刑務所が「偽装請負」?!

「偽装請負」にかんする記事。

1つめは、全国72の刑務所・拘置所のうち、約9割の64施設で、請負会社の従業員に直接仕事の指示を出す「偽装請負」がおこなわれていたことが判明したという問題。

本来、請負とは、その業務を自分で遂行できる能力をもった会社に仕事を任せるもの。しかし、実際には、たんにコスト削減のための方便として利用されている。その結果が、このありさま。法律の執行機関として失格です。

全国の刑務所・拘置所の9割で「偽装請負」(朝日新聞)
偽装請負労災訴訟:「TOTO」など訴えの両親「息子の無念、裁判で晴らす」/滋賀(毎日新聞)
遺族がTOTOを提訴 偽装請負での労災死事故で 大津地裁(MSN産経ニュース)
直接雇用めぐり溝 日亜化学の偽装請負問題(徳島新聞)
日亜化学で「偽装請負」徳島労働局が指導(MSN産経ニュース)
日亜化学請負問題:05年にも、労働局が指導 「派遣事業に該当」/徳島(毎日新聞)

全国の刑務所・拘置所の9割で「偽装請負」
[asahi.com 2008年9月10日]

 07年度に民間会社に業務を請け負わせた刑務所や拘置所など全国72の刑事施設のうち、約9割の64施設が請負会社の従業員を直接指揮したり、勤務時間を定めたりしていたことが、朝日新聞社の法務省への情報公開請求でわかった。直接雇用や派遣の契約を結んでいない労働者の労務管理は「偽装請負」にあたり、労働者派遣法などに抵触する。同省は各施設に改善を指導した。(宋光祐)

 労働者派遣法は、請負会社の従業員を直接指揮・監督する場合、受け入れ会社は労災防止などの安全管理責任を明確にするため、「派遣契約」を結ぶよう定めている。しかし、64施設は、実態は施設側の指示で働く派遣労働者なのに、労務管理を請負会社に任せねばならない業務請負契約しか結んでおらず、「偽装請負」の状態だった。
 兵庫労働局は昨年12月、業務請負契約で働いていた事務員や管理栄養士を直接指揮し、勤務時間も管理していたとして、労働者派遣法に基づいて神戸刑務所に是正を指導。これを受け、法務省が全国の72刑事施設(刑務所53、拘置所7、少年刑務所8、医療刑務所4)を調査した。
 この結果、07年度、71施設が総務や受刑者の処遇部門で主に人材派遣会社に業務を請け負わせ、510業務で従業員の派遣を受けていた。従業員に直接指示や命令をしていたのは45施設計241業務、勤務時間を定めていたのは59施設計434業務、勤務状況の管理は28施設計245業務に上った。また、60施設では請負会社の業務管理責任者が常駐していなかった。
 このうち刑務所では、53施設のうち47施設で直接指示などが見つかった。
 法務省矯正局は調査結果をもとに今年2月、請負会社側の業務管理責任者を定め、常駐させるように各施設に指示した。管理責任者を通じて、請負会社の従業員に指示を出すという。担当者は「業務請負契約が年々増える中で各施設ともチェックが甘くなっていた」と話している。

2つめは、2007年5月にTOTO滋賀工場で起きた労災をめぐるニュース。「偽装請負」状態にあった西野尾茂信さんが機械に頭を挟まれて死亡した事故について、両親がTOTOを提訴。西野尾茂信さんは、請負会社の従業員だったが、TOTOが直接仕事の指示をだす「偽装請負」状態にあった。したがって、TOTOに労災の責任もあるはずなのだが、TOTOの顧問弁護士は、「息子さんは勝手に機械の中に入り、死んだんです」と言い放ったという。なんという暴言!!

偽装請負労災訴訟:「TOTO」など訴えの両親「息子の無念、裁判で晴らす」/滋賀
[毎日新聞 2008年9月6日 地方版]

◇「偽装請負」状態で労災死

 「偽装請負」状態で働かされ、労災事故で死亡した甲賀市甲賀町の派遣会社社員、西野尾茂信さん(当時39歳)の両親らが5日、住宅設備機器メーカー「TOTO」などを提訴した損害賠償訴訟。父末吉さん(73)と母秀美さん(67)は同社の対応に怒り、「息子の無念は裁判で晴らすしかない」と話している。
 昨年11月、大津市内で開かれたTOTOとの話し合いの中で、同社の顧問弁護士の言葉に両親はあぜんとした。「息子さんは勝手に機械の中に入り、死んだんです」。人間味のない一言に、末吉さんは「人の命を何と思っているのか」と憤る。
 茂信さんについて、「ずさんな安全管理で働かされた」と考える末吉さんは「派遣社員は危険な仕事ばかりさせられる」と嘆く。一方で「息子の死が、これから働く人に少しでも生きれば」と願う。秀美さんも「第2の茂信ができたら、えらい事」と再発防止を力説。両親は「最後までやり抜く覚悟」で裁判に臨む。【金志尚】

