イギリス政府が、同国大手銀行に総額500億ポンド(約9兆円)の公的資金を資本注入することを決定。イギリスの銀行株は、昨日、急落していた。
金融危機:英が資本注入へ 大手行に公的資金9兆円(毎日新聞)
米DJニュース:英政府による銀行救済策は十分か(NIKKEI NET)
金融危機:英が資本注入へ 大手行に公的資金9兆円
[毎日新聞 2008年10月8日 東京夕刊]
【ロンドン藤好陽太郎】英政府は7日夜、英国の大手金融グループに公的資金を投入する方針を固めた。8日午前に概要を発表する見通し。投入額は500億ポンド(約9兆円)。公的資金投入により、極度に不安定化している市場に安心感を与え、金融システムの信認回復を図る。また、中央銀行であるイングランド銀行も市場に十分な資金を供給するほか、利下げの検討に入った。
政府に資本注入を要請していた英金融大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のほか、バークレイズ、ロイズTSBなどに資本注入する見込み。議決権がない優先株を政府が保有する形となる。銀行首脳の報酬制限など責任も問う見通し。
英政府は、米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で一層の損失拡大が避けられないと判断。これ以上の金融危機を招かないため公的資金投入を決めた。
ブラウン首相は「金融システム安定と預金者保護のため、いかなる手段も取る」と表明していた。
RBSの株価は7日、前日比約40%急落、1ポンド(約180円)を割り込み、「緊急事態」(英系銀行)となっていた。==============
■ことば
◇資本注入経営難に陥った金融機関に対し、当局が公的資金で金融機関の株式を取得し、資本の増強を図る措置。経営への信頼性が高まり、金融機関も企業などに融資しやすくなる。米国では金融機関の不良資産を公的資金で買い取る金融安定化法が成立したが、資本注入には踏み込んでいない。日本は98年に1.8兆円、99?02年に8.6兆円の公的資金を大手行などに資本注入した。
英政府による銀行救済策は十分か
[NIKKEI NET 2008/10/08]
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)英国政府はついに、納税者の現金を使い、同国銀行システムの不節制を容認しようとしている。だが、総額450億ポンド(785億9000万ドル)の資本注入をしても、英銀の信頼感を押し上げるには不十分かもしれない。
バークレイズ(NYSE:BCS)、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS.LN)、ロイズTSB(NYSE:LYG)、住宅ローン大手 HBOS(HBOS.LN)の株価下落を受け、英政府は7日、銀行システムに資本注入する方針を打ち出した。世界の金融システムで銀行が大きな役割を果たしていることを考えると、これら英銀の健全性を保つことは、国境を越えてはるか遠くにまで重要な意味を持つ。
英政府が銀行を救済するという事実は、大手英銀が経営破たんするのではないかとの懸念を払しょくするはずだ。だが大手米銀と同様、バークレイズとRBSは自己資本が弱体化しているようで、債権者に安心してもらうための対策を必要とするような資本不足に陥る恐れがある。
RBSでは、資本の規模を示す、有形資産である株式(優先株と無形資産を除く)が6月末時点で、同社の資産額1兆7000億ポンドの約1.5%相当だった。
JPモルガン・チェース(NYSE:JPM)では、この割合は約3.6%。RBSがこの水準に達するには、英政府の資本注入総額の6割を超える300億ポンド超の資本増強が必要かもしれない。
自己資本が十分かどうかを見極めることは、英銀株に投資するかどうかを判断するために重要だ。優先株による英政府の資本注入は、普通株の価値をなくしてしまうわけではないが、既存の株主に打撃を与えると考えられる。ただ、資本注入によって生き残る保証が得られれば、買い場になる可能性がある。
だが、政府による資本注入が不十分な場合、株価の底は見えなくなる。(10月8日付のHeard On The Streetより)
ピンバック: 翻訳blog