日本でも公的資金投入を準備中?!

公的資金の資本注入はアメリカだけの問題ではない。日本でも、地銀などを対象に、万が一の事態に備えてあらかじめ公的資金の注入ができるようにしようと、政府・与党が検討を開始している。

地域金融機関への公的資金注入、法整備検討 政府・与党(朝日新聞)

この点で、注目されるのは、今日の「しんぶん赤旗」に載っていた日本共産党の志位委員長のインタビュー。最後のところで、「公的資金投入をどう考えるか」と問われた志位委員長が、「本当に金融の“システミックリスク”があるんだったら、日銀が貸し付けることはあってもいい」と発言している。

問題は、公的資金投入をするかしないかではなくて、公的資金を投入しっぱなしにして税金で穴埋めしてすませてしまうか、それとも、銀行自身があとで返済するとか、あるいは銀行や株で大儲けした大企業、大資産家の特別の税負担で賄うとか、国民の負担増にならないやり方をとるかだ。恐慌状態になった場合には、公的資金投入というのは、金融システムを保障する政府の責任でもある。

派遣労働、民主党の国会対応、金融危機と景気対策について/CS放送「各党はいま」 志位委員長が語る(しんぶん赤旗)

公的資金投入をどう考える

 早野 アメリカでは公的資金を投入することにしたのですが、市民には不満がある。こういう金融危機の時に公的資金を投入すべきなのかどうか。

 志位 アメリカでどう対応すべきかは、現在進行形でアメリカで起こっている事態ですから、私が踏み込んで発言するのはなかなか難しい面があります。しかし、米国民のなかからも、批判が強いのは事実です。問題になっているAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)にしてもこれまでぬれ手で粟(あわ)の大もうけをしてきた企業ですから、「どうして税金で救うんだ」という批判は当然です。
 こういう事態になると、「公的資金の投入は当然だ」「日本でもためらわずおこなえ」という議論がはんらんするんだけれども、これまではアメリカにも節度はあって、1980年代後半から90年代初めにかけて商業銀行の倒産があいついだ時も基本的に公的資金を入れないで、一時的に(連邦資金調達銀行から)貸し付けはやったけれども、銀行側はそれを全額返すということをやった。だから、短期の資金がなくなった時には貸し付けることはあってもいいと思う。しかし、税金を全部くれてやるというやり方を無制限に始めたら資本主義のモラルは土台からいよいよなくなってしまうことになります。
 私たちは1998年の(日本での)金融危機に際しても、本当に金融の“システミックリスク”があるんだったら、日銀が貸し付けることはあってもいいと言いました。しかし、公的資金を入れて返ってこなくてもいいというやり方をしたらモラルハザード(倫理の欠如)になって国民にたいへんな被害が及ぶ。絶対にそれはだめだと言いました。日本ではそういう対応をすべきだと思います。(「しんぶん赤旗」2008年10月11日付)

志位委員長が指摘しているように、問題は、大企業・大銀行が国民、庶民に犠牲を押しつける形でこの危機を乗り越えるのに手を貸すのか、それとも、そうしたやり方を押さえて、国民の暮らしや営業を守ることでこの危機を乗り越えてゆくのか、だ。

 世界規模で金融危機が起こり、それが実体経済にも悪い影響を与え、日本にも及んでくる。その時に、国民、庶民に犠牲を負わせるような対応をするのか、それとも国民、庶民の暮らしを守るという対応をするのか、ここで分かれてくると思うんです。
 こういう状況になると、大手の企業、たとえばトヨタにしても、北米向けの車をつくっているところは減産に入っています。減産になったらまず派遣労働者、期間社員を切ってくる。労働者が「使い捨て」にされる。そういう事態を許していいのか。
 あるいは、中小企業に単価切り下げをうんと求めてくる。それから、大手銀行は、あれだけもうけていながら、中小企業への貸し渋り、貸しはがしをどんどん始めようとします。これはすでに始まっていますが、これを許していいのか。
 たとえばトヨタはバブル時の2.2倍のもうけをあげて、14兆円もの資産をためこんでいます。大企業に、ためこんだ利益をはきださせて、社会的責任を果たさせる。すなわち雇用の責任、中小企業への責任、社会保障や税金の面でも責任をちゃんと果たさせるという形で国民の生活を守っていく。
 そして、政治の責任としては、国民への犠牲転嫁を許さず、国民生活擁護最優先の政策をとる必要があります。「働く貧困層」をなくす対策をちゃんととる。人間らしい労働のルールをつくる。社会保障の拡充をはかる。中小企業や農業を守る。消費税増税計画はやめ、庶民への減税をはかる。こうやって内需をずっと土台から盛り上げて、外需頼みから内需主導に、大企業から家計に軸足を移す経済政策の転換をはかる。こういうことをやるかどうかが、分かれ道なんです。
 いかに庶民の生活を守る政策をとるか。この政治のかじ取りが、非常に厳しく問われていると思います。(「しんぶん赤旗」2008年10月11日付)

地域金融機関への公的資金注入、法整備検討 政府・与党

[asahi.com 2008年10月10日19時38分]

 政府・与党は10日、地方銀行など地域金融機関に公的資金を予防的に資本注入するための法律を検討し始めた。世界的な金融危機が日本経済に悪影響を与え、地方経済の停滞を通じて金融機関の経営を悪化させる恐れが強いため。今年3月末で期限が切れた金融機能強化法の復活を軸に検討が進む見通しだ。
 金融機関への公的資金注入では、預金保険法に基づく仕組みがある。ただ「国または地域の信用秩序の維持にきわめて重大な支障が生じる恐れがある場合」など大規模な金融危機時しか認められない。この仕組みに基づく注入はりそな銀行の一例だけだ。
 信用金庫や信用組合には業界の中央機関による独自の資本注入制度があるが、今後注入が急増すれば支援しきれなくなる恐れもある。
 このため、地銀や信金、信組に公的資金を注入する金融機能強化法の復活案が浮上している。同法は04年に導入され、今年3月末で期限が切れた。
 中川財務相兼金融相は訪問先の米ワシントンで9日夜(現地時間)、「地方の金融機関のバックアップをより強化する方法として、金融機能強化法について検討するよう指示した」と述べた。河村官房長官も10日の定例記者会見で前向きな姿勢を示した。
 与野党内でも強化法の復活を求める声が強まっている。自民党では国際危機対応プロジェクトチームが前向きで、「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」も緊急提言で提案した。民主党の金融危機対策チームも、10日にまとめた対応策の柱として2年間の時限措置での強化法復活を盛り込んだ。
 金融機能強化法は2兆円の枠を用意したが、注入は2件で計400億円にとどまった。経営責任の追及など厳しい条件が敬遠されたためで、今後の課題となりそうだ。(日浦統)

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