食い物にされる派遣労働者

東京新聞の記事。グッドウィルから違法に二重派遣されていて、仕事に大きな怪我をした労働者の話を紹介しています。GWは、それまで「保険料に充てる」として給与から200円天引きしていたにもかかわらず、保険を支払おうとせず。

事故男性に『保険』渋る 違法派遣“野放し”(東京新聞)

事故男性に『保険』渋る 違法派遣“野放し”
[東京新聞 2008年1月12日 07時08分]

 日雇い派遣大手「グッドウィル」(東京、GW)が11日、厚生労働省から事業停止命令を受けた問題。二重派遣の助長や禁止業務への派遣…。2005年に改善命令を受けた後も、違法な派遣は広範に行われていた。低賃金や不安定な働き方を強いられ、危険にもさらされる日雇い派遣の労働者。大手の相次ぐ違法派遣の発覚で、派遣制度そのものの在り方や業界のコンプライアンス(法令順守)の姿勢があらためて問われている。
 東京都江東区の港湾地区の倉庫で昨年2月、労災事故が起きた。
 事故に遭ったのは、GWから派遣された20代の男性。粉袋の積み降ろし中に、崩れた荷の下敷きになった。診断は左足骨折で3カ月入院の大けが。医師からは「後遺症が残る」と宣告された。
 男性はGWから港湾運送関連会社「東和リース」(東京)=職業安定法違反で厚労省が刑事告発=に派遣されたが、さらに別の会社の指示で作業をしていた。労働者の安全管理があいまいになるため、職業安定法が禁止する二重派遣の状態で働いていた。
 労働組合に相談するまで、港湾運送業務や二重派遣が禁止されているとは知らなかった。貨物船の船内で荷揚げにもかかわり、支店に申告すると500円の手当が付いた。
 男性はデータ装備費として、1回の仕事で200円を徴収されていた。同社からは登録時に「業務中の事故やけがに備えた保険料」と説明された。男性が事故の件で請求すると、同社は「保険はなくなったので労災で払う」と応じなかったという。GWは過去2年間分のデータ装備費しか返還していない。男性は「派遣労働者の足元をみるようなやり方は許せない」と憤る。
 GW広報室は「個別事案についての回答は控えたい」としている。
 東京労働局の浅野浩美・需給調整事業部長は11日、GWの事業停止命令に関して記者会見。「違反の期間が長く、関係する事業所も多い。大きな会社がこれだけいろいろな違反をしているというのは非常に遺憾。事業のやり方、法令順守の態勢そのものを改善しなければ同じことが起こる」と述べた。

■日雇い派遣廃止を

派遣問題に詳しい龍谷大法学部の脇田滋教授(労働法)の話 現在の日雇い派遣は、派遣元が雇用保険の加入など雇用主としての責任を負っていない。国は日雇い派遣を容認する際、労働者保護の手だてを何も講じておらず、無責任な規制緩和だったと言わざるをえない。日雇い派遣を認めた政策の誤りが、違法な派遣を生む土壌を形成している。日雇い派遣は即刻廃止すべきだ。

■賃金保障せよ 労組が緊急集会

 グッドウィルの日雇い派遣労働者らでつくる労働組合「グッドウィルユニオン」と上部団体「派遣ユニオン」は11日、グッドウィル本社(東京都港区)や厚生労働省前などで緊急集会を開き、同社が事業停止後も日雇い派遣労働者に賃金を保障するよう訴えた。
 同社がユニオン側の賃金保障を求める文書の受け取りを拒否したのに対し、派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「文書の受け取り拒否は、事業停止命令の理由の不当労働行為をそのまま表している」と批判。「仕事を失う派遣労働者は数千人になる危険性がある」と、早急な対策の必要性を強調した。
 また、厚労省に対しては、日雇い派遣労働者が日雇い雇用保険による手当を受給できる措置を同社が取るよう指導することを文書で求めた。同社渋谷支店に日給を受け取りに来た港区の日雇い派遣の男性(36)は「違法派遣で結局は派遣労働者にしわ寄せが来るのには頭にきた」と話した。(東京新聞)

NHKニュースは、グッドウィルで違法派遣が常態化していたと報道。しかし、本当にそれはグッドウィルだけのことなんでしょうか?

