G8が緊急声明を発表。IMFやWTOの路線をまもるとしているのはいただけないが、「現下の危機によって明らかになった欠陥を改善するため、世界の金融セクターについて、規制的および制度的レジームへの変更が必要である」と指摘している点は、そのとおり。「規制緩和」「市場開放」一辺倒のウルトラ自由市場主義の破綻は、G8のお墨付きになったといえる。
「日経新聞」の記事によれば、緊急声明は日本が主導したそうな。しかし、麻生首相は、昨日はG8緊急サミットについて「やっても混乱」と消極的だったはず…。むしろ、サルコジ仏大統領の方が積極的なように思える。
新興国含めた首脳会合を期待 G8緊急声明(朝日新聞)
G8首脳が緊急声明、金融危機解決へ決意示す(NIKKEI NET)
麻生首相、緊急サミットに慎重=「やっても混乱」?参院予算委(時事通信)
仏大統領:G8緊急首脳会議で米大統領と事前協議へ(毎日新聞)
G8緊急声明はこれ↓。「日経新聞」2008年10月16日付夕刊によるが、これって全文なの? ←外務省ホームページに仮訳全文が載っていますが、それと同じでした。
G8緊急声明
lMFに重要な役割期待/金融制度変更へ首脳会議
我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、英国および米国の首脳並びに欧州委員会委員長は、現下の危機を解決し、金融機関を強化し、金融システムへの信頼を回復し、我々の市民とビジネスに健全な経済的基盤を提供すべく、共通の責任を果たすとのコミットメントで一致団結している。
我々は、財務相、中央銀行総裁により採択され国際通貨金融委員会によって支持された個別のあるいは共同の行動についての協調的な枠組みを明示したG7行動計画の実施を支持して実行された最近の決定および行動を歓迎し、称賛する。これらの措置は金融機関が必要としている資本へのアクセスを獲得し、システム上の重要性を有する金融機関を支援し、その破綻を避けるとともに、信用市場の機能を回復しモーゲージの流通市場を再開し、預貯金者を保護することに資する。我々は緊急に透明性をもって、かつ無差別的な形でこれらの措置を実施する。我々は緊密な協力と調整を誓約する。
現下の危機に対処する中で、我々は新興経済国および発展途上国に対するこの危機の悪影響を和らげるよう努め、影響を受ける国々を支援する上で国際通貨基金(IMF)が果たす決定的に重要な役割を強く支持する。我々は開放経済と適切に規制された市場が経済成長、雇用および繁栄に不可欠であることを再確認する。したがって我々は内向きにならないことおよび過去数十年にわたり世界的な生活水準を大きく浮揚させ何百万もの人々を貧困から救い出してきた貿易と投資の自由化を促進する努力の継続の重要性を強調する。この観点から、我々は野心的でバランスのとれた結果とともに世界貿易機関(WTO)交渉が成功裏に妥結することをもたらすための努力を強化する決意である。
我々の現下の焦点は市場の安定化および信頼回復という喫緊の責務にあるが、現下の危機によって明らかになった欠陥を改善するため、世界の金融セクターについて、規制的および制度的レジームへの変更が必要である。これらの変更を具体化する議論は金融安定化フォーラムやIMFの作業を踏まえつつ行われるが、これには先進国および発展途上国の双方が関与する必要がある。我々は21世紀の課題の克服を目的とする改革のためのアジェンダを採択するため、近い将来の適切な時期に、カギとなる国々との首脳会議が行われることを期待している。
我々は、我々が協働することで、現下の課題を克服し、我々の経済が安定と繁栄を取り戻すことを確信している。
新興国含めた首脳会合を期待 G8緊急声明
[asahi.com 2008年10月16日12時4分]
麻生首相、ブッシュ米大統領、サルコジ仏大統領ら主要8カ国(G8)首脳は16日未明、世界経済に関する緊急声明を発表した。「金融機関を強化し、金融システムへの信頼を回復し、共通の責任を果たす」との考えで一致し、金融危機の回避に向けた国際協調を確認。新興市場国などの首脳を交えた会合を近く開くことにも期待を示した。
米国発の金融危機は欧米から新興国へも広がっており、危機封じ込めに向けて世界的な協調態勢を強め、世界同時不況の回避をめざす考えが強まったことが、異例の声明につながったとみられる。
今回の金融危機をめぐっては、主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が公的資金の注入を柱とした行動計画をまとめたことで欧米などの金融不安は一時的に沈静化。ただ、その後、ニューヨークの株式市場の株価が9000ドル割れするなど不安材料も多く、改めて協調態勢をとることが必要との考えが広がった。
