J-CASTニュースが事故米の転売問題で、興味深いニュースを流している。工業用糊業界では「コメを使うことはない」と言っているのだ。これが本当なら、工業用糊用にと売り渡されてきた事故米は実際には工業用糊の原料としては使われていない、ということになる。ならば、事故米はどこへ行ったのか?
J-CASTニュース : 「工業用糊に限り販売」 農水省の説明は大ウソだった
「工業用糊に限り販売」 農水省の説明は大ウソだった
[J-CASTニュース 2008/9/11]農薬や毒カビに汚染された「事故米」が食用として出回っている事件で、農林水産省の説明に大きな疑惑が浮上している。農水省は「事故米」を、工業用糊や、木材の合板や集成材の接着剤の原料使用に限り販売を許可していると説明していたが、実は、国内では接着剤などの原料に米を使用することは殆どないことがわかった。使い道のない米を穀物業者に販売していた形になり、今後農水省の責任が厳しく追及されるのは必至だ。
糊に使うのは「事故米」でなくタピオカや小麦
問題を起こした三笠フーズの場合も「工業用糊加工品」に用途を限定することを条件に販売したという。しかし、工業用糊メーカーの大手ヤマト、不易糊工業、住友3MにJ-CASTニュースが取材すると、いずれも、澱粉糊のうち「米を原料にしているものはない」という答えが返ってきた。また、「米を原料に糊を作っているメーカーがあるという話は聞いたことがない」のだという。ちなみに澱粉糊はヤマトがタピオカ、不易糊工業はコーンスターチを原料にしている。
また、森林総合研究所によれば、合板を作る際や、集成材に使う接着剤の原料に小麦を使う例はあるものの、米を使ったものは見たことがないそうだ。工業用糊や接着剤に使われないとなると、「事故米」を工業用糊などに使用を限定、という農水省の「前提」が全く崩れてしまう。
「三笠フーズ」を発端とする今回の「事故米」の食品使用問題では、2008年9月10日に、新たに食品・資料販売会社「浅井」(名古屋市)、肥料製造会社「太田産業」(愛知県小坂井町)が米穀の仲介業者に転売していたことが発覚。食用に転用されている可能性が強まっている。
今回の「事故米」は、日本政府が世界貿易機関(WTO)のルールで輸入を義務づけられたミニマムアクセス(MA)米で、年間約77万トン輸入している中の一部。農水省のホームページには、
「MA米によって国産米の価格・需給に影響を与えないよう、加工用中心の輸入・販売を行うなどの措置を講じている」
と書かれている。
「何でも工業用に回すというわけではありません」
08年9月10日のテレビ朝日系「報道ステーション」では、東北の穀物業者が匿名でインタビューに応じていた。
「農政事務所からカビの生えた270キロの米があるという話があり、食用以外なら何でも処理していいと。それで、堆肥にするということで私が買った。(事故米は)手を出す人がいないので、お金にならない」
穀物業者に直接の依頼があるのは驚きで、それだけ「汚染米」の使い道は少なく、在庫が膨らみ、農水省は頭を痛めていた様子がうかがえる。
農水省の報道担当はJ-CASTニュースに対し、「三笠フーズ」に「事故米」を販売したのは「三笠フーズ」が工業用穀物も扱っていたため、契約通りに加工すると考えたからだと話した。しかし、「事故米」が工業用糊としては需要がないのでは、と指摘したところ、これまでの農水省の発表やJ- CASTニュースの取材に答えたこととニュアンスが一変した。
「台風で水に浸った事故米は食用としてすぐに出荷するように、事故米も臨機応変に、何でも工業用に回すというわけではありません」
という理解不能の説明だった。食用に転売される可能性にうすうす気が付いていた、といわれても仕方がないような対応だ。
住友商事は9日付で、次のようなコメントを発表している。
2008年09月09日
住友商事株式会社輸入米に関する一部報道について当社は、平成17年8月にミニマムアクセス輸入米としてタイ米を輸入しましたが、そのタイ米の処理に関し、一部報道で当社名が言及されておりますので、改めて経緯を以下のとおり、説明いたします。
- 当社は、平成17年8月13日にミニマムアクセス輸入米として農林水産省向けにタイ米を7,000トン輸入しました。その一部、約146トン(以下、本件タイ米)について、検疫当局より、カビ発生の指摘を受けました。
このカビは、輸送途上の水濡れにより発生したものと推測されますが、カビが発生したタイ米については、農林水産省との契約条件により、当社が買い取り、処理することになったものです。- 当社では、本件タイ米の処理について、農林水産省の了解を得たうえで、三笠フーズ株式会社に対し「工業用糊加工品」に用途を限定することを条件に 販売しました(販売契約日:平成17年11月1日)。
また、当社は、本件タイ米が販売条件に従って「工業用糊加工」用に処理されたことについて、三笠フーズ株式会社が検疫当局に提出した措置完了報告書(平成18年3月31日付)の写しを受領しております。- なお、三笠フーズ株式会社との取引は、本件タイ米の販売以外にはありません。
以 上
他方で、三笠フーズが農政事務所の課長を接待していたというニュース。三笠フーズ側の接待という面もあるけれども、なんとかして「政府米」を売りたい農政事務所の側としても、居酒屋程度の“飲みニケーション”は必要だったということかも知れない。農水省は、「大変遺憾」などと他人行儀なコメントを出しているが、農水省にとっても、政府米を買ってくれる三笠フーズは上得意だったのではないか?
