偶然本屋で見つけたもの。著者のローレンス・M・クラウスは、アメリカのケース・ウェスタン・リザーヴ大学の宇宙論・天体物理学教育研究センター所長で、ポピュラー・サイエンスの書き手でもあるそうです。
で、いま話題の「宇宙は実は26次元からなっていた」「余剰次元は、くるくると極小サイズに巻き上げられている」という話題の「超ひも理論」にたいして、はたして超ひも理論は確かな理論なんだろうか? ということを考えたものです。
内容は、とても紹介することなどできません。一般向けに書かれているとはいえ、量子力学の素養や「超ひも理論」というものがどういうものか、ある程度知っていること前提にしているので、僕には分からないところだらけ。それでも、いってみれば、世の中、「超ひも理論」一色ではない、ということが分かって、面白かったです。
一番の問題は、「11次元なら数学的に統一的に説明できる」、「26次元なら、矛盾を解決できる」というだけで、どんどん“理論”は自己展開しているが、いまだに「超ひも理論」を裏付けるような事実は何も見つかっていない、ということです。くるくると巻き上がった余剰次元は、私たちの4次元と、まったく何の相互関係ももたないのか、11次元あるいは26次元あったものが、なぜ4つの次元を残して、他はくるくると巻き上げられてしまったのか、余剰次元は、それが巻き上げられてしまったあとに何の痕跡も残していないのか、などなど、「超ひも理論」は基本的な問題に何も答えていないというわけです。
訳者あとがきでは、ほかにも「超ひも理論」に懐疑的だとされる本も紹介されていたので、こんどはそれらを読んでみることにします。
【書誌情報】
著者:ローレンス・M・クラウス/訳者:斉藤隆央/書名:超ひも理論を疑う――「見えない次元」はどこまで物理学か?/出版社:早川書房/刊行年:2008年2月/定価:本体2,000円+税/ISBN978-4-15-208892-5