遺族がTOTOを提訴 偽装請負での労災死事故で 大津地裁
[MSN産経ニュース 2008.9.5 12:07]

 衛生陶器最大手「TOTO」(北九州市)の滋賀工場(滋賀県湖南市)で昨年5月、偽装請負の状態で働いていた男性が死亡した労災事故をめぐり、両親らが5日、「事故はTOTO側が安全管理を怠ったため起きた」として、同社に約1億円の損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こした。
 死亡したのは同県甲賀市甲賀町、西野尾茂信さん=当時(39)。
 訴状によると、西野尾さんは平成5年から同工場で勤務。昨年5月14日、トイレのタンクを成型する機械の修理中に、機械と支柱との間に頭を挟まれて死亡した。
 西野尾さんは、所属する会社とTOTO側との業務請負契約に基づいて勤務。TOTOとの間に直接の雇用関係はなかったが、原告側は「安全管理は実質的にTOTO側が行っており、同社の指揮下にあった」と主張している。
 事故をめぐっては、東近江労働基準監督署が労働安全衛生法違反の疑いで同社を書類送検し、甲賀簡裁が今年7月、罰金50万円の略式命令を出している。
 TOTO広報部の話「訴状を見ていないのでコメントできない」

TOTOの「偽装請負」労災事故は、こちら↓を参照。「偽装請負」であったことは、すでに労基署が認定しています。
まだまだ続く偽装請負

3つめは、偽装請負を告発した労働者を、期間社員にして「雇い止め」(事実上のクビ)にしようとしている日亜化学。徳島労働局が日亜を指導したのだが、「偽装請負」は派遣契約ではないとして、日亜の直接雇用申込義務を認めていない。「偽装請負は請負契約の問題」というが、「偽装請負」がなぜ「偽装」請負といわれるかといえば、実態が派遣であるにもかかわらず、「請負」であるかのように偽装しているからだ。だから、実態としては派遣なのだから、1年以上その状態で働いた元請負従業員たちに、日亜は直接雇用を申し入れる義務がある。労働局(労働基準監督署)が労働者の権利を無視して、いったいどうする!!

直接雇用めぐり溝 日亜化学の偽装請負問題
[徳島新聞 2008/09/10 10:17]

 徳島労働局が8月20日、行政指導に踏み切った日亜化学工業(阿南市上中町)の偽装請負問題。元請負労働者は指導を一定評価しながらも、直接雇用に言及していない内容に不満を募らせている。労働者は「実態が派遣である以上、労働者派遣法に基づき、一定期間を超えて働けば直接雇用されるべきだ」と主張する。これに対し、労働局は労働実態を「派遣」と認め、契約書面が「請負」として「偽装請負」と認定。「偽装請負では法的に直接雇用の義務は生じない」との見解を示す。足踏み状態が続く偽装請負における直接雇用問題を検証する。(社会部・藤長英之)

 日亜化学の偽装請負を告発した島本誠さん(35)=全日本金属情報機器労組(JMIU)日亜分会代表=は、人材派遣会社シーツービーテック(徳島市南昭和町4)に雇われ、請負契約で2004年7月から日亜化学の製造ラインで働いていた。
 偽装請負を告発した06年10月当時、製造業の派遣労働者の契約期間は最大1年(現行では3年)。労働者派遣法では、派遣労働者が期間満了を超えて引き続き働く場合、派遣先が労働者に直接雇用を申し込む義務が生じると定めている。

「当たり前」強調

 島本さんは「日亜化学の指示で働くなど明らかに派遣労働の形態で、当時1年以上働かされていた。日亜化学に直接雇用されるのは当たり前のことだ」と力を込める。
 一方、徳島労働局は「偽装請負はそもそも派遣契約ではなく、請負契約上の問題。そのため、偽装請負における直接雇用問題の考え方として、労働者派遣法は適用できない」との姿勢を崩さない。その上で「雇用安定を図るため、偽装請負の是正の中で、請負契約から派遣契約への切り替えや直接雇用に向けた努力を求めることはできる」と説明する。
 これに対し、JMIU徳島地方本部の森口英昭委員長は「法律の趣旨を無視した形式的な判断だ。偽装請負という違法な雇用契約である以上、契約が請負か派遣にかかわらず、労働者に有利な法解釈がなされるべきだ」と批判する。

