『蟹工船』をとりあげた『女性セブン』7月10日号(左)と『R25』6月26日号(右)
主要全国紙、週刊誌、テレビを席巻中の小林多喜二『蟹工船』、こんどは『女性セブン』(7月10日号)とリクルート社の無料情報誌『R25』(6月26日号)に登場。
『女性セブン』は、女性週刊誌初登場になります。
『女性セブン』の記事は、「3分で早わかり ブームに乗った『蟹工船』」というもの。『蟹工船』がなぜ売れているのか、20代、30代の女性にインタビューしています。
3分で早わかり ブームに乗った『蟹工船』(『女性セブン』2008年7月10日号)
「読んでみると共感するところが多かった」という派遣で働くAさん。
地元に帰りたくないと意地を張り、東京で派遣社員になりました。給料は毎晩の残業代を入れても手取りで19万円。残業のない月は食事代を節約し、近くのコンビニで掛け持ちバイト。片道70分かけてアパートと派遣先を往復する毎日で、憧れの優雅なOL生活なんてどこにもない…。
後悔ばかりの自分が情けなく、自信をなくしていました。そんなときに、電車の中で隣りに座った人が読んでいたのが漫画の『蟹工船』だったんです。(製紙会社で働く派遣社員のAさん、26歳)
同じ職場で知り合ったほかの派遣会社の人が交通費全額支払ってもらっているのに、自分は片道支給の上、時給も200円安かったと知ったBさんは、こんな感想を語っています。
結局、私は派遣会社に搾取されていた。それに気づいて登録会社を変えようかと考えているときに、新聞で『蟹工船』が話題になっていたので、自分に近いかもと思って読んでみたんです。
読んでみると、あまりにひどい労働環境や労働条件、親方のピンハネに、自分を重ね合わせてしまいました。私のいいたいことを代弁してくれていると感じたので、いま、派遣先の自分の机の上に『蟹工船』を立てて置いてある。だからって何も変わらないけど、ささやかな抵抗です。(派遣でPCの打ち込み作業をしているBさん、29歳)
ちなみに男性の感想も載っていました。
会社にとってぼくたちは誰でもよくて、人数さえ揃っていれば、僕がやめても何も困らない。
でも、そんなぼくたちでも、もし何かあれば、仲間同士で団結して大きな力に向かっていくことができる。『蟹工船』を読んで、そういう明るい気持ちが出てきました。(自動車整備工として就職したが、社内いじめにあって退職したEさん、21歳男性)
などなど。詳しくは、先ほどの写真をクリックしてください。画像がでっかくなるので、なんとか読めると思います。
『R25』は、リクルート社が首都圏で発行する無料情報誌。コンビニや駅の近くに置いてあります。記事は、ネットでも読むことができます。
『蟹工船』を読みつつプロレタリアートを考えてみた(R25 2008年6月26日号)
『蟹工船』を読みつつプロレタリアートを考えてみた(R25.jp)
昭和初期の作家・小林多喜二の小説
『蟹工船』を読みつつプロレタリアートを考えてみた
[R25.jp 2008.06.26]小説『蟹工船』が売れている。これまでは年に5000部程度の売り上げだったのが、今年はすでに35万部以上を増刷し「異例の売り上げ」(新潮社・文庫営業担当・本間隆雅さん)を叩き出しているとか。過酷な労働の様子や、労働者が資本家に虐げられる内容が読者の共感を呼んでいるそうだ。国語や歴史の授業で「プロレタリア文学」の代表として習ったから、なんとなく題名ぐらいは知っているものの、内容についてはよく知らない。いったいどんな小説なんだろう。実際に読んでみた。
「おい、地獄さ行くんだで!」…という強烈な書き出しからはじまる本作。ざっくり内容を説明すると、「過酷な環境の蟹工船(カニを捕まえてその場で缶詰に加工する船)で働く労働者たちが団結し、労働環境改善を求めて立ち上がる」という話。登場人物たちは冒頭の言葉どおり「地獄」のような環境の蟹工船で働かされる。雪が降り、波の高い、危険なオホーツク海で漁夫たちは作業を続ける。漁は過酷を極め、遭難や懲罰(暴行)で死人も出るほどだ。しかし漁の監督は「お前らの命より、川崎(作業用の小船)一艘の方が大事だ」と言う。漁夫たちは十分な栄養も摂れず、逃げ出せない閉鎖環境のなかで、栄養不足から脚気にかかり、次第に追い詰められていく。仕事を怠けようものなら、厳しい罰が与えられ、徹底的に働かされる。その様子が実に悲惨なのだ。働いても働いても、自分たちは決して楽にならず、監督や船長の利益が増えるだけ。79年前の小説ながら、確かに現代のワーキングプアに通じるものがある。
「プロレタリア文学」っていうと難しく感じるけど、作中の人物が言うには、「あなた方、貧乏。だからあなた方、プロレタリアート」ということになるそう。
つまり「プロレタリア文学」とは、言いかえると「貧乏文学」ってことになるのかも。そんな小説が売れちゃうのが今の社会か…。でもなんだかなぁ、やるせない。(堅田智裕/verb)
いえいえ、プロレタリア文学は、貧乏とか困窮を書いただけの「貧乏文学」ではありません。なぜ、こんなに貧しいのか、どうしたらそれを変えることが出来るのか、そんなところまで、文学を通して考えよう、というのがプロレタリア文学です。だから、低賃金・不安定雇用で働く若者たちが、『蟹工船』に励まされた、という感想を寄せてくれるのだと思います。
いつもながら、迅速で正確なご紹介、感謝いたします。ぼくのブログに紹介させていただきました。こんごともよろしくお願いします。