グッドウィル 違法派遣常態化(NHKニュース)
二重派遣の業者に改善命令 千葉労働局(読売新聞)
二重派遣の業者告発 警視庁に厚労省(中日新聞)

グッドウィル 違法派遣常態化
[NHKニュース 1月12日 4時34分]

 日雇いの人材派遣会社最大手のグッドウィルが事業停止命令を受けた問題で、グッドウィルの事業所では、禁止された業務に労働者を派遣した際に手当を上乗せしたり、二重派遣が発覚しないよう口止めをしていたケースがあることがわかりました。厚生労働省では違法な派遣が常態化していたものとみています。
 日雇いの人材派遣会社最大手のグッドウィルは、平成16年から去年にかけて各地で違法な人材派遣を繰り返していたとして、全国700余りの事業所を対象に最長4か月間の事業停止命令を受けました。厚生労働省によりますと、グッドウィルの東京にある事業所では、法律で禁止された港湾の業務に派遣された労働者が「きょうは船でした」などと報告すると日給に500円の手当を上乗せして支払っていたということです。また、労働者をグッドウィルから派遣先の会社を通じてさらに別の会社に送り込む違法な二重派遣が行われていた静岡県の事業所では、二重派遣であることが発覚しないように労働者にグッドウィルの名前を出さないよう口止めしたり会社の名前が入ったユニフォームを着るのを禁じたりしていたということです。さらに、福岡市の事業所では、労働者にヘルメットと安全靴を持たせて禁止された建設現場に派遣していました。
 厚生労働省では、グッドウィルの事業所では違法な派遣が常態化していたものとみて指導を強めるとともに、まだ明らかになっていない違法な派遣がないかどうか調べています。

↑ちなみに、「今日は船でした」と報告すると日給に500円の手当てがプラスされたというのは、本来労働者派遣が認められていない港湾労働への派遣をグッドウィルが承知していたことの証拠であり、会社ぐるみで違法派遣を行っていたことの証拠です。

二重派遣の業者に改善命令 千葉労働局
[2008年1月12日 読売新聞]

 グッドウィルから派遣された労働者をほかの企業に再派遣する二重派遣を行ったなどとして、千葉労働局は11日、人材派遣会社「グローバルサポート」(松戸市新松戸)に対し、労働者派遣法に基づく事業改善命令を出した。
 同局職業安定部によると、同社は2005年12月と06年5月?07年6月、派遣を受けた延べ708人を市川市内の物流管理会社に再派遣、同市内の倉庫で検品などの業務にあたらせた。
 また、04年10月?07年6月には、請負契約の形を取りながら市川市内の物流管理会社の倉庫に延べ3881人を派遣し、派遣先の指揮・命令で労働者を働かせていた。
 一方、グッドウィルに対する事業停止命令に関連し、同労働局は同社の派遣労働者からの相談を受ける窓口を15日に設置する。問い合わせは同労働局需給調整事業室(043・202・5181)へ。

二重派遣の業者告発 警視庁に厚労省
[中日新聞 2008年1月11日 夕刊]

 厚生労働省は11日、日雇い派遣大手グッドウィル(東京、GW)から送られた派遣労働者を別の会社に二重派遣したとして、貨物検査などを行う東和リース(東京都港区)を職業安定法違反で警視庁に刑事告発した。
 関係者によると、同社は派遣労働者を港湾荷役業を営む別の会社の指揮下で働かせたとされる。
 一方、GWに対しては、二重派遣や禁止業務への派遣などを繰り返していたとして、東京労働局が11日午後、事業停止命令を出す。事業停止命令は737カ所の全事業所が対象で、違法派遣を行った89事業所は4カ月間、その他は2カ月間の停止とし、停止期間中に再発防止策を取って報告するよう求める事業改善命令も同時に出される見通し。
 処分について舛添要一厚生労働相は閣議後会見で「経営者にはしっかり自覚を持っていただきたいし、法律に基づき厳格な処分を下す。企業は社会的責任が問われており、一人一人の経営者がそういう自覚に立って身の処し方を考えるべきだ」と述べた。
 また、労働者派遣法について「見直しも含めきちんと対応すべき時期に来ている。労働者に不利にならないのが原点で、実行したい」と改正に前向きな姿勢を示した。
 GWの折口雅博会長は昨年末に代表権を返上したが、会長職にとどまっている。

↓これは、京都の人材派遣会社が佐川急便グループの物流会社に、2年以上にわたって違法な二重派遣をおこなっていたというニュース。

二重派遣で長期就労 京都労働局、京の会社に事業改善命令(京都新聞)