声明でG8首脳は「現下の危機によって明らかになった欠陥を改善するため、世界の金融セクターについて、規制的及び、制度的レジームへの変更が必要である」と表明。金融危機に対応するため一定の規制強化が必要との認識で一致した。
また、声明は「近い将来の適切な時期にカギとなる国々との首脳会議が行われることを期待している」とした。G8首脳らとの会合について、麻生首相は当初、積極姿勢を示したが、日程調整が難航したことに加え、金融情勢の見極めが必要との判断から慎重姿勢に転じた。しかし、欧州各国が開催に前向きで、米国も受け入れる姿勢を示しており、声明に盛り込まれた。
一方で声明は、欧米の信用収縮や景気減速で新興国への資金流入の減少などを懸念。IMFを通じた資金面などの積極的な支援を改めて強調した。ただ、「WTO(世界貿易機関)交渉が成功裏に妥結するための努力を強化する決意である」として自由貿易体制を堅持することも明記した。
G8首脳が緊急声明、金融危機解決へ決意示す
[NIKKEI NET 2008/10/16 11:32]
日米欧ロの主要8カ国(G8)の首脳は16日未明、世界経済について「現下の危機を解決し、金融システムへの信頼を回復するための共通の責任を果たす」との緊急声明を発表した。先にワシントンで開いた日米欧の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でまとめた行動計画を支持。米国発の金融危機の拡大や世界経済への悪影響を防ぐため、G8が協調して対応する姿勢を打ち出し、緊急首脳会合の早期実現を求めるとともに、新興国の参加も求めた。
緊急声明は日本時間の午前1時40分過ぎに、各国が同時発表した。G8首脳による緊急共同声明は極めて異例。G8議長国として声明の取りまとめを主導した日本の外務省は「現下の未曽有の金融不安の解決に向けたG8首脳としての決意表明」だと説明している。
こんなこと↓を発言していた人物に、新興国を含めた、「21世紀の課題の克服を目的とする改革のためのアジェンダを採択するため」の首脳会議を考えることが出来るんだろうか?
麻生首相、緊急サミットに慎重=「やっても混乱」?参院予算委
[時事通信 2008/10/15-19:41]
麻生太郎首相は15日午後の参院予算委員会で、金融危機対応を協議する主要8カ国(G8)緊急首脳会議(サミット)の開催について「少なくとも資本注入をもっとやるというような覚悟を決めない限り、やっても混乱が広まりかねない」と述べ、議長国として開催を呼び掛けることに慎重な考えを示した。公明党の山口那津男政調会長への答弁。首相は東京株式市場が暴落した10日に「必要があれば主催する用意がある」と述べていた。
首相は、現在の株価動向について「きのうは史上空前に上がり、きょうは下がると思ったが、上がっている。一応、底を打ったかに見えないわけではない」と指摘。その上で、引き続き株価の推移を注視していく考えを示した。米国発の金融危機の広がりを踏まえ、こうしたテーマをめぐる民主党の小沢一郎代表との党首討論について「心から望んでいる」と述べた。公明党の松あきら氏に対する答弁。
一方、海上自衛隊第1術科学校で3等海曹が格闘訓練中に頭を打ち、約2週間後に死亡した問題について、首相は『残念なことだ。再発防止に努める』と強調。浜田靖一防衛相は「いろんな状況を勘案すると、事故とは思えない。少し(訓練を)逸脱した部分があったのではないか」との認識を示した。社民党の福島瑞穂党首への答弁。(了)
むしろ、EU議長国として積極的に行動しているサルコジ仏大統領の方が、「21世紀の課題の克服を目的とする改革のためのアジェンダを採択するため」の首脳会議を積極的にすすめてゆくのではないだろうか。
仏大統領:G8緊急首脳会議で米大統領と事前協議へ
[毎日新聞 2008年10月16日 21時42分]
【ロンドン藤好陽太郎】仏大統領府は16日、サルコジ大統領と欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長がワシントン郊外のキャンプデービッド山荘を18日に訪れ、ブッシュ米大統領と会談すると発表した。金融危機対応策を討議する主要8カ国(G8)緊急首脳会議について事前協議する見通し。
フランスはEU議長国。金融危機が欧州で深化する中、サルコジ大統領は4カ国首脳会議やユーロ圏首脳会議を相次いで開き、金融機関への資本注入など欧州の共通対応策を決めるとともに、緊急サミットの必要性を強調していた。
キャンプデービッド到着後、両大統領とバローゾ委員長は共同声明を発表する。
【追記】
外務省のホームページに、英語の正文と日本語(仮訳)とが出ていました。
これをみると、緊急声明の日付は10/15。ということは、麻生首相は、同じ日に、一方で、新興国も含む首脳会議を期待すると声明しながら、国会では「やっても混乱」などと答えていたことになる。ますます奇っ怪。