防衛省の言い分が次々に覆った。まず、航海長を呼び出す際に「怪我人に付き添わせる」としていた点は、負傷者がいたのは事実だが、航海長は別のヘリで防衛省に直行していたことが判明。
次に、防衛事務次官は航海長からの事情聴取について「内容を覚えていない」「記録は存在しない」としていたが、メモは作られていた。
こうなってくると、いまの防衛大臣、防衛事務次官のもとで、事故の真相究明と原因追及が果たしてできるのか? という根本的な問題を考えざるをえなくなる。
事故当時、救助作業で負傷、1人入院 あたご乗組員(朝日新聞)
イージス艦事故当日 事前連絡なく3機のヘリを使用(MSN産経ニュース)
航海長事情聴取のメモ、防衛次官が存在認める(読売新聞)
イージス艦事故:海保「けが人移送」も否定 虚偽上塗りか(毎日新聞)
イージス艦事故:次官説明、虚偽の疑い強まる(毎日新聞)
イージス艦事故:航海長聴取は石破防衛相の意向で自室に(毎日新聞)
事故当時、救助作業で負傷、1人入院 あたご乗組員
[朝日新聞 2008年02月28日11時10分]海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸との衝突事故で、清徳丸の救助作業中にあたご乗組員がけがをして病院に搬送され、現在も入院中であることを、27日、防衛省などが明らかにした。捜索のために船外機付きのゴムボートを下ろした際に、乗組員の1人が指を骨折したという。状況報告のために同省に向かう航海長を乗せたヘリコプターとは別のヘリで、19日午前9時半ごろ、神奈川県横須賀市の病院に向かったという。
防衛省は当初、あたご航海長の聴取前に海上保安庁側に、「けが人を搬送し、事故の状況報告で幹部を下ろす」と伝えたと主張していたが、海保側は「確認できない」とし、防衛省も「連絡の不備だった」と謝罪した。
イージス艦事故当日 事前連絡なく3機のヘリを使用
[MSN産経ニュース 2008.2.28 13:03]千葉県・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、事故当日の19日に防衛省・海自が3機のヘリコプターを運用し、海上保安庁への事前連絡なしに乗組員の移動や幹部の乗り込みを行っていたことが分かった。
防衛省によると、あたごの航海長を防衛省に呼びつけたヘリは19日午前9時10分にあたごを出発、同9時54分に東京都新宿区市ケ谷の防衛省に到着した。
これとは別のヘリが、午前9時27分にあたごを出発。午前10時ごろ、横須賀総監部に到着していた。清徳丸の救助作業で指を骨折した乗組員1人を治療のために運ぶヘリで、同省では、病院に搬送したとしている。
いずれのヘリも千葉県内の航空基地から派遣されていた。
また、護衛艦隊司令部の幕僚長はこれより早い同日午前8時に離陸したヘリで同8時32分にあたごに乗り込み、乗組員からの事故当時の事情聴取を始めていた。
これまで事故当時にあたごから飛んだヘリは一機とみられていた。
ヘリをめぐって、防衛省や海自はこれまで「けがをした乗員と幹部を報告のため運ぶ」と海保に事前連絡し、了解を得ていたと説明していたが、27日に石破茂防衛相が聴取は海保に無断で「不適切だった」と表明。増田好平事務次官も「事前の海保了承の事実は確認できない以上、これまでの説明は(虚偽だった)可能性は排除できない」と一転させた。
しかし、増田次官は、護衛艦隊幕僚長のあたご乗り組みについて(1)誰の指示なのか(2)海保には連絡したのかなどについては「確認できない」として明言を避けている。
航海長事情聴取のメモ、防衛次官が存在認める
[2008年2月28日20時49分 読売新聞]防衛省の増田好平次官は28日の記者会見で、海上自衛隊のイージス艦「あたご」の衝突事故で焦点の一つとなっているあたご航海長の事情聴取に関し、「事情聴取した内容をもとにしてまとめて、ファクスで海上保安庁に送った。少なくとも1人がメモを記録していることがわかっている」と述べ、事故当日の19日の事情聴取メモの存在を認めた。
メモの存在を巡っては、次官が27日夜の記者会見で「(事情聴取の内容は)記憶にない。メモをとっていたかどうかわからない」と繰り返し、議事録はないと説明していた。
次官は28日の会見で、メモの内容について、「出せるものは話すが、捜査に影響を与えるものは控えさせていただく」として開示できないとした。
この事情聴取で航海長は「漁船発見は衝突2分前」と説明したとされる。
石破防衛相も同日の参院外交防衛委員会で、「聞き取った内容を取りまとめたものを、運用企画局長が海上保安庁に送った」と答弁した。
イージス艦事故:海保「けが人移送」も否定 虚偽上塗りか
[毎日新聞 2008年2月28日 15時00分 (最終更新時間 2月28日 18時32分)]海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故を巡り、石破茂防衛相らが海上保安庁の了解を得ずに航海長から事情を聴いた問題で、海保に「けが人と幹部をヘリで運ぶと事前に連絡した」とする増田好平事務次官の説明を、海保が否定していることが分かった。事実上の虚偽説明を釈明する次官の会見で、さらに虚偽を重ねた可能性があり、石破氏ら防衛省に対する批判が強まりそうだ。
増田次官は27日の会見で、事故当日の19日午前、横須賀地方総監部から横須賀海上保安部に対し「救助活動で救命艇を下ろす際に負傷した乗組員1人と、部隊連絡のための幹部1人をヘリで搬送する」という連絡を行い、けが人は横須賀市へ、幹部は海幕へ、別のヘリで運んだと説明した。