二重派遣で長期就労 京都労働局、京の会社に事業改善命令
[京都新聞 2008年1月11日]

 京都労働局は11日、長期にわたり労働者を二重派遣の状態に置く労働者派遣法違反があったとして、京都市下京区の人材派遣会社「ヴィプランニング」(金森勉社長)に対して、事業改善命令を行った。
 同局によると、ヴィプランニングは2005年6月、佐川急便グループの物流子会社「佐川グローバルロジスティクス」(SGL、東京都)と契約を結び、労働者派遣を始めた。SGLは、派遣を受けた労働者をさらに静岡県浜松市の通販会社の倉庫に派遣し、通販会社の指示で働かせる二重派遣の状態としていたが、ヴィプランニングは昨年8月末までに延べ4657人の労働者を派遣していたという。
 ヴィプランニングは「派遣元として業務の把握ができていなかった。SGLとは昨年8月末に契約を解除して通販会社との直接契約に切り替えるなど、すでに改善はできている」としている。

↓LNEWSというのは、ロジスティクス・パートナー社が発信する物流業界の専門情報サイトですが、そこに今回の摘発の全体像が分かりやすく紹介されています。

東京労働局/二重派遣でグッドウィルに事業停止命令、佐川グローバルロジスティクスなど3社に改善命令(LNEWS)

東京労働局/二重派遣でグッドウィルに事業停止命令、佐川グローバルロジスティクスなど3社に改善命令
[LNEWS 2008年01月11日]

東京労働局は1月11日、違法な派遣が問題になっていたグッドウィルの全事業所に対して1月18日から2か月間、うち67事業所に4か月間の事業停止命令を出した。この関連で、グッドウィルから派遣された労働者をさらに派遣するいわゆる「二重派遣」に関与したとして、佐川グローバルロジスティクス、グローバルサポート、ヴィプランニングの3社に労働者派遣法に基く事業改善命令を行った。

佐川グローバルロジスティクスは、2004年11月から2007年8月にかけて派遣労働者延べ1万6061人をグッドウィル、ヴィプランニングから派遣してもらい、これらの労働者を請負契約と称して労働者供給事業を行った。二重派遣した労働者を静岡県浜松市内の就業場所で、供給先の指揮命令の下で、倉庫内の仕分け業務などに従事させたという。ヴィプランニングに対する事業改善命令は、京都労働局が行った。

グローバルサポートも2005年5月から2007年6月にかけて、グッドウィルから延べ708人の労働者を派遣してもらい、千葉県市川市内の倉庫に二重派遣し、検品作業などに従事させた。

このほか、港湾運送事業を手がける東和リースに対し、「形式的に請負契約と称する労働者供給契約に基き、グッドウィルから労働者派遣を受けた派遣労働者を労働者として供給し、供給先の指揮命令の下で港湾倉庫への搬入業務、船内荷役・船倉清掃業務に就かせ、労働者供給事業を行った」「派遣労働者を従事させてはならない港湾運送業務に従事させたことが判明した」などとして、法人と同社の取締役を職業安定法違反で警視庁に刑事告発した。

グッドウィルに対しては、東和リースの案件で職業安定法違反となる労働者供給事業を助長したほか、佐川グローバルロジスティクスの案件で、二重派遣されていると知りながら1万1404人の労働者を派遣し続け、二重派遣を助長した。

また、グッドウィルにはこのほか5案件についても職業安定法や労働者派遣法違反が判明、東京労働局は一連の事案に対し、原因究明と再発防止措置を講じるよう求める事業改善命令も同時に出した。

グッドウィルのコメント「この度の処分を厳粛に受け止め、原因となった問題点全てに対して検討を加え、再発防止に取り組みたいと考えております。事業停止期間中は、登録スタッフの皆様には新たな派遣就業先へのご紹介は出来ませんが可能な限り就労機会の確保に最大限努めたいと考えております。お客様及び登録スタッフの皆様をはじめ関係者の方々、株主の皆様には、大変ご迷惑及びご心配をお掛けしておりますこと、心より深くお詫び申し上げます」

グッドウィル・グループ本社の発表は、こちら↓。 ※PDFファイルが開きます。
(追加)当社子会社「株式会社グッドウィル」の事業停止命令及び事業改善命令に関するお知らせ

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