いや〜、こんな本が読んでみたかったんですよ。(^_^;)
元JR運転士が、電車を運転するというのはどういうことか、運転士が何を考えながら電車を運転しているかを、分かりやすく、しかも詳しく解説しています。途中には、山陽本線西阿知駅から倉敷駅まで、実際にどんなふうに運転しているのか、運転席からの写真付きで、喚呼動作も含めて紹介されています。
それにしても、電車の運転って難しいんですねぇ。モーターで加速する「力行」区間は2分の1から4分の1で、あとの2分の1から4分の3は「惰行」しながら走っているというのも知りませんでした(まあ、駅間の距離が極端に短い東京近郊じゃ、そんなの分かりっこありませんが)。そんなふうに、惰速で走りながら、予定した時間に、決められた停止位置にピタリと止めなきゃいけない(しかも、乗客に衝撃を与えずに)のだから、ちょっとした神業ですね。
本書は、電車やモーター、ブレーキ、軌道、架線、信号などのメカニカルな説明も充実しています。ノッチの説明や、最後にブレーキをちょっと緩めて、ふわりと停車させる技術などなど、読めば、あなたもきっと運転席の後ろに立ちたくなるはずです。(^_^;)
しかし、そういう鉄道マニアを喜ばせるためだけに、この本は書かれた訳では、どうもなさそうです。JR宝塚線での衝突事故のことに触れているのは1カ所だけですが、運転士がダイヤどおりの運転をするためにどれほど神経を使っているかを具体的に明らかにすることで、実は、運転士に必要のないプレッシャーを与えるべきではない、ということを主張されているように読めました。
電車というのは、型式が違えばもちろんですが、お客さんがどれぐらい乗っているか、天気はどうか、いろいろな事情で、加速が速かったり、ブレーキの効き具合が微妙に違ってくるそうです。それらを飲み込んで、最高時には時速100kmで運転しながら、乗客を安全に、ダイヤどおりに運ぶ。本当に大変な仕事だということが、よく分かりました。
全国の運転士のみなさん、本当にご苦労さまです。日々の安全運転、ありがとうございます。これからは、多少遅れたりしたぐらいでは腹を立てないようにします。m(_’_)m
ちなみに、宇田賢吉氏は、こんなホームページをお持ちです。
870000kmの軌跡/鉄路100万キロ走行記/電車の運転
【書誌情報】
著者:宇田賢吉(うだ・けんきち)/書名:電車の運転――運転士が語る鉄道のしくみ/出版社:中央公論新社(中公新書1948)/発行年月:2008年5月/定価:本体840円+税/ISBN978-4-12-101948-6