農政事務所元課長を接待 三笠フーズ、転売と同時期(中国新聞)
農政事務所元課長を接待 三笠フーズ、転売と同時期
[中国新聞 2008/9/16]三笠フーズ(大阪市)による事故米の不正転売問題で、2005?06年に農林水産省近畿農政局大阪農政事務所の当時の消費流通課長(62)が、三笠フーズの冬木三男(ふゆき・みつお)社長らから焼き鳥屋で接待を2度受けていたことが15日、分かった。
共同通信の取材に、元課長本人が事実を認めた。「接待という認識はなかった。便宜供与はしておらず、求められてもいない」と話している。
接待は、同社が汚染米を食用に不正転売していた時期と重なる。同課は事故米の売買を含め、大阪府内のコメの流通業務を担当しており、農水省と問題業者の不適切な関係として批判を呼ぶのは必至だ。
元課長によると、接待はいずれも大阪市内にある三笠フーズ経営の焼き鳥屋で開かれた。2回とも冬木社長と幹部社員が同席し、飲食代は計数千円程度とみられ、三笠側が負担した。
05年春ごろにあった最初の会合は、幹部社員から「新しい焼き鳥屋を出したので味の評価をしてほしい」と誘われ、店で一口だけ食べた。2度目は同年末ごろから06年初めごろにあったが、一切口にしなかったという。
元課長は「政府米を売る仕事の一環だった。高級料亭だったら断っていた。今にして思えば不適切だった」と釈明。「三笠フーズの名前は知らず、(グループ会社の)辰之巳の社長ということで会った」と話した。
また「当時の食糧庁長官が『政府米を売れない所長は辞表を持ってこい』と話したといううわさがあった。政府米を減らさなければならないという意識はあった」と明らかにした。
農水省は「大変遺憾と考えている」とのコメントを発表。15日、全国の関係職員に対し、国家公務員倫理法違反の行為がないか緊急調査に着手した。
一方、大阪農政事務所は同日朝、元課長から聞き取り調査をし、松浦克浩(まつうら・かつひろ)所長は「不正流通の解明に全力を挙げている中で、おわびしたい」と謝罪した。
政府米は、もともとWTOで義務化された(といわれている)「ミニマムアクセス」で輸入したコメ。だから、事故米であっても「非食用」として輸入する必要がある、というのが政府の言い分。しかし、非食用のコメの需要はない。ということで、事故米がどんどんたまってゆくことになる…。
汚染米 その背景には/輸入に固執の政府/安全も置き去り(しんぶん赤旗)
汚染米 その背景には/輸入に固執の政府 安全も置き去り
[2008年9月14日 しんぶん赤旗]農薬やカビ毒に汚染された輸入米が食用として流通し、焼酎や菓子、給食にまで使用されていたことに、国民の不安が広がっています。非食用の汚染米を食用と偽り販売した企業の責任は重大です。同時に、汚染米を廃棄せず流通を容認してきた政府の責任が問われます。(浦野恵子)
大阪市の米加工販売業者「三笠フーズ」が発がん性の強いカビ毒や農薬に汚染された輸入米を食用と偽って酒造メーカーなどに卸していたことが公表されたのが今月5日です。その後、愛知県の「浅井」や「太田産業」も、汚染米を食用として販売していることがわかりました。
三笠フーズの経路だけでも十四府県にまたがって汚染米が流通しています。農水省は、これら3社を含む20社を対象に、8日から立ち入り調査を行っていますが、今後、汚染の広がりは計りしれません。国の公認
厚生労働省の担当者は、基準値を超える農薬やカビ毒に汚染された米の販売は、「食品衛生法違反であり、廃棄または積み戻しをすべきものだ」と話します。
廃棄や積み戻し(返送)をしていれば、防げたはずの汚染米の流通がなぜ、ここまで広がったのか。
三笠フーズにカビ発生のタイ米を販売した住友商事は、「(厚生労働省の検疫から指摘を受けた)タイ米の処理について、農林水産省の了解を得たうえで、三笠フーズに対し『工業用糊加工品』に用途を限定することを条件に販売した」と経緯をのべています。
農水省は、食品衛生法に違反する輸入米の流通を公認してきました。その数量は1996?2007年までで1万677トンに及びます。
「汚染米は国内流通を禁止せよ」「違反米を非食用として輸入することはやめよ」との国民の声や日本共産党国会議員団の申し入れを受けて、太田誠一農水相は10日、輸入時の検疫で基準を超える残留農薬が判明した場合、輸出元に「返送すること」など、原則として汚染米を流通させないとの方針を固めました。当然のことです。責任放棄
一方で、太田農水相は、汚染米への不安が広がっていることについて、「人体に影響がないことは自信をもっていえる。だからあんまりじたばた騒いでいない」と発言し、農水省の責任を棚上げにしています。
輸入米が汚染されているとわかっていながら、廃棄もせず流通させた大本の責任を投げ捨てた許しがたい態度です。
日本政府は、年間77万トンもの輸入米(ミニマムアクセス米)を受け入れています。日本国内には必要もないのにWTO(世界貿易機関)の取り決めで押し付けられているもので、日本の年間消費量の8.4%に相当します。この輸入米が膨大な在庫となって国内産米を圧迫し、米価下落の大きな要因ともなっています。徹底審議を
日本共産党の紙智子参院議員の話 今回の汚染米事件は、政府が「義務米」といって何が何でも毎年77万トンの輸入米を確保しようとしているなかで起こったことです。政府は、輸入があたかもWTO農業協定上の「義務」であるかのようにいいますが、本来輸入は義務ではありません。無理を重ねるなかで国民の命や健康が脅かされています。徹底的な事実究明と責任の糾明、再発の防止が必要であり、国会で徹底論議すべきです。
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