オーストラリア紙が日本共産党と『蟹工船』ブームを紹介

オーストラリアの新聞「シドニー・モーニング・ヘラルド」が、東京発の記事で、日本共産党と『蟹工船』ブームを紹介しています。

Japanese jobless are turning red – World – smh.com.au

ということで、またもやへっぽこ訳。ちっちゃな誤訳はご勘弁を(冒頭から、意味がよう分からん…「ワセリン・レンズ」ってどういう意味?)。重大な誤訳があったときはお知らせください。(^_^;)

赤くなる日本の失業者たち

[シドニー・モーニング・ヘラルド 2008年9月20日]

 彼らのワセリン・レンズは、街角から作り笑いを映し出す。彼らの安っぽいマントラ――国中のミニバン・スピーカーから鳴り響く――が、昼間はどんな時間だろうが家庭に侵入してゆく。
 空席になった首相ポストを争う、日本の与党・自民党の5人の政治家のキャンペーンは、今週、たけなわだった。しかし、有権者の支持はかつてよりも低下している。
 20代、30代前半のパート・タイム労働者は政府に幻滅して、代わりに日本共産党員が増え始めている。同党は、過去1年間に1万人以上の新入党員をむかえた。
 いわゆるフリーターやニート世代は、同党の高齢化した中核世代にかわって劇的な復活をもたらしている。
 志位和夫委員長は、議会での骨太の追及――それはユーチューブで人気となった――で大きな動きをもたらした。彼は、自信を持って今後12カ月でさらに2万人の入党者を期待する。
 主要政党にとってはそれほど驚く事態ではないのかも知れないが、この20年間、日本で政治的のけ者となってきた日本共産党にとっては劇的な変化だ。
 1990年に、同党は50万人の党員を有したが、2000年までにその4分の1を失った。次の5年間に、同党は、国政選挙での得票率を11.3%から7.3%に徐々に低下させた。
 この傾向は、いまなお、1980年代のバブル時代の資本主義的過剰や海外の豪華ブランドへの熱愛をともなって西側世界に加わっている日本にとって驚くべきものだ。 
 しかし、日本共産党への関心は非常に大きい。主要野党、中道左派の民主党が、おそらく11月に予想される国政選挙で、混乱した政府をひっくりかえすのを同党が助けることができるかもしれないと信じるほどである。
 「苦しみもがいている多くの若者は、日本が向かっている道に嫌気がさしている」と志位氏はいう。「今年になって、彼らは、『蟹工船』の中に自分たちの窮状が反映されているのを発見し、わが党に関心をもつようになってきた」
 『蟹工船』は、プロレタリアの生活を描いた有名な日本の小説だが、最近になってベストセラーのリストに復活してきた。1929年にマルクス主義作家、小林多喜二によって書かれた同小説は、ロシア洋上にむかう加工船で働く労働者たちの話である。
 「地獄さ行くんだべ!」。乗組員の一人がはっきりと宣告する。彼らは、彼らの耐え難い仕事に向かうのであり、その仕事中彼らは、彼らの雇い主たちによって暴行され、搾取されるのだ。
 小林は、彼の古典が刊行されて4年後に、日本の特高警察によって拷問され殺される。1953年に、同書が文庫版で出版され、その後、年間約5000冊の割合で売れてきた――大部分は大学図書館や活動家たちに。しかし、主要紙「毎日新聞」で、右翼でバンク・シンガーで作家の雨宮処凜が引用した1月から、約50万部売れた。雨宮は「この小説が描く状況は、今日のフリーターたちの境遇とまったく同じだ」といった。
 出版社である新潮社は、次のようにいう。この本は、インターネット・カフェと簡易宿泊施設のあいだを漂流しながら、低賃金と時たまのパート・タイムの仕事で何とか生き延びようともがいている若い労働者たちに非常に人気がある。
 日本の労働力にしめるパート・タイムの割合は、2001年の38%から今年初めの44%に上昇した ((この数字が何のデータにもとづくものか確認できません。総務省「労働力調査」では、非正規労働者の割合は2001年27.2%から2007年33.5%に上昇。「毎月勤労統計」によるパートタイム労働者比率は2006年で25.5%となっています。))。その間に、年間200万円(2万4,000〔豪州〕ドル)未満しか稼いでいない日本人の数は1,000万人に達した。
 〔しかし〕日本共産党のベテラン党員の中には、自分たちの党への一時的な関心に懐疑的なものもいる。たとえば、ある60歳の党員は日本のメディアに次のように語った。「自分たちを『蟹工船』と同一視してメンバーとなった人たちが、本当に党の活動に関心を持ち選挙で投票するかどうか、私は疑っている」

