法違反だということになる、というのです。
しかし、これって変な理屈だと思いませんか? 国際法上「国に準ずる組織」と認められなかったからといって、自衛隊の武力行使によってタリバン兵が殺傷されることに変わりはないはず。単なるテロリストであれば、自衛隊が海外で武力行使をしても憲法違反にはならない、というのは、まったく理屈に合いません。