最近の雇用動向について

「日経新聞」21日付に、最近の派遣やパート、アルバイトの雇用動向についての記事が載っていた。

「非正社員雇用 頭打ち鮮明」という見出しだが、詳しく見ると、臨時雇用(日雇いを除く1年以内の有期雇用)は、前年同月比で6か月連続で減少といっても、6月にはほぼ前年と同水準になっている。その一方で、人材派遣の実稼働者数も減っている。だから、派遣から有期雇用への切り替えが進んでいることを反映している可能性もあるのだが、記事自体は、全体として、日雇い派遣禁止の動きに対して、そんなことをしたら「雇用全体のパイ縮小を招く」といって、牽制する色合いが濃いものになっている。

非正社員雇用 頭打ち鮮明

[日本経済新聞 2008年8月21日付朝刊]

 拡大が続いてきた派遣人材やパート、アルバイトなど非正社員の雇用に頭打ち感が強まってきた。パートの有効求人倍率が6年ぶりの水準に低下、人材派遣の実稼働者数の伸びも急速に鈍化している。景気停滞で業績悪化懸念が強まる中、企業は中長期的な人材確保のための正社員採用には積極的な姿勢を維持しているものの、当面のコストを抑えるため非正社員については絞り込む傾向を強めているようだ。

「日経新聞」2008年8月21日付

パート 求人倍率が急低下

 6月の完全失業率が4.1%(季節調整値)と2006年9月以来の高水準になるなど、じわじわと悪化し始めた国内雇
用情勢。その詳細をみると企業が短期契約の働き手を中心に雇用を絞り込んでいることがわかる。
 総務省の労働力調査で雇用者数の内訳をみると、正社員などの「常用雇用」が6月まで3年4カ月連続で前年同月実績を上回る一方、日雇いを除く1年以内の有期雇用を示す「臨時雇用」は今年に入って6カ月連続でマイナスになった。
 原材料の高騰や米国経済の低迷など、経営環境が急速に悪化したことに対応。例えば、トヨタ自動車が今年の世界生産計画を下方修正したことを受け、デンソーやアイシン精機などのグループの部品メーカーが製造現場で働く派遣社員や期間従業員の数を減らし始めた。
 昨年10月まで1.4倍台を維持していたパートの有効求人倍率は今年6月に1.25倍(季節調整値)にまで低下。依然、
求職者を上回る求人があるものの倍率は約6年ぶりの底さになった。

人材派遣 稼働者伸び率鈍化

 固定費の増加を避けたい企業の需要拡大で急成長を続けてきた人材派遣業界は転機を迎えている。日本人材派遣協会が107社を対象に集計している人材派遣の平均実稼働者数は今年4-6月で前年同期比1%増と、比較可能な2003年以降で最も低い伸び。特にこれまで雇用の過熱感が目立っていた中部地域では4月以降、3カ月連続でマイナスとなった。
 業界大手のパソナグループの稼働者数(1カ月以上の契約)は08年3-5月期まで2・四半期連続で前年同期実績を割
り込んだ。金融や製造業などで事務系の派遣人員を抑える動きが広がっており、「資料整理など派遣が担(.ていた仕事を正社員がするようになった」(パソナ)。自動車、電機などの大口取引先で「千人以上の契約更新を打ち切る例も出ている」(人材派遣大手)という。

アルバイト 時給や求人落ち込み

 人手不足を反映して上昇が続いてきたアルバイトの時給も頭打ち傾向が目立ってきた。人材総合サービス大手のインテリジェンスが同社の求人情報サイト「an」に掲載された求人広告から集計した6月の全国平均時給は前年同月を19円(2%)下回る968円。3カ月連続でのマイナスとなった。
 「フロム・工ー」などを発行するリクルートが集計する3大都市圏の平均時給は6月に952円と前年同月を10円(1%)上回ったが、昨年12月の958円をピークに伸び悩んでいる。マンション需要の低迷で同分野の電話営業要員の時給低下が目立っており、求人広告の出稿件数も「昨年9月ごろをピークにその後2-3割落ち込んでいる」(リクルート)という。
 人手不足が続いてきた外食業界でも居酒屋チェーン大手、チムニーがパートやアルバイトの時給水準を昨年末の850-1,500円から、今年7月には850-1,200円に下げるなど、変化の兆しが出ている。

企業、規制強化も重し 新卒採用は増勢保つ

 企業は中長期をにらんだ人材確保のため、新卒の正社員採用については今のところ増勢を保っている。一方、契約社員やパートなどの非正社員雇用については改正パートタイム労働法の施行や日雇い派遣の原則禁止といった規制強化の動きも今後の重しとなる。規制を強め過ぎれば、長い目で見た雇用全体のパイ縮小を招きかねないと懸念する声もある。
 日本経済新聞社が四月時点で集計した主要企業の2009年春の新卒採用計画は前年比6.3%増。「団塊の世代」の大量退職が始まり、長期的にも少子化の影響で人手不足が続くことが予想されることから、企業は新卒の正社員採用には積極的な姿勢を維持している。
 その一方、非正社員雇用については今後も伸び悩む可能性が強い。経済環境の悪化という短期的な要因に加え、4月にパートの待遇改善をめざす改正パートタイム労働法が施行。今秋の臨時国会でも日雇い派遣の原則禁止など労働者派遣法が強化される見通しとなった。こうした規制強化の動きを背景に企業の慎重姿勢は一段と強まりかねない。
 06年から本格的に始まった製造業派遣も来年から順次、3年間の雇用期限を迎えるため、これを正社員や期間契約の社員に置き換える動きも広がる見通しだ。
 国内全体の雇用者数に占めるパートなどの「非正規雇用」の比率は1990年代からほぼ一貫して上昇。07年には33.5%にまで高まったが、今後はこれが頭打ちになるとの見方も出てきた。
 パートなど非正社員の正社員化が進めば個々の働き手の待遇は改善するものの、パートや派遣社員をすべて正社員に切り替えるのは難しい。労働法制に詳しい安西愈弁護士は「柔軟な雇用環境を確保しないと全体のパイが縮むことも否定できない」と指摘している。

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  1. ピンバック: マーケティング男

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