厚労省、日雇い派遣原則禁止の方針

厚生労働省の研究会が、日雇い派遣および30日以内の短期派遣を原則禁止する報告書をまとめました。NHKニュースが指摘するように、この分野では規制緩和ばかり続いていたのが、初めて規制強化に転ずることになります。

しかし、日雇い派遣や短期派遣を原則禁止するだけでは、「例外」と称してグレーゾーンが広がる危険性があります。1999年の派遣業種の「原則自由化」を見直して、派遣事業は専門職種に限定すべきだと思います。

他方、7月中旬時点で、グッドウィルの登録スタッフ6100人のうち半数近くがまだ新しい職場が決まっていないそうです。日雇い派遣禁止の議論とともに、いま日雇い派遣でしか働くことのできない人たちが仕事がなくて暮らせないということにならないように、しっかりした対策が必要です。

「30日以内の短期派遣も原則禁止に」(TBS News-i)
“日雇い派遣原則禁止”提言(NHKニュース)
派遣労働規制、期間1カ月以内を原則禁止 厚労省方針(NIKKEI NET)
グッドウィル月末廃業、派遣3000人が次の職場決まらず(読売新聞)

30日以内の短期派遣も原則禁止に
[TBS News-i 最終更新:2008年7月28日(月) 18時51分]

 派遣会社に登録し、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ登録型派遣について、厚生労働省は1日単位の日雇い派遣だけではなく、30日以内の短期派遣も原則禁止とする方針を決めました。
 日雇い派遣について、政府与党は原則禁止とする方針を打ち出していますが、派遣労働のあり方を検討している厚生労働省の研究会は、労働者保護の強化のため、1日単位の「日雇い派遣」だけではなく、30日以内の短期派遣も原則禁止とするよう求める報告書をまとめました。
 厚労省は、この報告書を受け、例外となる業務を決めたうえで、30日以内の短期派遣を原則禁止とする労働者派遣法の改正案を秋の臨時国会に提出する方針です。
 また、報告書では、同じグループ企業内だけで行われる派遣についても規制が必要だと指摘。グループ企業への派遣割合を8割以下に制限するよう求めています。(28日17:31)

“日雇い派遣原則禁止”提言
[NHKニュース 7月28日 18時30分]

 労働者派遣法の見直しについて検討してきた厚生労働省の研究会は、契約期間のきわめて短いいわゆる「日雇い派遣」を原則禁止すべきだとする提言をまとめました。規制緩和が続いてきた派遣労働は、初めて規制の強化にかじが切られることになりました。
 「日雇い派遣」は、30日以内のきわめて短い期間の契約を繰り返しながら労働者を派遣するもので、雇用が不安定で賃金も低いなど問題が多いことから、有識者でつくる厚生労働省の研究会が労働者派遣法の見直しを検討してきました。28日まとまった報告書では、「日雇い派遣」は安全対策や法令順守など労働者の保護の面で雇用責任があいまいになりやすいと指摘しています。そのうえで、作業の危険度が高い業務や雇用責任が負えない業務は、専門的な業種を除き、原則派遣を禁止すべきだと提言しています。また、労働者が派遣会社を選ぶ際に参考になるよう、派遣先から受け取る料金や労働者に支払う賃金、それに得られた利益などについて、法律で公開を義務づけるべきだとしています。厚生労働省は、次の臨時国会に労働者派遣法の改正案を提出する方針で、労使が参加する審議会で具体的な協議を進めることにしています。
 「日雇い派遣」は規制緩和に伴って急速に広がり、ワーキングプアを生んだ原因の1つとも指摘されてきましたが、初めて規制の強化にかじが切られることになります。

派遣労働規制、期間1カ月以内を原則禁止 厚労省方針
[NIKKEI NET 2008年7月27日 10:23]

 厚生労働省は派遣されている間だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」のうち、契約期間が1カ月以内の派遣を原則禁止する方針を固めた。日雇い派遣の禁止を検討していたが、労働者の雇用をより安定させる狙いから規制の対象とする期間を拡大する。
 厚労省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が28日に最終会合を開き、こうした内容を盛った報告書をまとめる。それを受け厚労省は7月末に労使の代表による労働政策審議会(厚労相の諮問機関)を再開。日雇い派遣を認める業種などを詰め、秋の臨時国会に労働者派遣法改正案を提出する。

グッドウィル月末廃業、派遣3000人が次の職場決まらず
[2008年7月28日14時42分 読売新聞]

 今月末で廃業する日雇い派遣大手「グッドウィル」の登録スタッフ約6100人の半数近くは今月中旬時点でまだ次の職場が決まっていない。
 日雇い派遣の原則禁止など派遣のあり方の見直し論議が進む中で、もともと給与水準が低く、雇用保険もない派遣労働者の置かれている厳しい現実を浮かび上がらせている。
 「雇用保険もなく、残業代も出ない現場が多かった。日雇い派遣はもうこりごり」。グッドウィルに登録していた福島県の男性(27)はため息をつく。
 日雇い派遣に登録したのは昨年2月。高校中退後、ラーメン店などでアルバイトをしていたが、友人に「すぐ仕事が見つかる」と勧められた。県内の家電量販店などで働き、給料は1日7000?8000円。それでも毎日仕事があったため、生活はできたという。
 しかし今年1月、グッドウィルが厚生労働省から事業停止命令を受けると、状況は一変。登録先の支店が事業を再開するまでの約3か月間、全く仕事がなかった。新たな派遣先からは短期間で契約が打ち切られ、6月3日に職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)ほう助などの疑いで幹部ら3人が警視庁に逮捕されると、仕事はなくなった。
 同月末からは失業状態で、車のガソリン代が惜しくて家にこもる生活。「秋に自宅の近くに家電量販店がオープンするらしい。そこで働ければ」と語った。
 中には、月収が倍増した登録スタッフもいる。
 事業停止命令がほぼ避けられなくなった昨年末、都内の男性(32)は派遣先から「直接雇用(のアルバイト)に切り替えよう」と持ちかけられた。
 職場は埼玉県内の工場。中古のコンピューターのメモリーを消去したり、分解して部品ごとに販売したり。月収は派遣時代の15万?18万円から約35万円に増え、「貯金ができるようになったのはうれしいが、今までこんなにマージンを取られていたと思うと腹が立つ」と話す。
 「職場には、今も別の派遣会社から来た人がいるが、同じ仕事なのに給料は全く違う。『派遣』という働き方に疑問を感じるようになった」と複雑な心境を明かす。(増田真郷、本田克樹)

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