一時期、入試改革の「旗印」のようにもてはやされたAO(アドミッション・オフィス)入試をやめる大学が出始めたそうな。
AO入試が、受験生の学力低下をもたらす危険性は当初から指摘されていたこと。無責任な入試制度をつくって、学生を混乱させた揚げ句、ただやめますでは無責任でしょう。AO入試がなぜ失敗したか、ぜひとも検証してもらいたいものです。
AO入試、廃止の動き 大学生集めに有効だが…(NIKKEI NET)
AO入試、廃止の動き 大学生集めに有効だが…
[NIKKEI NET 2008/07/07 07:00]書類や面接で選抜するAO(アドミッション・オフィス)入試が曲がり角を迎えている。九州大が法学部のAO入試を2010年度に廃止するほか、一橋大なども廃止を決定。入学者の学力不足を主な理由にしているが、他方でAOは学生集めに有効とされ、実施大学は増加の一途だ。AOにも学力試験を義務付けるべきだという議論も出ている。
「基礎学力が足りず授業が分からない学生がいる」。ここ数年、一橋大商学部を悩ませてきたのがAO入学者の学力不足だ。講義についていけず落ち込む学生も出たといい、結局来春からAOを廃止することを決めた。大学入試センター試験を課す「推薦入試」に切り替えるという。
国立大のなかでは比較的速く00年度からAOを実施してきた九大も、法学部のAOを10年度から廃止する。
「AO組の成績が下降傾向にあった。理数系を含むセンター入試が不要なのはAOだけ。いわゆる『私大文系組』が大挙して受けるなど志願者に偏りもあった」。九大アドミッションセンターの武谷峻一教授は明かす。鳥取大や筑波大などでも廃止の動きが広がる。一部の大学ではAO組の学力不足に対応するため専任教員の配置を余儀なくされているという。
文部科学省の大学向けアンケートでは、AOの課題として「基礎学力の確保」を挙げた学部は60%に達する。その半面、学力試験のないAOは学生集めの強力な「武器」で、私大を中心に導入は増加の一途。07年度にAO入試を実施したのは全国で454校で、うち私大は402校、実施率は7割超だ。
通常の推薦入試が11月以降の実施とされているのに対し、AOには制約がない。高3の1学期中に合否を出す大学も一部にあり、文科省は「青田買いの手段として使われるケースもある」と問題視している。
「事実上学力不問となるなど本来の趣旨と異なる運用になっている」。中央教育審議会の部会は3月にまとめた提言でAOを痛烈に批判。「どんな入試でも基礎学力の把握は適切に行われるべきだ」と主張した。
中教審が対策として例示したのが「高大接続テスト(仮称)」だ。センター試験とは別に高校で全国共通学力試験を実施し、AOや推薦の選抜材料にする構想。今後、具体的な制度設計に向けた議論が進む見通しだ。
日本私立大学連盟の教育研究委員長の松本亮三東海大教授は「学力を問わない入試の結果、1年目を高校までの補習にとられ、4年目は就職活動で、大学独自の教育が2年しかないケースすらある」と指摘する。
もともとAOは個性的な能力や入学後の「伸びしろ」に着目する入試方法。大学にとって選抜や教育に一定の手間がかかるのは当然で、単純に学力試験を課せばすむ問題ではないという見方もある。
「全入時代」の大学入試をどう改革するか踏み込んだ議論が必要になってきている。