解散はいつ? 現在の局面をどう考えるべきか

麻生首相は解散・総選挙を「当面見送った」とメディアでは報じられていますが、はたして「当面」ってどれぐらいなんでしょう?

昨日は、同じことをNHKの記者が質問して、首相に「当面という言葉のNHKの定義が分からない」とはぐらかされていましたが、ともかく、昨日の記者会見では、麻生首相は「解散を見送った」という言葉を一言も発しなかった――この点を見逃すべきではないと思います。その意味では、公明党の太田代表が語っていたように、「30日あるいは31日の解散はない」というのが、一番厳密な解釈でしょう。

しかし、現下の経済危機に「解散よりも景気対策を」という世論も、まったくもってごもっとも。確かに、「北海道新聞」社説が指摘するように、3代にわたって国民の審判をへない内閣が続くというのは道理のないことで、解散先送りは明らかに「逃げ」です。とはいえ、「3代も国民の審判を受けていないのだから、ただちに解散すべし」というだけでは、景気不安の前には迫力不足をいなめません。

それでは、いまの局面をどう考え、何を訴えたらよいのでしょうか?

首相、解散は当面せず 公明も了承(NIKKEI NET)
社説:麻生首相 それでも解散を求める(北海道新聞)
麻生首相:解散戦略コロコロ 与党翻弄の揚げ句、先送り(毎日新聞)

いま一番問われるべきは、麻生首相がやろうとしている「第2次追加景気対策」が本当に国民の暮らしを助ける景気対策なのかどうか、という問題です。今回の経済混乱の一番の理由は、小泉内閣以来の「構造改革」路線で、日本経済が外需・輸出頼みの経済になってしまったことです。だから、やっぱりそこに手をつける対策でなければ、本当の景気回復につながらないことは明らかです。

しかし、麻生内閣の第2次景気対策は、従来からの「構造改革」路線をさらに強める、それに公共投資や2兆円のバラマキ減税などをプラスして景気浮揚をはかろうという小手先の対策でしかありません。株価にしても、外資を呼び込んで株価をつり上げてきたけれども、それは、今回の騒ぎで簡単に吹き飛んでしまうような「バブル」でしかなかったのです。ですから、それをさらに拡大するような株価てこ入れ策では効果がないのは明白です。

そんなこんなで、いまこそ「従来型、大企業・大銀行、大資産家優遇の景気対策では、国民の暮らしはよくならない。こんな従来型の景気対策しかできない麻生内閣は退陣せよ」と真正面から堂々と論戦をいどむのが筋でしょう。先週?今週にかけて、共産党の志位和夫委員長や小池晃政策委員長の街頭演説を取材したけれども、演説が始まると、けっこうたくさん人の足が止まっています。「いまの景気や政治を、共産党はどうしようというのか。ひとつ聞いてみよう」という気持ちが広がっていると思います。だからこそ、「いよいよ解散・総選挙です」式の演説ではなく、「いまの日本の政治や経済、本当にこれでいいんでしょうか?」と真正面からじっくり訴えかけるべき局面になったのではないでしょうか。

志位和夫委員長の街頭演説(10月25日、上大岡駅)
志位和夫委員長の街頭演説(10月25日、上大岡駅)
小池晃政策委員長の街頭演説(10月28日、船橋駅南口)
小池晃政策委員長の街頭演説(10月28日、船橋駅南口)

首相、解散は当面せず 公明も了承

[NIKKEI NET 2008年10月30日 22:09]

 麻生太郎首相は30日夕、首相官邸で公明党の太田昭宏代表と会談し、当面は経済対策に全力を挙げ、衆院解散・総選挙をしない方針を示した。会談後、太田代表は記者団に「了解したといえば、了解したということだ。30日あるいは31日の解散はない」と述べ、首相方針を了承したことを明かした。
 首相は30日の記者会見で「政局よりは政策。何より景気対策という世論の声が圧倒的に多い。政策を実現して国民の不安に応えるのが優先順位としては1番だ」と指摘。早期解散を求める公明党との関係に関しては「十分な意思疎通ができた。連立関係がおかしくなることはない」と強調した。解散の時期については「しかるべき時期に私が決めたい」と語った。

社説:麻生首相 それでも解散を求める

[北海道新聞 2008年10月31日]

 11月末の投開票が想定されていた総選挙日程が先送りされた。
 麻生太郎首相は、金融危機に対処する追加経済対策を発表したきのうの記者会見で「国民の生活不安に応えていくのが優先順位の一番」と強調した。
 確かに各種世論調査で景気対策を優先してほしいという声が増えている。金融危機は地球規模に拡大し、世界恐慌の再来まで懸念する声もある。日本経済への影響が深刻さを増すのはこれからだ。
 こういう歴史的な局面だからこそ国民の支持を背景に政策を実行していく政権が必要だ。そのためには早期に総選挙を実施し、各党が公約を掲げて民意を問わねばならない。
 すでに3代の政権が国民の審判を受けずに誕生した。異常な事態と言わざるを得ない。
 ところが、首相は会見で「正統性の問題はない」と言い切った。
 首相はよもや忘れていまいか。
 現在の衆院議席は小泉純一郎元首相による2005年の「郵政選挙」でもたらされたものだ。有権者は麻生政権にまで白紙委任状を与えたわけではない。
 驚いたことに、首相は「3年後の消費税率引き上げ」にまで踏み込んだ。増税は国民すべてにかかわる政策テーマである。
 正面から政権公約に据えて、選挙に臨むのが筋というものだ。
 それをしないで、経済危機を理由に政権維持を図ろうとするのは許されない。(以下略)

