13日に内閣府が発表したGDP速報値が、実質で前期比マイナス0.6%、年率換算でマイナス2.4%と落ち込んでいて、大きな衝撃を呼んでいる。
これまで日本の景気は“外需頼み”と言われてきたが、その外需がマイナス2.3%(実質)と大きくへこんだうえに、ようやく回復しかけていた家計消費もマイナス0.7%(帰属家賃を除く実質家計最終消費支出)と落ち込み、日本経済は八方ふさがりの状態になってしまった。“外需頼み”経済の脆さが露わになった形だ。
見逃せないのは、GDPデフレーターが前年同期比1.6%と再び下落幅を拡大していること。ふたたびデフレが忍び寄りつつあるのかも知れない。
4-6月実質GDP、年率マイナス2.4% 1年ぶり減(NIKKEI NET)
4-6月実質GDP、年率マイナス2.4% 1年ぶり減
[日経新聞 2008年8月14日付夕刊]内閣府が13日発表した4―6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算で2.4%減となり1年(4四半期)ぶりのマイナス成長に転じた。資源・食料価格の高騰や米経済の減速が響いた。個人消費を中心に内需が落ち込み、輸出の減少で外需も振るわなかった。日本経済は景気後退局面に入った公算が大きく、当面は厳しい状態が続きそうだ。
日経グループのQUICKが民間調査機関に聞いた「コンセンサス・マクロ」(経済予測)によると、実質成長率の平均予測は年率でマイナス2.3%。実績は事前の予測とほぼ同じだった。景気後退局面にあった2001年7―9月期(マイナス1.1%)以来の大幅なマイナス成長となった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.7%減、年率換算で2.7%減。名目が実質を下回る「名実逆転」は6・四半期連続となった。実質成長率への貢献を示す寄与度は内需がマイナス0.6ポイント、輸出から輸入を差し引いた外需が0.0ぽいと。
実質GDPを項目別に見ると、全体の5割強を占める個人消費は前期比0.5%減で、7・四半期ぶりの減少に転じた。外食やチョコレートなどの菓子類が落ち込んだ。値上がりしたガソリンや食品の購入を減らす消費者の節約が目立った。
設備投資は0.2%減少した。原油高が企業収益を圧迫し、投資の抑制につながったとみられ、2・四半期連続の減少となった。住宅投資は3.4%減。昨夏の建築確認手続きの見直しに伴う建設現場の混乱は収まってきたものの、市場環境が悪くなってきている。
輸出は2.3%減で、13・四半期ぶりの減少となった。欧州向けなどが落ち込んだ。輸入は2.8%減。原油や天然ガスが減った。
過去の数値も見直した結果、 1-3月期の実質成長率は年率3.2%となり、6月の改定値を0.8ポイント下回った。うるう年で例年より1日多かった1-3月期は、個人消費が特殊要因で水増しされたとの見方が多く、4-6月期はその反動が出た可能性もある。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比1.6%下落した。下落幅は4・四半期連続で拡大した。
「解説」では、次のように指摘している。
【解説】「景気後退局面」裏付け けん引役不在
[日経新聞 2008年8月14日付夕刊]4-6月期の実質GDP成長率が1年ぶりのマイナスに転じ、政府が事実上認めた「景気後退局面入り」との判断を裏付ける結果となった。世界的な資源高・食料高や米国の景気低迷が実体経済全体に打撃を与え、内需と外需がいずれも低迷している。7-9月期以降の日本経済を引っ張るけん引役は見当たらず、政府は苦しい経済運営査迫られそうだ。
マイナス成長の要因は内需と外需の両面にある。実質成長率への寄与度を見ると、内需では個人消費(マイナス0.3ポイント)や住宅投資(マイナス0.1ポイント)が足を引っ張った。外需では輸出(マイナス0.4ポイント)が全体を押し下げている。
