左から、山中速人『ハワイ』(岩波新書)、武村雅之『地震と防災』(中公新書)、松本仁一『アフリカ・レポート』(岩波新書)
最近読み終わった本。といっても、新書ばっかりですが。
まず、山中速人『ハワイ』。岩波新書赤版291。1993年刊ということで、もう15年前の本ですが、内容は非常に新鮮でした。とくに、白人到達以前から、ハワイ先住民の社会組織が高度に発達していた、という指摘は非常に重要。
1つには、白人到達時点でのハワイ先住民社会を原始共産制のように考えた人類学の誤り、ということがあります。
さらに、もう少し普遍化して考えてみると、白人がやって来たときに、その土着の社会がどういう発展段階にあったか、というのは、歴史の問題として、なかなか面白いテーマです。これは、以前に、宮地正人氏が日本科学者会議の国際シンポジウムで報告していたことですが、たとえば「大航海時代」に、ヨーロッパ人は東アジアにまで到達するけれども、この時代の東アジア社会は、ひょっとしたら当時のヨーロッパ世界よりもよっぽど豊かな社会だった。だからこそ、ヨーロッパ人は東アジア社会の植民地化に失敗する。ヨーロッパ世界が東アジア諸国を植民地化するためには、産業革命を含む、さらに200年以上の年月が必要だった、という訳。そういう問題がハワイについても考えられるというのは、非常に興味深く思いました。
あと、第2次世界大戦をきっかけに、ハワイが軍依存社会になっていく、という歴史を初めて知ったことも収穫でした。
2冊目、武村雅之『地震と防災』は、実は、あまり期待せずに読み始めたもの。しかし、地震とは何か、地震の揺れとは何か、地震の被害はどのように生じるか、という問題が非常に分かりやすく書かれていて、一気に読み終えてしまいました。
分かりやすい理由の1つは、地震学の歴史を踏まえて書かれていること。最先端の研究をきちんと理解するためには、歴史をふり返ることが大事ですね。もう1つは、地震を科学的にとらえるというときに、自然科学だけでなく、社会学的な側面にもきちんと目を向けていること。逆に、しばしば「関東大震災の何倍の揺れ」というような言われ方がするけれども、そのときの「関東大震災」って何?という問題を、きちんと自然科学的な裏づけをもって押さえていること。そのあたりのバランスが的確なように思いました。
3冊目、松本仁一『アフリカ・レポート』は、この8月に刊行されたばかりの岩波新書。すでに新聞に書評が載ったりしていますが、確かに読んでみると、現在のアフリカの置かれている状況の、なかなか深刻な問題が、実態を踏まえて紹介されています。以前に、勝俣誠『現代アフリカ入門』(岩波新書、1991年)を読みましたが、それ以後のアフリカを知る良書といえるでしょう。
しかし、そこに描かれている実態は、非常に深刻。第1章から読んでいると、あまりの展望の無さに途中で投げ出したくなるほどです。最後の2章で、ようやく方向らしきものが見えてくるのですが…。
ということで、点でばらばらな読書。まだまだ続いています。(^_^;)
【書誌情報】
- 著者:山中速人(やまなか・はやと)/書名:ハワイ/出版社:岩波書店(岩波新書赤版291)/刊行年:1993年/ISBN4-00-430291-9/定価:本体602円+税
- 著者:武村雅之(たけむら・まさゆき)/書名:地震と防災 “揺れ”の解明から耐震設計まで/出版社:中央公論新社(中公新書1961)/刊行年:2008年8月25日/ISBN978-4-12-101961-5/定価:本体760円+税
- 著者:松本仁一(まつもと・じんいち)/書名:アフリカ・レポート――壊れる国、生きる人々/出版社:岩波書店(岩波新書新赤版1146)/刊行年:2008年8月20日/ISBN978-4-00-431146-1/定価:本体700円+税