派遣労働の問題を厳しく追及した共産党の志位和夫委員長の国会質問に、さまざまな反響が寄せられています。
今朝の「毎日新聞」では、編集委員の山田孝男氏が「今国会屈指の追及だった」という同僚のコメントに「なるほど」と思ったと書いています。共産党の「しんぶん赤旗」でも、寄せられた感想、意見などが紹介されています。
風知草:ハケンと志位和夫のGJ(毎日新聞)
志位質問 反響やまず/使い捨て派遣労働の無法を追及/ネット上で大きな話題に(しんぶん赤旗)
ハケンと志位和夫のGJ=専門編集委員・山田孝男
[毎日新聞 2008年2月18日 東京朝刊]「GJ」
「SGJ」
「CGJ」× × ×
「これは?」
共産党委員長・志位和夫が尋ね、側近が答えた。
「GJはグッジョブ(goodjob=よくやった!)。SGJがスーパー・グッジョブ。CGJは『志位、よくやった』というところでしょう」
14日のことだ。インターネットの動画共有サイト「ニコニコ動画」に志位の国会質問(8日)の映像が投稿され、掲載から3日で書き込みが4000件を超えた。志位はプリントされた要約を見ている。大半が賛辞。「2ちゃんねる」には「この質問はよかった」と並んで「天皇制廃止、自衛隊反対の2枚看板を下ろせばいいのに」という書き込みも現れた。× × ×
志位は予算委の持ち時間50分すべてを派遣労働(ハケン)と雇用格差に費やし、首相と厚生労働相は防戦に追われた。
実は、私は聞き逃した。予算委をカバーしている同僚が、今国会屈指の追及だったというので議事録を読み、インターネットで動画をチェックし、なるほど、と思った。
この10年、経済再生の名の下に労働者保護法制の緩和が進んだ。コスト削減優先で非正規雇用が増えた。低賃金で社会保険もなく、簡単にクビを切られる不安定な雇用の拡大を放置していいのか。この問題は小泉内閣末期から注目され始め、とくに昨年以降、野党各党と公明党が追及を競ってきた。
志位があらためて掘り下げようと思い立ったのは昨年秋。共産党系労組のナショナルセンター「全労連」や派遣労働者の連絡支援組織から情報を集め、勉強し直した。その総仕上げが8日の質問だった。
「粉塵(ふんじん)、アスベストが舞う職場で、正社員は防塵用マスクを支給されたが、派遣労働者はコンビニでマスクを買うよう勧められただけ」
「倉庫作業と言われて行ったら冷凍倉庫だった。軍手しか持っておらず、半日働いて両手とも凍傷になった」
日雇い派遣の過酷。法網をくぐり抜け、派遣労働に依存し続ける大企業。志位は次々に実例を挙げて「規制緩和から規制強化へ転換を」と迫り、首相は「研究会で検討する」と答えた。これが、14日発足した厚労省の有識者研究会である。
質問の前夜は湯船につかって作戦を練る。もとより国会屈指の論客だ。与党席から拍手がわき、「いい質問だ」と合いの手が入る場面もあった。
志位に手応えを聞くと、クリップでとじた厚さ3センチほどの記録の束を取り出し「これは一部なんですが、ぼくも15年、国会議員やってるけど、こんなに反響が来たのは初めてですね」と興奮気味である。
テレビの生中継に加え、共産党ホームページや、動画共有サービス「ユーチューブ」の「JCP(日本共産党)ムービーチャンネル」のデータが他の動画サイトにも転載され、反響はやまない。差別される側からの謝辞や情報提供だけでなく、矛盾に直面する経営者、管理職、正社員からも好意的な反響が寄せられているという。
共産党の衆院議員はピークの1979年に39人いた。03年でも20人だが、今は9人。党勢回復へ弾みがつくか。ピアノが趣味の志位は、息抜きに練習課題曲と決めているチャイコフスキーの小品「ノクターン」を弾き、新たな想を練る。(敬称略)
志位質問 反響やまず 使い捨て派遣労働の無法を追及
ネット上で大きな話題に
[2008年2月15日(金)「しんぶん赤旗」]貧困と格差の広がりの背景にある雇用問題、とりわけ人間をモノのように使い捨てにする派遣労働の問題を取り上げ、大きな反響をよんだ、日本共産党・志位和夫委員長の質問(八日、衆院予算委員会)から一週間がたちます。新聞やテレビなど、一般のマスメディアがほとんどとりあげなかったのに、質問への反響、激励はあとをたちません。テレビ中継を見たり、「しんぶん赤旗」の報道を読んだ人たちを通して話題になっているほか、インターネット上で広がりつつあるのが特徴です。大反響から何が見えてくるのか――。
“地獄の日々、私も”
志位委員長は質問で、派遣労働の深刻な実態をキヤノンなどの労働者からの聞き取りによる具体的な事実をあげて告発するとともに、労働者派遣法が労働者を守らず、悪質な派遣元、派遣先企業を保護する法律になっていることを浮き彫りにしました。そして、「労働者派遣法を“労働者保護法”へと抜本的に改正すべきだ」と迫りました。
党本部への反響で大きかったのは、深刻な実態の告発への共感であり、自らの体験に基づいた実態の告発でした。