最後のところで、『蟹工船』ブームで日本共産党に関心を持った若者にたいして、ベテラン党員のなかには懐疑的な人もいると指摘していますが、このコメントの中身がちょっと理解に苦しみます。

マスコミの『蟹工船』ブームや日本共産党持ち上げについては、「一時的なものだ」と思っている党員もいるかも知れません。志位さんだって、「風頼みはだめ。自分で風を起こそう」と言っていますから。

しかし、「共産党に入党した若者が選挙で共産党に投票するかどうか分からない」というコメントは、ちょっと理解不能。党員になっておきながら共産党に投票しない、などということは考えられません。「共産党のメンバーになった若者」ではなく、「共産党に関心を持った若者」というのであれば、彼らが実際に選挙で投票するかどうか分からない、と主張する人がいてもおかしくはありません。ここは、「シドニー・モーニング・ヘラルド」紙の記者が自分で取材した話ではないので、どこかで話が入れ違った可能性もあります。

Japanese jobless are turning red

[Justin Norrie in Tokyo September 20, 2008]

THEIR Vaseline-lens images simper from street corners. Their tinny mantras ― blaring from minivan speakers around the country ― invade homes at any daylight hour.

Campaigning was in full swing this week for the five politicians of Japan's ruling Liberal Democratic Party, vying for the vacated prime ministerial post. But there is one electoral demographic fading from their reach.

Part-time workers in their 20s and early 30s are so disillusioned with the Government that they have instead begun to swell the ranks of the Japanese Communist Party (JCP), which has taken on more than 10,000 new members in the past year.

The so-called freeter (freelance worker) and NEET (not currently engaged in employment, education or training) generation have stimulated a dramatic revival for the ageing core of the party.

The party chairman, Kazuo Shii, who encouraged the groundswell movement with a tough-talking parliamentary speech that became a YouTube hit, confidently expects another 20,000 recruits in the next 12 months.

That may not be such an impressive statistic for a leading party, but it is a dramatic turnaround for the JCP, which has been a political pariah in Japan for two decades.

In 1990, the party had 500,000 members, but by 2000 had lost a quarter of those. Over the next five years, the party watched its share of the general vote dwindle from 11.3 per cent to 7.3 per cent.

The trend is surprising for Japan, still associated in the West with the capitalist excesses of the 1980s bubble era and a continuing love affair with foreign luxury brands.

So great is interest in the JCP, however, that the main opposition party, centre-left Minshuto, believes it can help topple the troubled Government in a general election, widely tipped for November.

"Many struggling young people are tired of the way Japan is heading," says Mr Shii. "This year they have become attracted to our party as they see their plight reflected in Kanikosen."

Kanikosen (The Cannery Boat) is a seminal Japanese novel about proletarian life that has recently returned to the bestseller list. Written in 1929 by the Marxist author Takiji Kobayashi, it tells the story of a group of workers on a factory ship bound for Russian waters.

"We're going to hell!" one of them famously declares as they set out on their brutal mission, during which they are assaulted and exploited by their employers.

Kobayashi was tortured to death by Japan's special police four years after his classic was published. In 1953 the book was released in paperback and subsequently sold ― mostly to university libraries and activists ― at a rate of about 5000 a year. But since January, when it was cited in a leading newspaper, The Mainichi Shimbun, by the right-wing punk singer-cum-writer Karin Amemiya, it has sold half a million copies. "The situation it describes is exactly like those of today's freeters," Amemiya said.

The publishing company, Shinchosha, says the book is especially popular with Japan's legion of young workers who struggle to survive on low-paying and infrequent part-time shifts, while drifting between internet cafes and other makeshift accommodation.

The proportion of Japan's workforce categorised as part-time has increased from 38 per cent in 2001 to 44 per cent at the beginning of this year. The number of Japanese earning less than 2 million yen ($24,000) a year, meanwhile, has climbed to 10 million.

Some veteran JCP members are sceptical about the faddish interest in their party. As one 60-year-old told Japanese media: "I wonder if those who became members because they identify with a book will actually take an interest in party activities and vote in elections."

【追記】

同記事は、「日本の不幸なパートタイム労働者たちは、答えを求めてしっかりした左翼に向かう」というタイトルで、同じくオーストラリアの新聞「The Age」9月22日付に転載されています。

Japan’s unhappy army of part-timers turns hard left for answers – The Age

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