いよいよ原油100ドル時代へ

ニューヨークの原油先物価格が、とうとう1バレル=100ドルを突破。

直接的な値上げ理由はいろいろあるだろうが、この高騰は、サブプライムローン問題による金融市場の不安から投機的資金が原油市場に流入していることにある。しかし、さらに遡れば、中東情勢の不安定化による「先行き不安定」感がある。日本経済の“安全保障”という立場からいっても、アメリカ言いなりでは何の展望も生まれないだろう。

NY原油、連日の100ドル台 株・ドル急落、金急騰(朝日新聞)
原油高、日本経済に重し(NIKKEI NET)

NY原油、連日の100ドル台 株・ドル急落、金急騰
[asahi.com 2008年01月04日01時54分]

 ニューヨーク商業取引所の原油市場は08年の取引初日の2日、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格が一時、史上初めて1バレル=100ドルちょうどまで急騰した。3日はさらに100.05ドルまで値上がりし、取引途中の史上最高値を再び更新した。需給逼迫(ひっぱく)の懸念などが相場を押し上げた。株やドルが急落し、商品市場への投機資金流入が強まった影響も大きい。米国市場の波乱は、今年の初取引となる4日の東京市場に影響しそうだ。
 原油価格は、一時1バレル=50ドルを割り込んだ昨年の1月から約1年で2倍になった。米低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き急増などで米景気の先行き不安から株やドルが急落すると、有利な運用先を求めて原油相場への資金流入が活発化した。原油高はコスト増で企業の収益を圧迫するほか、ガソリンや暖房油などの値上がりを通して家庭にも打撃を与える。世界経済に悪影響を及ぼす可能性があり、日本でも昨年以降、日用品や食料品で値上がりが目立っている。
 高騰の直接の引き金は、ナイジェリアで武装勢力がホテルなどを襲撃したと伝えられ、治安悪化で原油供給が滞る可能性があるとの懸念が高まったこと。米国内の原油在庫が減ると予想されたことも、今後の需給が引き締まると見て買い注文を出す投資家を勢いづけた。3日発表された米原油在庫統計でも、在庫の減少が確認された。
 2日は取引開始直後から原油先物の買い注文が先行。昨年11月20日につけた史上最高値(99.29ドル)を更新し、1バレル=100ドルをつけた。その後は値上がり益を確保する売り注文も増えてやや値を下げたが、終値は昨年12月31日の終値比3.64ドル高の1バレル=99.62ドルとなり、終値での史上最高値も大幅に更新した。
 3日は、しばらく99ドル台の取引が続き、午前11時(日本時間4日午前1時)現在は前日比0.39ドル安の1バレル=99.23ドル。その後も再び上昇し、午前11時40分(日本時間4日午前1時40分)すぎ、一時1バレル=100.05ドルをつけた。
 一方、2日のニューヨーク株式市場では、大企業で構成するダウ工業株平均の終値が昨年末比220.86ドル安の1万3043.96ドルに下落。一時は約1カ月ぶりに1万3000ドルを割り込んだ。米サプライ管理協会(ISM)が2日発表した製造業景況指数が市場の予想よりも悪化し、景気後退入りの懸念が高まったため。3日は上昇して始まり、午前11時(同)現在は前日比30.40ドル高の1万3074.36ドル。
 円高ドル安も進み、ニューヨーク外国為替相場は、円が一時1ドル=108円台に高騰した。3日午前11時(同)現在は前日午後5時時点と比べ13銭円高ドル安の1ドル=109円46?56銭。
 原油高は金相場にも波及。2日のニューヨーク商業取引所の金相場は、指標となる先物価格の終値が昨年12月31日の終値より22.00ドル高い1トロイオンス=860.00ドルと急騰し、同月28日につけた終値での最高値を更新した。
 今後原油高が長引けば、サブプライム問題もからんで米国経済、さらには世界経済が減速し、原油の需要が減って値下がりする可能性がある。中国など新興国の旺盛な需要は衰えないとの見方から「原油価格は高止まりし、さらに上昇する恐れもある」との指摘も出ている。

原油高、日本経済に重し
[NIKKEI NET 2007/01/01 07:03]

 原油価格の高騰は日本経済にもある程度の影響を与えそうだ。原材料コストの上昇は企業収益を圧迫し、ガソリンや灯油などの石油製品価格の上昇は家計の重荷となる。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題や住宅着工と並び、原油高は日本経済の主要なリスク要因。これから日本経済の耐久度が問われてくる。
 日本経済新聞デジタルメディアの総合経済データバンク「NEEDS」のシミュレーションによると、2008年1―3月期以降に原油価格が1バレル100ドルで推移した場合、標準シナリオである1バレル80ドルで推移した場合と比べ、08年度の企業収益は2.0%押し下げられる。

〔追記〕

関連する記事をいろいろ。

1バレル100ドル突入 原油高、米経済揺さぶる(朝日新聞)

OPECが増産を渋っているというけれど、原因が高騰の理由が投機的資金の流入にあるなら、増産を求めてみても仕方がないだろう。

1バレル100ドル突入 原油高、米経済揺さぶる
[asahi.com 2008年01月04日]

