岩波現代文庫の10月新刊で、松井孝典氏の『新版 地球進化論』(左)が出ていたので、さっそく買って読んでみました。もともと1988年に出た本ですが、それに「その後の進展が著しい部分」が書き足してあります。だから、1970年代に天文ファンだった僕にしてみると、自分が勉強したときからどんなふうに研究がすすんだかが分かって面白かったのですが、「1988年7月、旧ソ連は火星の衛星フォボスに探査機を飛ばし、それを探査する『フォボス計画』を予定している」という文章が出てきたりして、頭が錯乱しそうになります。(^_^;)
しかし、塵を含んだガスからどうやって惑星が形成されるのか、その説明が全然分かりませんでした。それで、買ってきたのが右の井田茂氏の『異形の惑星』(NHKブックス、2003年刊)。
松井さんの本を読むと、惑星の形成過程は次のように説明されています。
太陽系ができたときに、ダスト(塵)を含んだガスが赤道面に集まってきて、密度が大きくなってくる。「ある臨界値を超える」と、「突然重力的に不安定」になって、せいぜい1?10mぐらいまでしか成長できなかったものが、突然10kmぐらいまで成長する(これが「微惑星」)。――ここまでは、理屈は分からないものの、まだいちおう説明らしいものがなされていますが、問題はその次。
この微惑星が、衝突をくり返して、いつしか惑星が形成される、というのですが、そのメカニズムが全然説明なし。ただ、シミュレーションをくり返すと、そうなる、という説明だけ。
「シミュレーションしたら、そうなった」と言われても…、よ?分かりまへん。岩の固まりと岩の固まりがぶつかったら、ぶっ壊れそうな気がするし。だから、にわかには納得しがたいものがあります。
そこで、読んでみた『異形の惑星』ですが、こちらでは、それが塵を含んだガス→微惑星(1?10km)→原始惑星(地球型惑星の領域では、地球の10分の1=火星程度。木星・土星領域では、地球の数倍程度)→惑星、と途中にもう1段階増やして説明されています。
しかし、やっぱり分からないのは、微惑星から原始惑星への成長過程。微惑星は衝突・合体をくり返して、「暴走成長」というカタストロフィックな過程をへて、原始惑星ができ上がるというのです。微惑星どうしの場合は、速度の差もそれほど大きくなく、したがって衝突しても、あまり速いスピードでは衝突しないから合体する、というのですが…う〜ん。
太陽の回りをまわる複数の天体が重力的にどうふるまうか、というのは、いわゆる3体問題。したがって、一般解はない、ということですが、だからって、シミュレーションしたらこうなりましたでは…。
まあ、中心星から0.045天文単位のところを、木星の重量の0.69倍のガス惑星が3.5日の周期で公転している、というのは面白いけど、しかし、地球型の惑星はどうやってできるんだろう?
【書誌情報】
- 著者:松井孝典/書名:新版 地球進化論/出版社:岩波書店(岩波現代文庫 学術203)/刊行年:2008年10月/定価:本体900円+税/ISBN978-4-00-600203-9
- 著者:井田 茂/書名:異形の惑星――系外惑星形成理論から/出版社:日本放送出版協会(NHKブックス966)/刊行年:2003年/定価:本体1,070円+税/ISBN978-4-14-001966-5