公立病院がなくなる…

公立(あるいは公的)病院が廃止されるというニュースが2つ続いた。1つは、千葉県銚子市の市立総合病院で、22日の市議会で廃止条例が可決(13対12)された。もう1つは、東京都八王子市にある南多摩病院で、運営主体の都国民健康保険団体連合会 ((国民健康保険は、市町村が主体になって運営されているが、その事務を共同でおこなうために都道府県単位につくられたのが国民健康保険団体連合会。国民健康保険の診療報酬の審査と支払い、それに介護保険の介護給付費の審査と支払いなどの仕事をおこなっている。))が撤退を決定した。

千葉・銚子、市立病院廃止へ(TBS News-i)
南多摩病院から撤退 法人公募、病院は存続(東京新聞)

公立病院は、地域医療の中核として大きな責任を果たしてきたし、救急医療などの受け入れでも重要な役割を果たしている。民間の経営主体に代わって、同じような責任が果たせるのか、はなはだ疑問。医師不足も深刻だが、公立病院がなくなってしまうのはもっと深刻な事態だろう。これまで地方の問題だと言われていたが、都市部でも、同じような事態が起こっているということだ。

医療保険の国民負担は重くなっているにもかかわらず、病院も経営が成り立たないようなところへ追い込まれようとしている。いまの医療保険制度はどこか根本的に間違っているような気がする。

千葉・銚子、市立病院廃止へ
[TBS News-i 最終更新:2008年8月22日(金) 19時29分]

 千葉県銚子市が市立の総合病院を廃止するとしていた問題で、銚子市議会は22日条例案を可決し、公立病院が廃院となることが決定的となりました。
 銚子市は医師不足などで経営難に陥っている市立総合病院について、財政支援が続けられないとして、9月いっぱいで休止する方針を示していたもので、市議会は臨時会で議論していました。
 そして、22日行われた無記名による裁決の結果、13対12の賛成多数で条例案は可決されました。
 これにより、医師や看護師などおよそ200人の病院職員の整理解雇の手続きがとられることになり、公立病院としては廃院となることが決定的となりました。
 銚子市の岡野俊昭市長は今後、民営で病院を運営していく考えを明らかにしました。(22日18:11)

南多摩病院から撤退 法人公募、病院は存続
[東京新聞 2008年8月21日]

 南多摩病院=八王子市散田町3、病床数170=を運営する都国民健康保険団体連合会が、本年度いっぱいで同病院の運営から撤退する方針を固め、運営を引き継ぐ法人の公募を20日、始めた。同連合会は「病院自体は存続させるので、利用者はこれまでどおりの医療を受けられる」と強調している。(布施谷航)

 同病院は、戦後間もなく、医療機関が八王子地域に不足していた1954年に開院した経緯がある。連合会は撤退方針について「現在では地域に病院が増えたため、病院不足を補完する役割は終わった。経営難のため手放すのではない」と強調する。しかし、同病院は2001年から病床数を減らすなど、赤字体質から抜け出すための3カ年の経営改善計画を実施しており、本年度も07年度から始まった3次計画の途中だった。
 連合会が公開した病院承継の公募要領によると、応募資格は八王子市内に病院を持つ同市の医療法人か財団法人。また▽病床数170床を維持すること▽原則として10年間は病院運営を継続すること▽引き続き在院を希望する入院患者を引き継ぐこと――などが条件に挙げられている。
 公募の受け付けは今月25日から9月12日まで。承継先は9月下旬に決定する予定。承継先が決まらなければ来年3月まで公募を繰り返し、それでも決まらない場合は、当面は連合会が病院運営を継続するという。
 同病院には、外科や内科、神経内科など13科と人工透析センターがある。病院の承継先が決まると、一般の外来を受け付ける八王子市内の公的病院は都立八王子小児病院だけとなる。

なお、上の記事では、八王子に残る一般外来受付の公的病院は都立八王子小児病院だけになると書かれているが、石原知事は、その都立八王子小児病院を2009年度末、つまり2010年3月には清瀬小児病院、梅ケ丘病院とともに府中病院の隣接地に移転・統合すると言っている。反対世論が大きくて、2007年度末とされていた移転時期が延期された経過もあって、最終的にどうなるかまだ決まったとは言えないが、都の計画としては確定している。

もちろん、南多摩病院、都立八王子小児病院がなくなっても、八王子市内には、東海大医学部付属病院や東京医科大八王子医療センターなどもあって、総合病院がなくなるわけではない。しかし、銚子市の場合は、総合病院といえるのは市立総合病院と民間の島田総合病院の2つしかない。

銚子市の方針書↓をみると、診療報酬の改悪が影響を与えたことはもちろんだが、同時に、医師不足が原因で、一部診療科の休止、入院の受け入れ停止などをせざるをえない状態に追い込まれ、それが患者減少となって、赤字が拡大した、というのが大きいようだ。

市民の皆さまへ 銚子市立総合病院を休止します(銚子市行政改革推進室)←PDFファイルが開きます。

【追記】
24日付の「しんぶん赤旗」首都圏版によれば、「公設公営での存続」を繰り返してきた市長が突然方針転換をして、休止を決めてしまったようです。

市立総合病院休止議案を可決 千葉・銚子市議会 市民世論を無視
[しんぶん赤旗 2008年8月24日付首都圏版]

 千葉県の銚子市議会八月臨時会は22日、市側が提案した市立総合病院の診療業務休止(9月末)に伴う条例制定案と病院事業会計補正予算案を、賛成13、反対12の1票差で可決しました。本会議に先立つ20日開催の教育民生委員会は、両議案を賛成少数で否決していました。
 22日の本会議では、委員会の審議結果について委員長報告、その後、委員長報告に対する質疑、討論、採決が行われ、無記名投票で採決されました。
 傍聴席はいっぱいになり、病院存続の立場から関連議案に反対する議員の発言に拍手が起きました。1票差の採決を受けて議長が「原案通りの可決」が宣言すると傍聴席からは怒号が飛び交い、議場は騒然となりました。
 日本共産党市議団は病院休止関連議案に反対。市立総合病院の経営危機の打開については、公設公営で救急医療のできる病院として存続させるよう要求しました。病院休止関連議案を提出した岡野俊昭市長に対しては、これまで公設公営での存続を繰り返し主張しながら突然方針転換を発表した拙速さを批判し、休止撤回を求める署名が4万6,000人にも達している市民世論を無視する姿勢はきわめて問題であると指摘しました。

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