価値論と実際の価格競争について

商品の価値の大きさは、その商品を生産するのに必要な社会的な労働量(=労働時間)によって決まる、という話をすると、たいてい、「では、実際には値引きをしたり、安売りをしたりしていることはどう理解したらよいのか」という疑問が出される。

これについては、次のように答えること。

単純商品生産のもとでは、商品の価値=生産手段の価値+労働過程で新たに追加された価値である。

しかし、資本主義のもとでは、商品の価値W=不変資本C+可変資本V+剰余価値Mとなる。資本家にとっては、C+Vが現実の費用をなし、したがってC+V=費用価格Kとなる。そうなると、商品の価値はWであるが、K<P<Wの範囲にある価格Pで商品が売れれば、資本家は何がしかの利潤P-Kを手に入れることができる。

むしろ、実際の資本主義経済では、個々の資本家は自分の商品が売り切れるかどうかも分からないいる状況の下で、複数の資本家が競争し合っている。その場合、商品の価格を価値どおりのWではなく、それよりも安い価格Pで売ることによって、競争相手の市場を奪い、自分の商品を優位に売り切ることができるとすれば、資本家は、価値W以下であっても、費用価格Kを上回る価格Pで商品を売るだろう。

さらに、「資本の回転」の問題が加わる。商品をWよりも少し値引きして販売することによって、より早く売り切ることができるとすれば、1年間により多く回転できることになり、1回転ごとの利潤率は若干下がっても、年間トータルでの利潤率は高くすることができる。

以上のような理由で、商品は、その価値がWであったとしても、実際にはW>P>Kの範囲内の価格Pで販売されることになりうる。価格は価値から乖離できるし、そこに価格形態の重要な意義がある。

はたして、こんな説明でいいのだろうか?

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