日本共産党が「景気悪化から国民生活を守る緊急経済提言」を発表。
読んでみて、なるほどと思ったのは、現在の事態について、アメリカから始まった世界的な金融危機と、そのもとで起こっている日本の景気悪化の問題とに分けてとらえていること。
景気悪化から国民生活を守る日本共産党の緊急経済提言/2008年11月11日 日本共産党
もちろん関連はあるのだけれど、この2つを区別して、アメリカ発の金融危機を理由として日本の大企業・大銀行が競い合って大規模な「首切り・雇い止め」、「貸し渋り・貸しはがし」をやっていることにたいして、「カジノ資本主義」の破綻のツケを国民におしつけるな! 政治は国民の雇用・営業・暮らしを守るためにあらゆる手段をつかって責任を果たせと主張している。
アメリカ発の金融危機を解決しよう、などというのは、日本一国でできる訳もないし、これだけデカイ金融バブルの崩壊の影響から世界経済を立て直す方法なんて、そんな簡単に見つかるはずもない。しかし、金融危機を理由として、そのツケを国民・労働者に押しつけるのにたいして、「そんなことは許さない!」と声を上げることは十分可能。そこが、この経済提言の眼目だろう。
だから、経済提言では、第1の柱として、政治に求められる緊急政策として、<1>大失業の危険から国民を守る、<2>大倒産の危険から中小零細企業を守る、という要求がかかげられている。
続いて、第2の柱として、内需主導へ日本経済の抜本的な体質改善を求めているが、これは、緊急対策よりももう少し長い期間を前提にしたものだろう。<1>安定した雇用を保証する課題、<2>社会保障を充実させ、国民が安心して暮らせるようにする課題、<3>農林漁業、中小企業を応援して地域経済を活性化させる課題、をあげ、<4>消費税増税に反対して、<5>無駄な大型開発、米軍への「思いやり予算」(2500億円)の廃止など、5兆円の軍事費にもメスを入れること、大企業・大資産家への行き過ぎた減税(年間ベースで7兆円にのぼる)を10年前の水準に戻すことなど、財源対策を示している。
第3の柱として、世界的な投機の問題について2つの方向から問題を提起している。1つは、過度の投機を規制するルールを国際的につくってゆく課題。これは、立場は違っても、14,15日に開かれるG8、G20などでも議論されるはずの問題。ヘッジファンドなどへの規制、原油や穀物市場での投機規制、短期的な資本移動にたいする適切な課税(いわゆるトービン税)、IMFや世銀、BISなどの規制・監督体制の見直し、などを提起している。これらは国際的な協力によって進めるべき課題だろう。
2つ目に、アメリカを手本にして、「小泉改革」などの形で進められてきたこの間の金融自由化路線を転換する課題。こちらは、日本が単独でもおこなえる課題だ。日本の金融自由化路線が異常であることは、こんどの金融危機で、日本の金融市場の方が、アメリカやヨーロッパよりも激しく乱高下していることにあらわれている。「機動的な資本調達が可能になる」という名目で、金融自由化が進められてきたが、それは同時に、逃げ足の速い資本に身を任せる路線でもあった。日本経済新聞などを読むと、「日本の株価は下がりすぎだ」ということが繰り返し強調されているが、そういう経済実態とかけ離れた資本に日本の金融市場を席捲させてきたのが、これまでの金融政策だった。それを転換させることがいま必要なのだ。
短期的な資金調達に頼って、企業そのものまでM&Aで売買しながら、「株主還元」と称して高配当をおこなう、経営者自身もそうした短期的な業績によって高額報酬を得る、そんなアメリカ型の経済モデルが破綻したことを明確にして、より長期的な視野にたって安定的な経営をおこなえるように、日本国内の経済環境を整備すべきだろう。
当面する緊急対策を前面に掲げつつ、このたびの金融混乱を抜け出したあとの経済モデルを展望した大きな争点を押し出すことがいま求められていると思った。