グッドウィルの処分に関連して、「北海道新聞」が、日雇い派遣のあり方を抜本的に見直すべきだとする社説を掲載。
社説:日雇い派遣 この制度を見直す時だ
[北海道新聞 2008年1月16日]「日雇い派遣」業界の法令順守意識の無さにあぜんとする。
業界大手のグッドウィルが労働者派遣法などが禁じる港湾や建設業務への派遣と労働者の二重派遣を繰り返し、厚生労働省から事業停止命令を受けた。
対象は全708事業所、期間は4?2カ月間で、過去最も重い処分だ。
2005年にも禁止業務への派遣で事業改善命令を受けたのに、違法行為を続けていた。当然の処分だ。
新宿支店はじめ5事業所が04年10月以降、荷役会社に派遣した労働者延べ1200人余を荷役会社が別の会社に派遣する形で、派遣法が禁じる港湾荷役業務に就かせるなどしていた。
業界では、やはり大手のフルキャストが昨年八月、港湾業務への派遣で事業停止命令を受けたばかりだ。
違法行為をきちんと監視・指導せずにいままで野放しにしたとすれば、厚労省の対応もお粗末だ。
厚労省は今回の業務停止で職を失う人たちの対応に万全を期すべきだ。
派遣法が施行された1986年、派遣の対象は通訳、秘書、システム開発など13の専門業務に限られていた。
その後、経済界の後押しでどんどん広がり、2004年の法改正で一部の危険な業務を除き解禁となった。
職業安定法は原則として、労働者の供給事業を禁止している。労働力は商品ではない、との考えからだ。
派遣労働は例外で、まして電話一本で呼び出されて日々違う職場で働くいまの日雇い派遣は想定外だった。
短期の不安定雇用のため、雇用保険や健康保険に加入できない。1カ月に平均14日間働き、月収は13万円余との調査結果もある。
働いても生活保護以下、ワーキングプアそのものか予備軍だと言える。
日雇い派遣をはじめ非正規雇用の労働者は3人に1人に増えている。
背景には経済界の需要がある。低賃金でいつでも切れる「雇用の調整弁」として利用してきたのが実態だ。
危険な仕事でも、生活のために拒否できない人が少なくない。そういう労働者を使って業績を伸ばす企業の倫理観、社会的責任が厳しく問われる。
厚労省は日雇い派遣の就業条件などを盛り込んだ指針づくりを検討中だ。だが、これでは、日雇い派遣にお墨付きを与えることになりかねない。
日雇い派遣そのものを法律で禁止すべきだとの議論もある。
当面、派遣対象の業務を絞ることが有力な選択肢ではないか。
いずれにしろ、日雇い派遣に頼らざるを得ない人たちの賃金や身分、社会保障をはじめ待遇・生活環境全体を向上させる総合的な施策が不可欠だ。
規制緩和の功罪をいま一度検証し、日雇い派遣労働のあり方を抜本的に見直す時が来ている。