 日本より一足先に08年の経済活動がスタートした米国で、原油価格が1バレル=100ドルの大台に乗り、株価は急落するなど、市場の取引初日は大荒れとなった。サブプライム問題に端を発した動揺は金融市場にとどまらず、個人消費など実体経済の足を引っ張るのでは、との懸念が急速に強まっている。日本国内でも、消費者は身の回りでの値上げラッシュに財布のひもを締め始め、大手企業にも警戒感が高まってきた。

●家計・雇用に直撃懸念

 原油相場が史上初の1バレル=100ドルに達し、米ダウ工業株平均は、年初の終値では最大の下げ幅となる220.86ドルの急落――。08年の米国市場は「記録的な幕開け」となったが、そのきっかけは、景気指標として重視される米製造業景況指数の悪化だった。
 2日に発表された12月の同指数は、好不況の分かれ目とされる50を11カ月ぶりに下回った。事前予想よりも大幅に悪い結果だったため、米景気の減速を心配する投資家の間に「景気後退入り」への懸念が急速に広まった。
 昨夏のサブプライム危機後、米連邦準備制度理事会(FRB)は3度の利下げを実施し、欧州中央銀行(ECB)などと協調して短期金融市場に大量の資金供給を続けている。それでもサブプライム関連の巨額損失に苦しむ金融機関の資金繰り難は「まだ完全には解消されていない」(大手銀行の資金運用担当者)。今後、企業への貸し渋りにつながり、景気減速・後退を招く恐れがある。
 米大手銀行などは今月発表する昨年10?12月期決算で、サブプライム関連損の公表を予定する。100億ドル規模での計上が予想されるシティグループやメリルリンチは、大規模な追加リストラを打ち出すとの観測も出ている。雇用の悪化につながれば、景気腰折れの要因となりかねない。
 原油高騰について、米ホワイトハウスのペリーノ報道官は「エネルギー価格の上昇は家計や中小企業などに悪影響を与える」と景気への懸念を隠さなかった。
 その一方で、原油相場を冷やすために緊急時用の戦略原油備蓄を放出する考えはないことも指摘。「原油の需要は極めて強く、一時的に放出しても価格は大きく変わらない。本当の緊急事態でない限り、備蓄は相場操作には使わない」と述べた。

●増産渋るOPEC

 「原油価格が高騰しているのは、地政学的な要因と投機筋の動き。石油輸出国機構(OPEC)に出来ることはない」(カタールのアティーヤ・エネルギー産業相)
 原油価格が史上初の100ドルに乗せた2日、増産圧力を予想するかのように、こんな声が産油国から上がった。OPEC諸国はかねて「市場は制御不能だ」と指摘しており、2月1日に開く総会で、相場の沈静化が期待できる増産にすんなり動くとは言い難い状況だ。
 OPECは12月、「原油はしっかりと供給されている。原油価格の急変動は懸念するが、値段は市場が決めるものでOPECは関与していない」(当時のハミリ議長)との原則論を貫き、産油量の据え置きを決めたばかり。この先、原油需要が拡大したり、非OPEC諸国の供給減などが見込まれたりしない限り、増産する建前にはない。
 国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男事務局長は2日、「原油市場は年初で取引量が少なく、値動きは荒れやすい。原油100ドル時代の到来と言うのは時期尚早だ」と、100ドルの「大台乗せ」を冷静に受け止めつつ、「高値の背景にあるのは需給バランスの厳しさ」とし、OPECによる増産を求めた。

●日本国内も節約に知恵

 一向に値下がりする気配を見せない原油価格。日本国内では消費者の「自衛策」が進む。
 千葉市の幹線道路沿いに店を構えるガソリンスタンドの担当者は「価格上昇が顕著になった昨年夏ごろから『満タン給油』の顧客がめっきり減った」と話す。「10リットル」「2000円分」など量や金額を指定する人が増えたという。スタンド周辺の相場は、激しい競争でレギュラーガソリンが1リットル140円台と全国平均よりやや安め。最近は都内ナンバーの車が給油に来ることもあるという。
 日本から海外に出かける旅行者は07年、4年ぶりに前年を下回った。その一因になったと見られるのが、国際線運賃に燃油市況に連動して上乗せされる「燃油特別付加運賃」だ。「窓口で付加運賃について説明すると、海外をやめて国内旅行に変える客も多い」(JTB幹部)という。
 日本航空は1日から付加運賃を海外との往復で800?8000円値上げした。欧米線では往復2万6000円が3万4000円にアップ。ライバルの全日本空輸は値上げを見送ったが、燃油費の市況がこのまま高止まりすれば「付加運賃か本体の運賃か、いずれにしても値上げは避けられない」(山元峯生社長)としている。
 原油高の業績への悪影響は中小企業で著しいが、大手も警戒感を強めている。
 トヨタ自動車の渡辺捷昭社長は、昨年11月時点で「(サブプライム問題よりも)原油価格がどうなるか。製造コストにどう響いてくるか心配」と神経をとがらせていた。日本化学工業協会の冨沢龍一会長(三菱ケミカルホールディングス会長)は3日発表したコメントで「現在の原油価格のレベルは実体経済と乖離(かいり)しており、日本経済に影響を与えることを懸念している」とした。
 住友大阪セメントは、自家発電に重油を使ってきた栃木工場(栃木県佐野市)で、09年春をめどに木くずを主な燃料とする発電装置を導入する。原油高対策は今後、企業の間でも広がりそうだが、高騰が長引けば業績へのマイナスは避けられそうにない。

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