やっぱりもっと前から確認していた

イージス艦あたごの交代前の当直が、すでに漁船群を確認していたことが明らかに。また、艦橋ではレーダーによる追尾などの操作をまったくおこなっていなかったことも判明。

交代前の乗組員 漁船群を確認(NHKニュース)
イージス艦事故:レーダー追跡怠る…船影特定作業記録なし(毎日新聞)
見張りの「見逃し」濃厚に=衝突前、当直全員が交代?イージス艦衝突事故(時事通信)
イージス艦事故:見張り員「漁船が避けると思った」(毎日新聞)
「事実明らかに」と強まる批判=防衛省に抗議電話1千本?イージス艦事故(時事通信)

交代前の乗組員 漁船群を確認
[NHKニュース 2月23日 19時46分]

 千葉県の房総半島の沖合で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船が衝突し、漁船の親子2人が行方不明になっている事故で、イージス艦の交代前の当直の乗組員がすでにイージス艦の周辺海域に複数の漁船がいることを確認していたことが新たにわかりました。この情報は、次の当直責任者に引き継がれていたこともわかり、海上保安本部は、当直責任者が漁船を監視するよう適切に指示していなかったとみて、さらに詳しく調べています。
 この事故で横浜の第3管区海上保安本部は、イージス艦側に漁船を回避する義務があったとみて、イージス艦がいつの時点で漁船の存在を確認し、情報の伝達がどのように行われたかについて調べを進めています。これまでの調べで、イージス艦では午前3時45分から55分の間の10分間に引き継ぎが行われましたが、このとき、すでに操だ室にいた交代前の当直の乗組員がレーダーなどでイージス艦の周辺海域に複数の漁船がいることを確認していたことが新たにわかりました。また、この情報は、次の当直責任者の当直士官に引き継がれていたこともわかりました。当直を交代したばかりの見張りの隊員は、衝突の12分前の午前3時55分に漁船の明かりを見たとこれまで証言していますが、イージス艦はそれより前に、すでに漁船を確認し、当直の間で引き継ぎも行われていたことになります。しかし、イージス艦はその後も自動による航行を続け、衝突のわずか1分前になってようやく手動に切り替えて危険を回避する行動をとりましたが、午前4時7分、「清徳丸」に衝突しました。このため、海上保安本部では引き継ぎを受けた当直士官が漁船の動きを監視するよう見張りやレーダーの担当者に適切に指示していなかったとみて、当直士官や交代前の当直の隊員からも詳しく事情を聴き、衝突に至ったいきさつをさらに調べています。

イージス艦事故:レーダー追跡怠る…船影特定作業記録なし
[毎日新聞 2008年2月23日 15時00分]

イージス艦内の情報・指示の流れ
イージス艦内の情報・指示の流れ

 千葉・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳丸」の衝突事故で、艦橋や戦闘指揮所(CIC)にある水上レーダーのモニターに、清徳丸の船影を特定する作業をした形跡が残っていないことが分かった。事故直前に当直が交代したこともあり、運航責任者の当直士官やモニターを専門にチェックする担当者らが、周辺船舶の動きを監視する作業を怠っていた可能性が高い。横須賀海上保安部などは、見張り員の視認情報が伝わらなかったことと併せ、乗組員の確認状況などを調べている。
 関係者によると、あたごのマストには、半径20?30キロの船影をとらえられる水上レーダーが2基設置されている。レーダーでキャッチした情報をモニターする装置は当時、当直士官や航海科員ら10人がいた艦橋と、作戦の中枢で7人が配置されていたCICに、それぞれ一台ずつ設置されている。
 当直士官らは、電波が反射している場所を発見し、探査する範囲や感度を調整しながら船影として確定。CICにはモニターを専門に監視し船影を特定する「電測員」がいて、特定すれば航跡が確認できる仕組みになっている。CICなどからの情報で、当直士官が操舵を最終的に判断する。
 ところが、今回の事故前、あたごのレーダー機器に清徳丸の船影を確定する作業をしたことを裏付ける記録は残っていなかった。衝突12分前、清徳丸の灯火を確認したという見張り員からの情報が伝わらなかっただけでなく、当然行わなければならないレーダーでの監視を当直士官らが怠っていた可能性が高い。
 事故直前に当直が交代していたが、護衛艦乗船経験のある自衛官は「基本的に画面にモニターされた船影はすべて特定する必要があるし、特定されたデータも引き継がれるはず」と話している。
 自衛隊の艦船の場合、民間の船のように事故前の速度や方位を記録できる航海情報記録装置の設置は義務づけられていない。あたごの場合もこうした航海記録がなく、石破茂防衛相は22日の国会審議で、問題点として指摘している。【本多健】

