読売新聞が、日本人の「勤労観」について世論調査を実施。
これまでの同様の調査と一番の違いは、「日本人の勤勉さがこれからも続くと思うか?」の質問。これまでは、50%以上が「続くと思う」と回答していたが、今回はわずか35.2%。逆に、「そうは思わない」は、これまで33.4%から40.8%へと増えてはいたものの、61.0%と初めて50%を超えた。
しかし、これは「勤労観」の問題だろうか? 非正社員が3分の1を超えるようになって、働いても働いても報われることが少なくなる一方、株などで大金を手にする人間が現れるようになったのでは、誰だって、「勤勉さが続く」とは思わなくなるだろう。そういう社会の変化の反映と見るべきだろう。
日本人「勤勉続くと思わない」61%…読売調査(読売新聞)
「年間連続調査・日本人 (8)勤労観」 2008年7月調査(面接方式)(読売新聞)
もう1つ特徴的だと思ったのは、終身雇用制を「望ましい」と思う人が77%で、「望ましくない」の20%を大きく上回ったこと。過去の調査でも、ほぼ同じ景行なのだが、終身雇用制がいよいよ本格的に壊され始めた1990年の71%を最低に、それ以降「望ましい」の回答が増えていることは注目される。
他方で、終身雇用制の対極にあると思われる「成果主義」について、「好ましい」65%(「好ましい」「どちらかといえば好ましい」の合計)で、「好ましくない」30%を大きく上回っている。「成果主義」が働く意欲の向上につながっていると思うかの質問でも、「そう思う」65%、「そうは思わない」27%とほぼ答えは対応している。
終身雇用制についての質問でも、実は、若い世代ほど、「望ましい」とする答えが減り、「望ましくない」という回答が増える。これは、終身雇用制に不満を持っているというよりも、若いころの賃金の安さに不満を持っているということだろう。「成果主義」にたいする「期待」の大きさでも、若い世代のほうが高い。つまり、「成果主義」になったらもっと高い給料がもらえるようになるのではないか、という期待が大きいということだ。
このあたりも、若者の賃金実態に即した分析が必要だと思う。
日本人「勤勉続くと思わない」61%…読売調査
[2008年7月30日18時40分 読売新聞]日本の発展を支えてきた「日本人の勤勉さ」について、これからも続くと思う人は35%にとどまり、そうは思わない人が61%に上ることが、読売新聞社の年間連続調査でわかった。
1984年の調査では、続くと思う人が59%、思わない人が33%だったが、この四半世紀で楽観論と悲観論の比率がほぼ逆転したことになる。
今回の調査は「勤労観」をテーマとして12、13日に面接方式で行った。
日本人の勤勉さについては84?91年に5回調査し、続くと思う人が常に多数派だった。続くと思わない人の方が多くなったのは今回が初めてで、特に20歳代では66%に達した。
ただ、今回調査で「一生懸命に働くことは美徳だ」という考え方への賛否を聞いたところ、「そう思う」が71%を占め、「そうは思わない」の25%を大きく上回った。
定年まで同じ企業に勤めることができる「終身雇用制」を望ましいとする人は77%で、過去最高の88年と並んだ。年齢や勤続年数よりも、個人の能力や業績を重視し、賃金などに反映する「成果主義」については、「好ましい」の65%が、「好ましくない」の30%より多かった。
派遣社員やパートなど非正社員が、雇用者の3分の1を占める現状については、「働く人の立場が不安定になった」という印象を持つ人が82%、「多様な働き方ができるようになった」が15%となった。
「年間連続調査・日本人 (8)勤労観」 2008年7月調査(面接方式)
[読売新聞 2008年7月31日付]▽調査日:2008年7月12-13日
対象者:全国有権者3000人(250地点、層化二段無作為抽出法)
方法:個別訪問面接聴取法、回収:1828人(60.9%)*Q 働く目的や理由について、あなたは、どんな考え方をお持ちですか。回答リストの中から、あなたの気持ちに近いものを、2つまであげて下さい。
答え 1.人間の務めだから 25.0
2.生活を支えるため 68.7
3.より豊かな生活を送るため 38.2
4.出世のため 0.5
5.生きがいだから 12.9
6.自分の能力を発揮するため 13.7
7.企業の発展につくすため 1.9
8.社会に貢献したいから 18.7
9.その他 0.3
0.DK.NA 0.5Q 「一生懸命に働くことは美徳だ」という考え方がありますが、あなたは、そう思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 71.4
2.そうは思わない 25.0
3.DK.NA 3.6Q あなたは、収入と労働時間について、
(A)「収入が若干減っても、労働時間が短くなる方が望ましい」と思いますか、
それとも、
(B)「労働時間が若干長くなっても、収入が増える方が望ましい」と思いますか。答え 1.(A)の方が望ましい 37.1
2.(B)の方が望ましい 55.1
3.DK.NA 7.8Q 一般に、日本人は勤勉だと言われます。あなたは、日本人の勤勉さがこれからも続くと思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.続くと思う 35.2
2.そうは思わない 61.0
3.DK.NA 3.8Q 就職したら、定年まで同じ企業に勤めることができる、いわゆる「終身雇用制」について、あなたは、望ましいことだと思いますか、望ましくないことだと思いますか。
答え 1.非常に望ましい 31.8
2.多少は望ましい 45.0
3.あまり望ましくない 15.6
4.全く望ましくない 4.2
5.DK.NA 3.3Q あなたは、自分の能力や適性が発揮できたり、収入が増えるならば、転職したいと思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.転職したい 60.0
2.そうは思わない 32.1
3.DK.NA 7.9Q 年齢や勤続年数よりも、個人の能力や業績を重視して、賃金や地位に大きな差がつく、いわゆる「成果主義」を取り入れる企業が増えています。あなたは、こうした動きを、好ましいと思いますか、好ましくないと思いますか。
答え 1.好ましい 29.4
2.どちらかといえば好ましい 35.4
3.どちらかといえば好ましくない 20.6
4.好ましくない 9.1
5.DK.NA 5.4Q あなたは、「成果主義」の導入は、働く人の意欲の向上につながっていると思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 65.4
2.そうは思わない 26.9
3.DK.NA 7.8Q 派遣社員や契約社員、パート、アルバイトなど、非正社員として働く人が、働く人全体の3分の1に達しています。あなたは、このことについて、
(A)「多様な働き方ができるようになった」という印象が強いですか、それとも、
(B)「働く人の立場が不安定になった」という印象が強いですか。答え 1.(A)の印象が強い 15.2
2.(B)の印象が強い 81.5
3.DK.NA 3.3Q 「決まった職に就かず、多少収入は不安定でも、好きな仕事を好きなときだけやる」という職業観を持った人が増えています。あなたは、こういう生き方に、共感できますか、共感できませんか。
答え 1.大いに共感できる 4.4
2.多少は共感できる 18.1
3.あまり共感できない 36.8
4.全く共感できない 38.9
5.DK.NA 1.8Q あなたの今のお仕事は、回答リストの分類では、どれにあてはまりますか。1つだけあげて下さい。
答え 1.自営業者(農林水産業、商工・サービス業、自由業) 14.8
2.国家公務員、地方公務員 4.0
3.会社や事業所などの正社員 27.3
4.派遣社員、契約社員、臨時職員、パート、アルバイトなど非正社員 13.1
5.専業主婦 21.1
6.学生 1.6
7.無職(求職中) 1.3
8.無職(現役引退、隠居、年金生活など) 16.6
9.その他 0.1
0.DK.NA 0.2