連休初日の20日、サントリーホールで、都響によるコンサートオペラ「トスカ」を見て(聴いて?)きました。プッチーニ作の「トスカ」は、画家のカヴァラドッシと歌い手のトスカ、それにトスカに横恋慕する警視総監のスカルピアが絡み合い、最後は3人全員が死んでしまうという、なかなかドラマティックなストーリー。
コンサートオペラということで、サントリーホールのステージの後ろ半分と、P席の部分を使って、簡単なオペラ用の舞台がつくられていました。第2幕の前半(カヴァラドッシが捕らえられて、拷問を加えられるところまで)を省きつつ、元テレ朝の朝岡聡のナビゲートで「トスカ」の世界を堪能しました。
とくに聴き応えがあったのは、スカルピア役の直野資。さすがベテランの貫禄で、堂々たるバリトンを響かせていました。それから、トスカの並河寿美も、たっぷりの声量で情熱的なトスカを演じていました。「歌に生き、恋に生き」も聴き応えがありました。
しかし、残念だったのは、この日のメインであるはずのヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ。風邪でも引いたか声が全然出ておらず、第2幕では完全に声が割れてしまっていました。かろうじて、第3幕「星は光ぬ」は歌ったものの、不安定さは否めませんでした。
まあしかし、終わってみれば、やっぱり「トスカ」の濃密な世界に魅了されて、ほぼ満席のお客さんからは、ブラボーの大歓声でした。
ところで、プログラムノーツ(長木誠治・東京大学准教授)によると、プッチーニがオペラに仕上げるときに、原作の長台詞などを整理してしまったため、原作の政治的含蓄はもちろん、トスカの身の上やカヴァラドッシの出自などもすべて切り落とされてしまったそうです。たとえばトスカは、もともと貧乏な羊飼いの娘で、ベネディクト派の修道女に育てられて敬虔な信仰心を持ち、修道院の合唱隊で歌っていたときに才能を見いだされ、還俗して歌手になったそうです。それがわかると、第2幕「歌に生き、恋に生き」で、切々と歌に込めた自らの思いを歌い上げるトスカの気持ちがよく分かりました。m(_’_)m
今年28回目のコンサート
【演奏会情報】 都響スペシャル ラ・スコーラ×都響
トスカ:並河寿美/カヴァラドッシ:ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ/スカルピア:直野資/アンジェロッティ:成田博之/堂守・看守(二役):今尾滋/スポレッタ:柿迫秀/シャルローネ:鐘皓/ナビゲーター:朝岡聡/指揮:マルコ・ボエーミ/合唱:東京オペラシンガーズ/児童合唱:東京少年少女合唱隊/合唱指揮:小林資典/演出:菊池裕美子/助演:秋元萌/舞台監督:堂本純平/照明デザイン:鈴木尚美/衣装デザイン:小野寺佐恵