ところが、海保では、この連絡自体の確認ができず、19日午後、幹部1人(航海長)を搬送したとする事後説明については、海上保安庁が連絡を受けたことを認めたが、けが人の報告があったことは否定している。
航海長の搬送については、実際には別々のヘリで行われていたにもかかわらず、海幕は当初、省内の幹部に対し「東京の医療施設に運ぶけが人の付き添いで航海長が同乗した」と説明し、この内容が報道されている。
防衛省幹部の一人は「航海長を船から離れさせたことが露呈した当初、海幕は『航海長はけが人の付き添いだった』と正当化しようとした。実際には、けが人と航海長が別々のヘリだったため、報道された『同乗』という説明と矛盾が生じ、会見で増田次官が、けが人を運ぶ連絡もしたと主張せざるをえなかったのではないか」との見方を示している。
イージス艦事故:次官説明、虚偽の疑い強まる
[毎日新聞 2008年2月28日 21時17分 (最終更新時間 2月28日 21時45分)]海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳(せいとく)丸」の衝突事故で、石破茂防衛相らが海保に無断で航海長の聴取をしていた問題で、防衛省の増田好平事務次官は27日の会見で「(事前に了解を得ていたという説明が虚偽だった)可能性は全く排除できるということではない」と述べた。これまでの説明が虚偽だった疑いが強まった。
一方、石破氏は28日の参院外交防衛委員会で、大臣室での再聴取は自身の意向だったことを明かした。捜査妨害とも取られかねない大臣室での聴取を防衛相自ら発案したことで、石破氏の責任追及はさらに強まりそうだ。
増田氏によると、19日午前9時過ぎ、救助活動中にけがをした乗組員を神奈川・横須賀基地へ、部隊への報告のために航海長を海上幕僚監部(東京都新宿区)へ、2機のヘリコプターでそれぞれ移送した。海幕幹部が午前10時ごろから約1時間事情を聴いた後、正午ごろから約1時間、大臣室で石破氏や増田氏ら約10人が再聴取した。乗組員と航海長の移送は、横須賀海上保安部に事前連絡し了解を得ていると説明した。
しかし海保では連絡自体の確認ができず、航海長の搬送については、事後に連絡を受けたことを認めたが、けが人の報告があったことは否定している。
石破氏は25日の衆院予算委員会で「捜査の厳正性のため、乗員に接触していない」と答弁していたが、28日の参院外防委では「話を聞いていたと言うべきだった」と前言を撤回した。航海長の聴取については「(海幕に)呼べという指示は出していない。(海幕長から)事前に教えてもらいたかった」と述べた。だが、海幕で聴取していることを知り「ならば私も聴く」と再聴取が自らの意向だったことを認めた。増田氏も28日の会見で同様の説明をしている。
石破氏は「(海幕に)呼べという指示は出していないが、呼ぶこと自体は不適切だと思わない」と述べた。虚偽説明ではという追及には「隠す意図は全くなかった」と反論した。
また、増田氏は27日の会見では大臣室での再聴取内容について「正式な議事録は取っていない。どんな内容だったか覚えていない」と述べていたが、28日の会見では「事務方が記録を取っていた。メモを作成して(19日)夕方には海上保安庁にファクスで送った。(私も)目を通した」と証言を翻した。【本多健、田所柳子、加藤隆寛】
イージス艦事故:航海長聴取は石破防衛相の意向で自室に
[毎日新聞 2008年2月28日 22時16分]海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳(せいとく)丸」の衝突事故で、石破茂防衛相らが海上保安庁に無断で航海長の聴取をしていた問題で、石破氏は28日の参院外交防衛委員会で、大臣室での再聴取は自身の意向だったことを明かした。捜査妨害とも取られかねない聴取が防衛相自らの意思だったことで、石破氏の責任追及はさらに強まりそうだ。
石破氏は25日の衆院予算委員会で「捜査の厳正性のため、乗員に接触していない」と答弁していたが、28日の参院外防委では「話を聞いていたと言うべきだった」と前言を撤回したが、「隠すつもりはなかった」と虚偽発言は否定した。航海長の聴取については「許可を得ていると思った」「(海上幕僚監部に)呼べという指示は出していない。事前に教えてもらいたかった」と述べた。
しかし、海幕で聴取していることを知り「ならば私も聴くと指示した」と大臣室での再聴取が自らの意向だったことを認めた。防衛省の増田好平事務次官も28日の会見で「(大臣が)自らも状況把握することが必要と判断した」と説明した。
石破氏は「(海幕に)呼べという指示は出していないが、呼ぶこと自体は不適切だと思わない」と述べた。
さらに、航海長だけではなく、別のヘリコプターで神奈川・横須賀基地に移送したけが人についても、海保が電話連絡を受けていないことが分かった。
また、増田氏は27日の会見では大臣室での再聴取内容について「正式な議事録は取っていない。どんな内容だったか覚えていない」と述べていたが、28日の会見では「事務方が記録を取っていた。メモを作成して(19日)夕方には海上保安庁にファクスで送った。(私も)目を通した」と証言を翻した。
無断聴取問題は、事故当日の19日午前10時ごろ、救助活動でけがをした乗組員を横須賀基地へ、前任の当直士官だった航海長を海幕にヘリで移送したが、海保の了解を得ていない疑いが強い。海幕での聴取後、石破氏ら幹部10人が大臣室で再聴取している。【本多健、田所柳子、加藤隆寛】