心配なのは横ばい圏内を維持してきた個人消費の落ち込みだ。うるう年の反動で減った面もあるが、食料品などの支出を抑える動きが拡大した。実質の雇用者報酬が前期比0.5%減と、2・四半期ぶりに減少したのも見逃せない。設備投資や住宅投資もさえない。
輸出は新興国の旺盛な需要に支えられて息長く拡大してきたが、欧米向けなどの不振で13四半期ぶりに減少した。内需も外需も弱さが鮮明となり、日本経済はけん引役を失いつつある。
2002年2月からの景気回復局面では輸出主導の経済成長を続け、内需が盛り上がりを欠いただけに、日本経済の再浮上も外需に頼らざるを得ない。頼みの米国は減税効果もあって、4-6月期の実質成長率(前期比年率1.9%)がプラスを維持したが、本格回復は年明けにずれ込むとの見方が多い。
「東京」「毎日」も次のように指摘している。
「3本柱」総崩れ 後退脱出は外部要員頼み
[東京新聞 2008年8月14日付夕刊]今年4-6月期の国内総生産(GDP)が4期ぶりにマイナス成長になったのは、輸出と個人消費、設備投資の「3本柱」が総崩れしたためだ。景気後退局面を脱するためのカギは、米経済の持ち直し、原油価格動向という「外部要因」が握っており、内需拡大による自律的な回復は期待しにくい。
(中略)
消費も、日常生活品の買い控え傾向が鮮明になった。所得環境の厳しさが増す中、原材料高騰の価格転嫁がさらに進めば、消費マインドが一層冷え込むことは避けられない。
(中略)
国内は「けん引役不在」の状況で、財政再建を進めている段階では財政的下支えにも限界がある。今度こそ国内需要の喚起につながる中長期的な構造転換が求められる。(経済部・東条仁史)
個人消費、輸出総崩れ 回復見通し原油価格、米経済次第
[毎日新聞 2008年8月14日付夕刊]4?6月期の実質国内総生産(GDP)が大幅なマイナス成長となったのは、日本の景気後退局面入りを印象づけた。今後の焦点はいつ回復軌道に戻れるかだが、政府や市場が期待する「短く浅い後退」になるかどうかは、原油価格や米国経済の動向次第。外需に依存してきた日本経済が、短期問で自立的に回復するとは期待しにくく、景気の先行きは予断を許さない情勢だ。
「踊り場」で踏みとどまっていた日本の景気を後退局面入りさせた引き金は、原油・食糧価格の歴史的な高騰と、米国を基点とした世界経済の減速だ。景気のエンジン役である企業は、米国での製品の売れ行き不振と原材料コストの上昇に圧迫され、収益悪化が鮮明になった。労働者が受け取る賃金を示すコ雇用者報酬」は、実質、名目ともに前期比で大幅減少し、個人消費のマイナスをもたらした。
市場では、バブル崩壌後の不況と異なり、今回は企業が「雇用」「設備」「債務」の過剰を抱えていないことを理由に「深刻な不況にはならない」との見方が大勢だ。ただ、労働市場では非正規雇用がかつてないほど増加し、賃上げ抑制が続くため、個人消費低迷の根は深い。また、原油価格(WTI)は1バーレル=100ドル超で高止まりしている。低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した金融不安と、住宅バブル崩壊などの景気悪化、インフレ懸念の「三重苦」に見舞われている米経済の持ち直し時期も見通しがつかない。外部環境の好転なしに本格回復は見込めないだけに、日本の景気後退が予想以上に長引く可能性がある。【尾村洋介】
“外需頼み”というのは、日本経済の宿命ではない。輸出大企業の利益中心という、長年にわたる自民党政治の結果である。そこのところを転換してゆかないかぎり、日本経済が“外需頼み”という弱さを克服して、健全に回復することはできない。日本経済のマクロ的な転換ができるかどうかが問われている。
内閣府発表の資料はこちら↓から。(PDFファイルが開きます)
2008年4?6月期四半期別GDP速報(1次速報値)