『GQ JAPAN』などというメンズ・ファッション誌を買ってきた理由は、これ↑。
「名著再読。」という特集の1つとして、小林多喜二『蟹工船』ブームについて、志位和夫委員長にインタビューをしています。
小林多喜二『蟹工船』ブームをどう見る?
志位委員長が語る“不安定”のあとさき。[GQ JAPAN 2008年12月号]
日本共産党員だった小林多喜二は、権力に立ち向かい、29歳で特高警察の拷問により死亡した。今、その“後輩”が多喜二の世界をふり返る。
今年に入って異例のベストセラーとなっている、小林多喜二の『蟹工船』。なぜ今、戦前の過酷な労働現場を描いた小説がこれほど読まれているのか。共産党員だった多喜二の“後輩”であり、労働問題に詳しい日本共産党委員長の志位和夫さんに聞きに行った。
「この本で描かれたような奴隷的な労働が、現代において新しい残酷さで復活しているからでしょう。『蟹工船』では、周旋屋と呼ばれる人々が、各地の労働者や農民を集めて蟹工船に押し込める場面がありますが、これは今で言うなら派遣会社です。物のように使い捨てられる実態、調停賃金でいつ仕事がなくなるかわからない不安定さ。『蟹工船』を読んだ若者から“私の兄弟がここにいる”という感想も届いています」
『蟹工船』が読まれる理由として、志位さんはさらに、多喜二の社会科学的な志向を挙げる。
「この本はただ労働者の悲惨さを描いているわけではありません。多喜二は、奴隷労働の背後にある社会関係を、読者に“透き通るような鮮明さ”でわかるように書きたい、と言っている。社会関係とは、財閥、帝国軍隊、国際関係、労働者間の関係です。多喜二は奴隷労働の根源にある問題を描き出そうとしました」
志位さん自身は、『蟹工船』を学生時代に読んだという。
「当時は今のように不安定雇用が問題化していませんでしたから、1つの歴史的な物語として読んだと記憶しています。しかし、1995年に不安定雇用への置き換えを打ち出した日経連の方針を出発点に、労働環境は大きく変わりました。99年には派遣労働が原則自由化、2004年にはそれが製造業まで解禁された。『蟹工船』の当時と同様に、根っこにあるのは政治の問題です。多喜二はそうした問題を先駆的に解き明かした作家であり、党の活動も、多喜二をはじめとする先輩たちに支えられていると常に感じていますね」
志位さんはそう言うと、ちょっぴり誇らしげに胸を張った。
ちなみに、「名著再読。」を特集した理由を、同誌は次のように書いています。
いよいよ先が見えなくなってきました。明日を見通す指針も、共有すべきルールやモラルもあってなきがごとし。いったい何をよりどころにしてサバイブしましょうか。頼りになるのは遠い過去から営々と蓄積されてきた人間の知恵です。そこには、私たちと同じように、政治や宗教や仕事や家族や異性に翻弄されて七転八倒する「人」の姿があるはずです。名著を読むことは、「答え」を求めることではありません。あなたとお案じ悩み、同じ喜びを共有する「友」と出会うことなのです。
そういう「友」の1つとして、小林多喜二と『蟹工船』とが選ばれ、それを考えるために志位委員長にインタビューしたというのは、なかなか大したものだと思います。