英Independent紙 『蟹工船』ブームを取り上げる

時事通信によれば、イギリスの新聞「インディペンデント」22日付が、日本の『蟹工船』ブームを取り上げました。

「蟹工船」ブームを紹介=失われた労働者保護に不満?英紙(時事通信)

そこでまたまた記事を探してみました。といっても非常に簡単。インディペンデント紙のサイト内で、'takiji'で検索するだけ。

で、見つかったのがこの記事↓です。

Japanese discontent voiced in novel sales – The Independent

ということで、夜も更けて頭が回らなくなりつつあるヘッポコ訳です。

小説の売れ行きに表われた日本の不満
[英インディペンデント紙 2008年8月21日]
By David McNeill in Tokyo

 「おい、地獄さ行(え)ぐんだで!」。ロシア沖の氷の海に出かける加工船に乗り込んだ日本の漁夫はこう叫ぶ。
 船員と彼の仲間たち――ベテランの船乗り、大学生、それに貧しい農家の少年たちの一群――は、サディスティックな親方たちと貪欲なボスたちに殴られ搾取される。彼らが団結してストライキを打ったとき、軍隊が乗り込んできて、無残にストライキを弾圧した。
 プロレタリア小説の古典である『蟹工船』の粗筋はこんなふうだ。著者小林多喜二は、この小説によって悪名高い特高警察の注意を集め、その出版から4年後、特高警察によって殺された。しかし、それは1933年のことだ。小林多喜二の小説が再び流行して、ほかの作品を押しのけて売れ行きを伸ばしているのは、多くの日本人にとって驚きだった――増加している日本のワーキングプアの人たちを除いて。
 『蟹工船』は、それから何年も、年間の売上は約5000部、買った人の多くは大学教授や社会主義者たちだった。しかし、それは1月以来打ち破られ、人気になった。同小説の文庫版を出版している新潮社は、今年だけで約49万部を増刷した。100倍の増加だが、この増刷は終わりそうにないという。「われわれも驚いた」と同社のスポークスマン、ミネ・ユキは認める。彼女によれば、新しい読者の半分以上は20代か30代だ。2006年に出版された漫画版は、学生たちに高い人気を示した。
 長い間、貧困に打ちひしがれてきた日本の歴史のゴミ箱に投げ捨てられてきたマルクス主義小説の復活は、世界第2位の経済大国で、巨大な構造再編の10年間で労働者保護の多くが剥奪されたことにたいする不満が大きくなっていることの証明だと見られている。日本の労働力の3分の1以上がパートタイム労働者になり、100万人以上の人、とくに若者が、賃金が減少し希望が縮小するもとで、どうやって生きてゆくかを模索し続けている。
 「小説と状況は違っているが、社会の構造は同じだ」と、作家で評論家の雨宮処凛は言う。「毎日新聞」の1月のインタビューのなかで、この小説の先見性を称賛したとき、彼女は、その復活に火をつけることになった。「いまの読者は、この小説のなかに自分自身を見出している。とくにワーキングプアの若者は、自分たち自身の人生が書かれていると思っている」
 国民的なムードの変化から恩恵を得ているのは、出版社だけではない。小さな日本の共産党(JCP)は、この数年間、政党ランキングの下位に低迷しているが、伝えられるところによれば、2月に志位和夫委員長が福田康夫首相を追及してから、毎月1000人の新入党員を迎え続けている。「派遣労働者は使い捨て商品のように投げ捨てられている」という志位氏の発言は、インターネット上のテレビクリップで無限に繰り返されている。同党は日刊「赤旗しんぶん」を、最高時の350万部よりは少ないとはいえ、150万部発行している。
 しかし、日本共産党の成長は例外だ。日本の労働組合員はこれまでで一番少ないし、日本は、大企業優先の自由民主党に依然として支配されている――自民党は半世紀の間ほとんどずっと政権をにぎり続けてきた。それでも、「蟹工船」現象は、日本の若者の多くがラディカルな変化に飢えていることを示す兆候である。

Japanese discontent voiced in novel sales
[Independent. Thursday, 21 August 2008]
By David McNeill in Tokyo

"We're going to hell!," shouts a Japanese fisherman as he boards a factory ship bound for freezing waters off Russia.

The sailor and his comrades — a mix of sea-hardened veterans, university students and poor farm boys — are beaten and exploited by sadistic foremen and greedy bosses. When they form a union and strike, the army stomps aboard and brutally puts it down.

Such is the bare-bones plot of the proletarian classic The Crab Ship, a novel that earned its author Takiji Kobayashi the attentions of Japan's infamous special police, who tortured him to death four years after it was published. But that was 1933, and to the astonishment of many, except perhaps Japan's growing army of working poor, Kobayashi's book is back in fashion, outselling most other titles on the shelves.

After years ticking along on annual sales of about 5,000, mainly to college professors and socialists, The Crab Ship exploded in popularity from January. Shinchosha, publisher of a pocket version of the book, has run off nearly 490,000 copies this year, a 100-fold increase, and says there is no end to the print run in sight. "It's caught us by surprise," admits a company spokesman, Yuki Mine, who says over half of new readers are in their twenties and thirties. A comic version, published in 2006, has proved hugely popular with students.

The resurrection of a Marxist tome many had long consigned to the dustbin of Japan's poverty-stricken past is seen as evidence of growing discontent in the world's second-largest economy, which has shed many employee protections in a decade of profound restructuring. More than one-third of Japan's workforce is part-time and millions more, especially the young, are learning how to live on shrinking wages and diminished expectations.

"Circumstances in the novel are different but the structure of society is the same," says Karin Amamiya, a writer and critic, who helped spark the book's revival when she praised its prescience during a January interview in The Mainichi newspaper. "Readers nowadays see themselves in the book. Especially poor young people see their own lives described."

Publishers are not the only ones to have benefitted from the changing national mood. The tiny Japan Communist Party (JCP), which has for years languished near the bottom of the political league tables, is reportedly recruiting 1,000 new members a month, after the party leader Kazuo Shii harangued Prime Minister Yasuo Fukuda in February. "Day temp staff workers are being discarded like disposable articles," said Mr Shii in a TV clip endlessly circulated on the internet. The party sells 1.5 million copies of its daily Akahata (Red Flag) newspaper, though this is well down on its 3.5 million peak.

But the growth of the JCP is an anomaly. Union membership in Japan is at an all-time low and the country is still dominated by the pro-business Liberal Democrats, who have ruled almost continuously for half a century. Still, The Crab Ship phenomenon is a sign that many of Japan's young are hungry for radical change.

「蟹工船」ブームを紹介=失われた労働者保護に不満?英紙
[時事通信 2008/08/22-21:48]

 【ロンドン22日時事】22日付の英有力紙インディペンデントは、日本のテレビや新聞などで最近、プロレタリア文学代表作である小林多喜二の「蟹工船」がブームになっていることを東京特派員電で取り上げ、戦前のマルクス主義作品の復活は、世界第2の経済大国である日本で過去10年の経済大再編の間に、被雇用者への多くの保護措置がはく奪されたことに対する不満が高まっていることの表れだなどと伝えた。
 同紙は「日本の労働力の3分の1以上が非正規雇用者であり、賃金が目減りし将来の希望がしぼんでいる中で、いかに生活するかを若者層を中心に何百万もの人々が模索している」と指摘。「こうした国民的ムードの変化に出版会社だけでなく、低迷していた日本共産党も恩恵を受けており、同党は月に1000人の新規党員を獲得しているらしい」と報じている。

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