民事訴訟辞さず

 現在、JMIUは日亜化学による不当労働行為の救済を県労働委員会に申し立てており、来年2月ごろには審査の判断が下される予定。十分な救済がなされなかった場合は、民事訴訟も辞さない構えだ。
 島本さんら偽装請負の申告者のうち6人は、いったん請負契約が打ち切られた後、シーツービーテックの派遣労働者として日亜工場内の緑地管理や清掃作業員として働いている。しかし、その契約期間も今月末で終了し、その後の見通しは立っていない。
 島本さんは「私たちは正社員と同じ仕事をしながら半分の賃金しかもらえず、常に雇用打ち切りの不安を抱えてきた。国が若者の雇用の安定を図ると言うなら、こうして苦しむ労働者に救いの手を差し伸べてほしい」と訴えている。

 《請負契約と派遣契約》請負契約は期間の制限がなく、労働者がメーカーから独立して製品を製造。安全衛生管理の責任は主に人材派遣会社にある。これに対し派遣契約は、労働者はメーカーの指揮命令で働き、最大三年の期間を過ぎればメーカー側に直接雇用の義務が生じる。さらに安全衛生管理の責任は、メーカーと派遣会社の双方にある。偽装請負とは、メーカー側が直接雇用義務や管理責任を免れられる請負契約を形式的に結び、実態は労働者をメーカーの指揮命令で働かせる形態を指す。

日亜化学で「偽装請負」徳島労働局が指導
[MSN産経ニュース 2008.8.28 22:39]

 発光ダイオード(LED)大手の日亜化学工業(徳島県阿南市)で「偽装請負」があったとして、徳島労働局は日亜化学と人材サービス会社シーツービーテック(徳島市)に是正を指導し、28日、直接雇用を求めていた元請負労働者6人に調査の経緯を説明した。
 全日本金属情報機器労働組合によると、6人は同社工場で請負契約に基づき働いていたが、徳島労働局は、平成15年ごろから18年9月ごろまで社員の指揮・命令を受ける派遣労働の状態があったと判断したという。
 日亜化学は「労働局からの指摘内容には異議がある。今後の対応は検討中」と話している。
 6人は昨年7月、日亜化学に直接雇用を指導・勧告するよう、徳島労働局に申し入れていた。

日亜化学請負問題:05年にも、労働局が指導 「派遣事業に該当」/徳島
[毎日新聞 2008年8月22日 地方版]

◇元労働者、その後も実態申告

 LED製造大手の日亜化学工業(本社・阿南市)が「偽装請負」で徳島労働局から指導を受けた問題で、労働局が05年1月にも日亜に対し同様の指導をしていたことが分かった。労働局に問題を申告した元請負労働者らは「日亜は指導後も違法行為を繰り返していた」と批判しており、同社で「偽装請負」が常態化していた可能性もある。【岸川弘明、向畑泰司】
 徳島労働局は05年1月18日付の文書で、日亜が請負契約に基づき人材派遣会社4社に業務委託していた事業について、「請負事業とは判断しがたく、労働者派遣事業に該当する」とし、「偽装請負」を認定。日亜に対して、請負か派遣か事業形態の明確な区別など、改善措置を行うよう指導した。
 しかし、その後も労働組合員だった元請負労働者らが2度にわたり、日亜が労働者派遣法に違反した「偽装請負」を行っているとして、徳島労働局に申告書を提出していた。
 申告書によると、徳島市の人材派遣会社と雇用契約を結び、日亜工場で勤務していた元請負労働者らは、制限期間を超えて日亜社員の指揮命令下で働かされている実態は労働者派遣に当たるとして、06年10月に労働局に申告。この際は、県の仲介で日亜側から労働者を直接雇用する提案があったため、申告を取り下げたという。
 だが実際は、組合員が働く職場は06年12月?07年6月に廃止されたうえ、採用試験でも受験した組合員全員が不採用になった。労働者らは07年7月に再度、「偽装請負」を労働局に申告した。
 05年1月の指導について、徳島労働局は「個別の案件なので答えられない」とするが、日亜化学工業は「事実があったので、適正化に向けた改善策を取った」と説明している。

刑務所が「偽装請負」?!」への1件のフィードバック

  1. 私の和解事項を勇気にして、派遣や偽装請負で働く人たちが自分の命をもっと重く感じて闘ってほしいと思います。

    不当解雇におびえずみんなで一緒に闘いましょう。

    西野尾さんの無念をはらす為にも立ち上がりましょう。

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