まあ、どこまで裏が取れているのか分かりませんが、「毎日新聞」の書いたあたりが真実ではないでしょうか? 当面、第2次補正予算に民主党が道理のない反対をすれば、それを理由に解散・総選挙に打って出る大義名分ができます。

麻生首相:解散戦略コロコロ 与党翻弄の揚げ句、先送り

[毎日新聞 2008年10月31日 東京朝刊]

 麻生太郎首相が30日の記者会見で、衆院解散・総選挙の年内見送りを表明したのは、内閣支持率の伸び悩みや世界的な金融危機などの要因が重なったためだ。与党から「選挙の顔」として期待され、9月の就任以来、「今国会冒頭解散」「追加経済対策発表後」と解散時期を探ってきた首相だが、与党を翻弄(ほんろう)したあげくの解散先送りは首相の求心力低下につながる可能性もある。
 「公明党の方々と綿密な意見交換をさせていただき、十分な意思の疎通が図られたと思っている」。首相は30日の記者会見でこう強調したが、首相の戦略転換で連立与党の公明党も右往左往した。
 首相は当初、自民党総裁選で世論を盛り上げ、国会冒頭で民意を問う――戦略を取っており、11月2日投開票を念頭に置いていた
 しかし、内閣発足直後の世論調査で内閣支持率は低迷。自民党が9月下旬に行った次期衆院選の情勢調査も、与野党が拮抗(きっこう)する厳しい数字が出た。首相は「もう少し長く選挙運動をやれば自民党は伸びる」と先送りを決断。10月1日には記者団にも「解散というよりは、景気対策にもっと関心を持つべきだというのが世論だ」と先送りをにじませた。
 その後、経済情勢の悪化を受け、首相は早期とも言える11月30日投開票に傾いていく。このころ、首相は麻生派議員に「経済状況の悪化は自民党に有利に働く。乱世こそ自分が求められている」と語った。勝機と判断した首相は追加経済対策のとりまとめを与党に指示。新テロ対策特別措置法改正案などが成立する見通しの月末に照準を合わせ、解散に打って出る戦略に切り替えた。13日、自公両党幹部にも「11月30日投開票」の方針を伝えた。
 だが、首相はさらに判断を変える。補正予算成立後の16日夜、首相は都内のホテルで菅義偉選対副委員長らと会談、菅氏から「今やればダメだ。負ける」と見送りを進言された。首相は17日に見送りを決断したが、早期解散で動いていた自民党の細田博之幹事長らには見送りの方針を伝えた上で「早期解散の言い方は変えるな」と指示した。解散をちらつかせ民主党に法案審議に協力させる戦略だった。【西田進一郎】

実は、日本経団連がこんなことをいっている。これに逆らって、年内解散を強行するのは難しい?

解散は来年度予算編成後に=経団連会長(時事通信)
記者会見における御手洗会長発言要旨 2008-10-27 (日本経団連)

解散は来年度予算編成後に=経団連会長

[時事通信 2008/10/27-18:42]

 日本経団連の御手洗冨士夫会長は27日の記者会見で、衆院解散・総選挙の時期について、「追加経済対策を明確にして、来年度予算の編成もきちっとやって一段落してからやってほしい」と述べ、改めて早期解散にクギを刺した。御手洗会長は「経済は危機的な状況にあり、まずは足元の景気を安定させ、世界の金融状況を落ち着かせることが喫緊の課題だ」と指摘し、「解散して政治に空白期間を設けることは考えられない」と訴えた。(了)

記者会見における御手洗会長発言要旨

2008年10月27日 (社)日本経済団体連合会

【足下の経済情勢について】
 急激な為替変動は、企業活動に悪影響を及ぼすため好ましくない。また、現在の株価水準は、経済のファンダメンタルズに鑑みれば、行き過ぎの感を否めない。日本政府は迅速に補正予算を成立させ、必要な金融安定化策の検討を進めている。迅速かつタイムリーな対応を評価する。
 日本経済を早急に立て直すために、以下の施策を追加経済対策に盛り込み、出来るものから、可能な限り早く実行に移していただきたい。

  1. 中低所得層や子育て世帯を対象とした所得税減税
  2. 自己資金による住宅投資減税の創設、住宅ローン減税の拡充・延長
  3. 省エネ、研究開発などに関する投資促進税制の拡充
  4. 証券税制の優遇措置の延長
  5. 海外子会社からの受取配当金の非課税制度の創設
  6. 中小企業の資金繰り対策

 このような厳しい経済情勢にあることから、政治空白は許されない。財政健全化路線の堅持は当然であるが、非常時であることから、財源の手当てについては、一時的、弾力的な対応をすべきである。

【時価会計基準について】
 時価会計の見直しは検討に値する。見直す際は、欧米との連携を図りながら対応していくべきである。

【為替介入について】
 急激な円高に対応するため、為替介入はあって然るべきタイミングだが、一方で、円以外の通貨に対しては相対的にドル高も進行しており、日米欧による協調介入は難しいだろう。日本単独での介入は効果に疑問がある。

以  上

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