こんどは、ブリュノ・ジュタン『トービン税入門』(社会評論社、2006年、原著2002年)に載っていたグラフ。
低い方のグラフは、「世界貿易の年間総額+対外直接投資の年間総額」。それにたいして、上の方のグラフは、世界の為替取引の年間総額(1日の取引額×250日として計算)です。
1983年には、貿易・国際投資の総額が2兆7580億ドル、為替取引総額は29兆7500億ドル、ということで、約10.7倍。それが、1998年には、貿易・国際投資総額7兆2540億ドルにたいして、為替取引総額372兆5000億ドル、51.4倍にふくれあがっています。2001年にはそれがちょっと縮んでいますが、貿易・国際投資総額8兆7000億ドルにたいして為替取引総額302兆5000億ドル、34.8倍あります。
貿易や海外投資に必要な額の何十倍もの為替取引がやられているわけです。そのかなりの部分が、投機的な取り引きだと考えられますが、実際のところ、どれぐらいの割合が投機的な為替取引なんでしょうか? 著者は、次のように推定しています。
まず、BISの推計によると、「2001年において、為替取引の75.5%が最大1週間までの期間のもの、32%は2日の期間のもの」(38ページ)である、といいます。本当に貿易や海外投資(実需)のためであれば、為替取引は数カ月の期間になるはずだから、これらの相当部分は、実需にもとづかない投機的な為替取引であると考えられる訳です。
そこで、著者は、1回の貿易・投資につき、5回までは為替リスクをヘッジするためのカバー取引を認められるだろうということで、実需取引は為替取引全体の約2%だから、2×5=10%は、実需にもとづく為替取引として認められるということになります。
とすると、最大1週間までの為替取引76%から、10%を引いて、「66%が貿易および国際投資には直接関係せず、純粋に金融的な性質のものである」(45ページ)というのが著者の結論です。約300兆ドルの66%、つまり200兆ドルが投機的な為替取引である、ということになります。
ところで、トービン税というのは、1回の為替取引につき、たとえば0.1%という税をかけるというものです。0.1%という税率は非常にわずかですが、1週間に1度、為替取引をくり返したとすると、年間で50回、5%もの税率になります。だから、トービン税を課することによって、投機的な短期の為替取引を押さえることができる、というものです。国際的な投機マネーを規制する手段として、注目されています。