今日の「しんぶん赤旗」に、海上自衛隊の元護衛艦艦長が登場し、イージス艦の衝突事故について、「本来、1分間あったらかじ取りで回避できる」、「後進はぶつかったという前提のもとにおこなう動作」と証言しています。
これまで、マスコミなどでも、「1分では衝突回避は不可能」というのが暗黙の前提になっていましたが、もしこの元艦長の証言が事実なら、「2分前に確認。1分前に回避行動をとった」という発表が、最初から実際に起こったことと違っていた可能性が出てきます。元艦長が最後に指摘している通り、事実の精査が必要です。
ところで、同事件について、自民党の大前繁雄衆議院議員(兵庫7区)が地元の会合で「漁船側に重大な過失がある」と発言。避けなかった漁船が悪いと言わんばかりのこの態度、「そこのけそこのけ自衛隊が通る」は海の上だけではなさそうです。
「しんぶん赤旗」の記事は、インターネットに流れていないので、直接、打ちこんでおきます。(^_^;)
後進で回避は不自然/イージス艦衝突 元護衛艦長が指摘
1分あれば、かじ取りで避けられる
[しんぶん赤旗 2008年3月10日]「衝突回避のために後進に入れたというのは不自然だ」――。イージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突した事件。防衛省・海上自衛隊の国民軽視に怒った元護衛艦官庁が本紙に重大な指摘を寄せてくれました。
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衝突時の「あたご」の対応はめちゃくちゃだ。自動操舵で運行していたというが、1分もあればかじ取りはできます。イージス艦は他の護衛艦などと比べてずっと船の角度を変えられるのが早いのです。私も(イージス艦の)見学会で説明を受けて実際にさわってみたけれど、かじ取りの機敏さが全然ちがいます。
ところが防衛省の発表では、衝突1分前に自動操舵を解除して後進に入れたという。その前にやることは、かじを切っての回避行動のはずです。法律的にも「あたご」側に回避義務があったわけですから。
わざわざ後進に切り替えたのはなぜか? 百パーセント私の予想があたっていると思うが、(最後まで「清徳丸」に気付かずに)ぶつかったからです。そのために急きょもとの場所にもどらないといけないので後進をかけた。ぶつかったという前提のもとに行う動作です。なぜ、かじ取りをしなかったのか。ぶつかったということが分からなかったからではないでしょうか。
本来、1分間あったらかじ取りで回避することはできる。でも衝突した後では、面かじも取りかじもないでしょう。衝突後の発表でも「かじ取り」の言葉が全然でてこない。恐らく、ぶつかってから自動操舵をやめているからです。運航スケジュール決めた艦長の責任
「時間」が問題なんですよ。運航に関するスケジュールは、艦長の専権事項です。なぜ衝突現場を午前4時ごろ、それも視界の見えにくい時間帯に通ったのか。しかも監視要員の交代直前です。艦長は、なにもかもおかしなセッティングをしている。
艦長が寝ていたとか、寝ていないとかの問題じゃない。横須賀に寄港するために通る東京湾入り口の浦賀水道が難所とはいえ、昼間なら問題ない。一番怖いのは日の出前です。私が艦長なら2時間ぐらいあとにずらしています。
漁船の漁場への通り道という認識をもっていたなら、照明で明るくしていたと思う。これも艦長の専権事項。照明を多くすることは、一定は許可されている。まったく対策がなかったのは、緩みやたるみでしょう。
漁船群のなか、あの時間帯で自動操舵でいくということ自体、めちゃくちゃだ。すべて艦長の問題。当直士官は監視の責任者だが、スケジュールを決めたのは艦長です。
イージス艦は、ものすごく特殊な船です。何でこんな特殊な船を日本に6隻も配備するのかわからない。自動操舵でハワイから日本まで航行するのは楽だったでしょう。ただ、外海と近海では走り方が当然ちがってくる。船の込む領海に入っても自動操舵を続けたのはおかしい。「そこのけ」は事実 他にも事故はある
イージス艦は実際に乗ってみるとわかるが、甲板が一般の護衛艦より10メートルは高い。なぜ高くしているのかは、軍事機密だからいえませんが、目視の場合でも高いほうが監視しやすい。今回は30分前から(漁船を)認識していたはずです。「12分前」という発表には、疑問が残ります。
海自に勤めていてよく分かりました。(自衛艦の)「そこのけそこのけ」という態度は、指摘される通り。どうしてもそうなっちゃう。漁船のほうが小回りがきくし、必死でよける。私は、個人的に漁場を通る時に注意をしていた。そのために独自の情報をもっていました。
海自は護衛艦を150隻保有して、それが全国に配備されている。どこでも同様のことがおこりえます。実際に事故はおきていますが、不問にふしているだけ。あちこちでおきていますよ。ちょっとした事故なら示談金などの形でおさめています。表面に出ていないだけ。かすった程度は、私もありますよ。
海自のOBは、(自衛隊に)不利なことはいわない。私はあまりにも腹がたったので話しました。漁民の人のためにも共産党と「赤旗」で事実を精査してもらいたい。
それにしても、自衛隊元幹部といえば、共産党とはいちばん遠いはず。それが「しんぶん赤旗」に証言をよせるというのは、ちょっとびっくりですが、この元艦長にしてみれば、よほどの覚悟での証言。共産党なら、それをきちんと追及してくれるだろうと信頼をよせてくれたから、かも知れません。
自民党・大前議員の発言は、↓こちらの記事参照のこと。
「漁船側に重大過失」自民・大前議員、地元会合で発言(朝日新聞)
「漁船側に重大過失」自民・大前議員、地元会合で発言
[asahi.com 2008年03月09日19時44分]海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸の衝突事故をめぐり、自民党の大前繁雄衆院議員(兵庫7区)が、神戸市内で8日にあった党兵庫県連の会合で、「漁船側に重大な過失がある」などと発言していたことがわかった。大前議員は「公正な調べによる原因究明を求め、事故の再発防止を訴える趣旨だったが、軽率だった」と話している。
大前議員は県連総務会のあいさつで事故に触れ、「双方に過失があったはずで、公正な立場から原因究明にあたるべきだ」とし、漁船側に「重大な過失があるが、そのことには一言も触れられていない」と述べたという。
さらに再発防止の重要性を訴える中で「ライフジャケットをつけていれば浮いてくるはずで、大規模な捜索活動はいらなかった。(地元漁協関係者が捜索の際に)これみよがしにライフジャケットを身につけていた」とも話したという。
大前議員は朝日新聞の取材に「捜査が終わっていない段階で(清徳丸側に)重大な過失がある、と断定したような印象を与える発言は軽率だった。『これみよがしに』などの表現は行き過ぎだったと思う」と話した。
大前議員は安倍内閣で防衛政務官を務めた。
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