見張りの「見逃し」濃厚に=衝突前、当直全員が交代?イージス艦衝突事故
[時事通信 2008/02/23-16:13]

 千葉県・房総半島沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたごの見張り員が衝突12分前に灯火を確認後、直前まで見逃していた疑いが強いことが23日、分かった。第3管区海上保安本部(横浜)は、見張り員が2分前に見た緑の灯火は別の船だったとみて、事情聴取を進めている。
 見張り員を含む当直員は衝突直前に全員が交代したことも判明。交代は通常、安全が確保された後に行われ、あたごが漁船団の接近に気付いていなかったか、危険視していなかったことを裏付けた形だ。
 防衛省などによると、見張り員は19日午前3時55分、右前方に船の左舷を示す赤灯を視認。同4時5分には、同じ見張り員が同方向に右舷を示す緑灯を見た。緑灯は速度を上げて動き、1分後に約100メートル前方に接近したため、漁船と気付き、後進をかけて回避したが、同4時7分に衝突した。
 3管は、あたごは清徳丸の左舷に衝突したことをほぼ断定。赤灯を見せる清徳丸が緑灯を見せるには、Uターンに近いかじを切ったことになり、2分後の左舷への衝突は不自然だ。
 清徳丸の後ろにいた金平丸の船長は「緑灯は自分の船ではないか」と証言しており、3管は4時5分の緑灯は別の船で、見張り員が右前方から迫る清徳丸を見逃していた可能性が極めて高いとみているもようだ。

イージス艦事故:見張り員「漁船が避けると思った」
毎日新聞 2008年2月23日 2時30分 (最終更新時間 2月23日 8時57分)

 千葉・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳(せいとく)丸」の衝突事故で、あたごの見張り員が衝突12分前に清徳丸とみられる漁船の灯火を確認した際、「相手が避けると思った」との趣旨の話をしていることが分かった。横須賀海上保安部(神奈川県横須賀市)は、あたごが清徳丸の左舷からほぼ直角に衝突したとみており、あたごが回避義務を怠った疑いが一層強まった。
 横須賀海保の調べでは、清徳丸は船首部(11?11.4メートル)と船尾部(5.8?4.1メートル)の二つに分断され、操舵(そうだ)室がほぼなくなっていた。切断面に近い船首部の左舷側に、あたごの塗装とみられるグレーの塗膜片が計4カ所付着していた。
 一方、あたごは艦首部分に清徳丸のものとみられる3色の塗膜片や傷が確認されたことから、同海保は2船がほぼ直角に衝突したとの見方を強めている。
 防衛省などによると、あたごは衝突12分前に見張り員が清徳丸の左舷のものとみられる赤灯を発見した。衝突した場所の約4キロ手前、両船の距離は9キロ程度あったとみられる。
 海上衝突予防法は船が海上で交差しそうになった際、他船を右方向に見る船が右に避けるルールを定めているが、あたごは自動操舵を続けた。
 見張り員は関係者に「(このまま進んでも)避けられると思った」と話しており、漁船側が避けると判断したとみられる。清徳丸の僚船の船長らは「自衛艦など大型船は、小回りが利く漁船が回避すると思い込み、自分たちは漫然と進んでくる」と批判している。
 灯火を発見したことは、見張り員からレーダー員には伝わらないままイージス艦は自動操舵で前進を続け、同じ見張り員が再び灯火に気づいたのは衝突2分前、漁船と認識したのはわずか1分前で、全力で後進をかけたが間に合わなかった。
 こうした点から同海保は、あたごの見張り員の危険回避の判断が遅れたことが事故原因の一つとみて、引き続き事情聴取を進める。

防衛省に抗議電話が殺到しているらしいが、もっともな話だ。

「事実明らかに」と強まる批判=防衛省に抗議電話1千本?イージス艦事故
[時事通信 2008/02/23-05:40]

 イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、防衛省の情報開示に対し、批判が強まっている。19日の発生から、抗議電話は1000本を超え、市民団体の要請も後を絶たない。同省は「捜査に影響がある」と釈明するが、清徳丸の視認をめぐる時刻の訂正や、僚船船長らの証言との食い違いに口を閉ざす姿勢は、「隠ぺいしているのではないか」と不信感を増大させるばかりだ。
 防衛省では事故後、主要幹部が定例を含め10回近く会見したが、22日になっても証言との食い違いなどを明確に説明しない上、(1)あたご乗員の配置(2)レーダーの探知状況(3)見張りからの報告の有無?など、基本的な事実さえ明らかにしていない。増田好平事務次官によると、「海上保安庁の捜査に予断を与えてはいけない」からだという。

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