海上自衛隊の一方的な発表に、漁民たちが怒り、GPSの記録を含め衝突前後の各船の動きを詳細に公表。まだ事実関係のすべてが明らかになっている訳ではないが、衝突の原因が海上自衛艦の側にあったことはもはや疑う余地はない。
船で混み合う海域だった、大型船はしばしば直進している、というが、民間の大型船はそれなりに周囲の漁船に警告を送ったりして、漁船に気をつけながら運行している。実際問題として、大型船の回避行動は時間もかかるし、その間に船は相当すすんでしまう。だから、臨機に小型船舶の側がよけることになることもあるという。
しかし、だからといって、小型船舶の側がよけのなかったのが悪い、といえば、衝突事故はすべて小型船舶の責任と言うことになってしまう。
イージス艦、漁船団を避けず直進 僚船GPSで裏付け(朝日新聞)
当直連携に問題か=視認5分後が交代時間?灯火は「赤」「白」・イージス艦事故(時事通信)
イージス艦、漁船団を避けず直進 僚船GPSで裏付け
[asahi.com 2008年02月21日11時51分]マグロはえ縄漁船清徳丸と衝突した海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」が、清徳丸とともに漁場に向かっていた漁船団に回避措置を取ることなく、接近していたことが、複数の漁船の乗組員らの証言で明らかになった。それぞれの漁船の全地球測位システム(GPS)装置に残された、あわてて衝突を回避しようとした漁船の航跡画像と合わせ、自動操舵(そうだ)中のあたごが回避せず直進を続けた様子が裏付けられた。海上保安庁は漁船側からもこうした記録を入手、あたごの見張りや回避対応に過失があったかどうか、乗組員の事情聴取を進めている。
衝突した清徳丸と同じ船団だった幸運丸の堀川宣明さん(51)によると、南西方向に航行中、レーダーにあたごの船影が初めて映ったのは、衝突約30分前にあたる19日午前3時半ごろ。あたごは、左前方11キロの地点を船団に向かうような形で航行していた。
当時、幸運丸は約15ノット(時速約27キロ)で航行中で、堀川さんはあたごを目視でも確認した。約5キロの地点に近づくと、右舷を示す緑色の灯火も見えた。同じ船団の金平丸の市原仁副船長も、前方左側にあたごの緑色の灯火を確認したという。
5隻前後の船団の前方を航行していた幸運丸は左後方3?4キロ以内の範囲に、一緒に漁場に向かっていた3、4隻の漁船がついてきているのを、レーダーで確認した。清徳丸や金平丸などの僚船とみられるという。
午前4時ごろ、あたごは幸運丸の前方2.7キロにまで近づいてきた。堀川さんは船の灯火の位置が高いことから、あたごの船体が大きいと判断。かじを切ったり、減速したりする様子がうかがえず、危険を感じた幸運丸は右にかじをきり、あたごの前を横切るようにして衝突を回避したという。
あたごはその後も直進を続けていた。金平丸も約3キロ以内にまで近づいたあたごに危険を感じて右にかじを切った。対向時に衝突を回避する方法として定められている右へかじを切る行動をあたごが取る様子がないとして、金平丸は今度は左に大きくかじを切った。市原副船長は、あたごが減速している様子は感じなかったという。
あたごが灯火を5回余り点滅させて、周囲の船に警告信号を送ったのは、幸運丸があたごを回避してから約5分後だった。その直後に艦全体に明かりがつき、停止したという。
防衛省の説明では、あたごは、清徳丸と衝突する1分前まで自動操舵を続けていた。衝突2分前に清徳丸とは別の漁船が、右前方からあたごの前方を横切ったことも明らかにしている。
当直連携に問題か=視認5分後が交代時間?灯火は「赤」「白」・イージス艦事故
[時事通信 2008/02/21-21:48]海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたごの見張り員が衝突の12分前に清徳丸を視認した際、当直員同士の連携が不適切だった疑いがあることが21日、分かった。海自幹部は「うまく連携していたなら、もっと早く回避していたはずだ」と指摘。この5分後に当直の交代時間を控えており、引き継ぎなどに追われ、適正な措置を取らなかった疑いが浮上した。
あたごの見張り員は19日午前3時55分ごろ、清徳丸とみられる灯火を視認した。同4時6分には、清徳丸が約100メートルまで近づき、右にかじを切ったのを、同じ見張り員が確認。あたごは後進の回避措置を取ったが、この1分後に衝突した。
防衛省幹部によると、最初の灯火は「赤」と「白」で、あたごの右前方に見えたという。左舷とマストを示す灯火で、海上衝突防止法が定める回避義務は、あたごにあったことを意味している。
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