以前、キヤノンの電子工場で派遣社員として働いていた人からは「将来が見えず、不安で仕方ありません。世の中こんなもんだと絶望していましたが、志位さんの質問を見て、一筋の光が見えた気がします」というメールが寄せられました(九日)。「ライン主任を任されていましたが、私以外全員外国人でした。深夜の残業は当たり前、毎週のように休日出勤です。『代わりはいくらでもいる!』これがキヤノンの口癖です。あるとき私のラインの人が流産しましたが、次の日には仕事に来ていました。休んだらもう仕事がないですから」
「志位委員長さんの発言に涙が出ました。私たち派遣労働者は、不安定な雇用と低賃金、長時間労働の毎日に疲れ果てています。明日の希望など全く抱けません。地獄です。こんな実態を的確に代弁下さり、捨てられたような運命に落胆していましたが、エネルギーがわいてきました」(メール、九日)
「私自身も朝九時から夜九時とか、朝七時半から夜十時などという過酷な勤務を強いられています。将来に希望などありません」(埼玉県の人からのメール、十二日)“日本社会の大問題”
この問題が、派遣労働者だけの問題ではなく、日本社会全体のあり方の問題だととらえた声も数多く寄せられました。
「私は経営に携わっているが、キヤノンのようなやり方が普通になると、すべての企業がだめになる。経営者であっても、社会的秩序は必要だと思う」(長野県の男性、電話、八日)
「若い人が二―三年勤めても、このような勤め方ではキャリアアップできないことが不安だ。私は経営に携わっており、御党とは立場を異にしているが、志位さんの質問の問題意識にそのことがうかがえた」(東京都の男性、電話、八日)
「私の勤めていた有名な大企業でも、正社員の減少、派遣、請負の増加と、労働者の権利が守られておりません。管理職の間でも、このようなことでよいのかと疑問をもつ人が大勢います」(メール、十二日)
「『まったくそのとおりだ』と声をはりあげてしまうほど共感しました。派遣労働という極めて劣悪で差別的な労働形態が、日本の社会全体をゆがめるものになっている実態に鋭く迫った質問に大いに勇気づけられました」(大分県の六十七歳の男性、メール、九日)
「志位さんの質問は社会の底辺で苦しむ労働者の叫びであり、社会の明日への扉を開こうとする力強いノックです」(富山県の六十三歳の男性、メール、十二日)“共産党ならではだ”
「企業献金をもらっていない共産党だからこそできる追及だ」(男性)など、大企業の横暴勝手に何の気兼ねもなく正面から立ち向かえる日本共産党ならではの質問だとの声も相次いでいます。
「世界一のキヤノンのひどい労働実態を明らかにしたのには驚きました。共産党でなければ、こういう不正は暴露できませんね」(飲食店勤務の女性、電話、八日)
「痛快でした。経団連会長御手洗氏のキヤノンの実態を暴き、調査を約束させた。日本共産党しかできない質問ですね」(京都府の六十歳の男性、電話、九日)
「他の党とちがい、迫力ある的を射たものでした。現場の声をよくつかんで、説得力があり、さすが共産党と思いました」(宮崎県の男性、電話、十日)
「こんなに日本の将来を心配して政府に答弁を求める人がおられるとは知りませんでした。志位委員長さんがその実態をつぶさに調査されて、熱意をもって政府に答弁を迫る迫力は、おそらく衆院議員の中でも筆頭ではないかと感激しました」(メール、十二日)
「すばらしい質問でした。共産党のポリシーにすべて賛同できるわけではありませんが、二大政党を選べと言われたら『自民、民主』ではなく『自民、共産』だと思っています」(メール、十三日)◆ランク1位も
「ありがとう! 応援するぜ!」「わかりやすい」
インターネット上のある動画サイトでは、志位委員長の八日の質問が、「本日(十四日)の政治分野の動画ランキング」第一位。質問を見た人が感想をサイト上に次々と書き込み、四千七百以上になっています。
「…これが厚労相の答弁? ありえないだろ」「キヤノンてこんな会社だったのか…」など、画面を見つめる人の息遣いが聞こえてくるようです。
志位質問は五十分間という長さ。それでも「最後まで見てしまった」「論理的だったしよかったよ」と、真夜中にサイトを見た人からの感想もありました。
目立つのが共産党に対する期待です。「共産GJ(グッドジョブ)過ぎる」「党名なんて関係ないね。C(志位委員長)応援する!」など、質問から一週間たった今も、感想は増え続けています。◆ブログで続々
インターネット上の個人の日記(ブログ)でも、志位委員長の質問を見た人の感想がさまざまに書き込まれています。
車中、ラジオで質問を聞いていたという新潟県の男性は「おもわず、車を止めて目的地への時刻も引きのばして、聞き入っていた」。
昨年十一月からキヤノンで派遣として働き、一月の中旬に突然解雇された男性のブログでは、「寮費その他抜かれて給料は十万前後」「いきなり今週で解雇するといわれた」と自らの経験を語っています。
また、「僕個人としては、共産党と思想的に相容れることはない」という人のブログには、「日本の内政問題(格差問題)に関しては、『なんとかしたい』という思いは一緒」「共産党を応援するのは嫌です。それでも、日本のためであるのなら、共産党に『がんばれ』とエールを送りたい」と書かれています。
質問の動画は、ユーチューブの日本共産党JCP movieから↓。