『小林多喜二名作集「近代日本の貧困」』(祥伝社新書)
祥伝社から新書で『小林多喜二名作集「近代日本の貧困」』が出ました!!
「『蟹工船』だけじゃない…… こっちの多喜二もエキサイティング」という帯で、多喜二の小説・評論10編が収められています。
目次は、以下のとおり。同書には、初出や執筆年など解題的なものがなにもないので、とりあえず初出、掲載年だけ書いておきます。
- 「失業貨車」(『若草』1932年3月号)
- 「残されるもの」(小樽高商文芸研究会『北方文芸』第5号、1927年10月発行)
- 「銀行の話」(『戦旗』1930年4月号)
- 「オルグ」(『改造』1931年5月号)
- 「飴玉闘争」(パンフレット『3・15、4.16公判闘争のために』戦旗社、1931年7月刊)
- 「宗教の『急所』は何処にあるか」(『中外日報』1930年2月2、4、5、6日号)
- 「地区の人々」(『改造』1933年3月号)
- 「小説作法」(内外社版『綜合プロレタリア芸術講座』第2巻「文学篇」掲載、1931年6月刊)
- 「山本巡査」(ノート稿、1927年10月24日初稿、1928年1月19日改稿)
- 「疵」(『帝国大学新聞』第408号、1931年11月23日)
所収の順番も、執筆年とは違っています。
この中では、2.「残されるもの」が一番初期の作品。色街ではたらく女性を主人公にした作品の1つです。ちょうど、多喜二自身、田口タキを助けようとしていたころで、そうした境遇ではたらく女性たちを主人公にした作品がいろいろあります。他方、多喜二は、前年、高畠素之『マルクス十二講』を読み、27年には小樽港湾争議の支援をしたり、社会科学研究会に参加して、科学的社会主義の学習を始めるなど、科学的社会主義の学習と実践に足を踏み出したころでもあります。
9.「山本巡査」も同じ頃の作品ですが、これは前衛芸術家同盟の機関誌『前衛』編集部に送られたものの、未掲載。多喜二の創作ノートから、戦後初めて発表されたものです。
その他は、1930年?33年の作品。「地区の人々」は、多喜二の絶筆となった作品です。
ということで、すでに読んだことのある作品もありますが、『小林多喜二全集』を全部読み返そうという私の計画も途中で頓挫しているので、あらためてゆっくり読んでみたいと思います。
巻末に、渡辺貞夫・白樺文学館副館長の「特別寄稿 小林多喜二と白樺文学館」と、佐藤三郎・白樺文学館多喜二ライブラリー学芸員「いま、小林多喜二をどう読むか」を収録。
【書誌情報】
著者:小林多喜二/書名:小林多喜二名作集「近代日本の貧困」/出版社:祥伝社(祥伝社新書122)/発行年:2008年8月/定価:本体780円+税/ISBN978-4-396-11122-9