横浜方面でうろうろしている間に、何度か、共産党の「緊急経済提言」の学習会の講師を務める機会がありました。そのため、という訳ではありませんが(といいつつ、やっぱり、そのためか?)、サブプライムローン問題に始まったアメリカ発の金融危機にかんする本を何冊か読みました。そのなかで、いま何が起こっているのか、実態を理解するのに比較的役に立ったのがこの2冊です。
1冊目は、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の小林正宏氏とみずほコーポレート銀行調査部の大類雄司氏による解説本。サブプライムローンとは何か、CDO、CDS、SIV、モノライン等々、要領よく説明されています。
2冊目は、三菱UFJ証券の水野和夫氏の最新著。世界にどれぐらいの投機マネーがあるか、水野氏の推計については以前にもこのブログで紹介したことがありますが、その後のデータも含めて新しいグラフが紹介されています。
証券銀行を中心にレバレッジ(てこ)をきかして、儲けるだけ儲けるというアメリカ型「金融帝国」の終焉という立場で問題を解説し、今回の問題は新自由主義にNOをつきつけたものだと論じるなど、なるほどと思う点もあります。しかし、第6章「日本経済の生き残る道はどこか」では、大企業のグローバル化を前提にして、労働分配率が下がるのはやむを得ない、規制をしても大企業は海外へ逃げてゆくだけ、という立場から論じられており、賛成できません。
いずれも9月15日のリーマン・ブラザーズ破綻後の動きを含めて書かれているものです。理論的にはとくに見るべきものがある訳ではありませんが、実態を知る上では役に立ちました。
という訳で、「緊急経済提言」学習会のレジュメと資料です。(いずれもPDFファイルが開きます)
「緊急経済提言」学習会レジュメ(PDF、198KB)
「緊急経済提言」学習会資料(PDF、452KB)
【書誌情報】
- 著者:小林正宏(こばやし・まさひろ)、大類雄司(おおるい・ゆうじ)/書名:世界金融危機はなぜ起こったか サブプライム問題から金融資本主義の崩壊へ/出版社:東洋経済新報社/発行:2008年12月/定価:本体1600円+税/ISBN978-4-492-39505-9
- 著者:水野和夫(みずの・かずお)/書名:金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉/発行:NHK出版(生活人新書276)/発行:2008年12月/定価:本体700円+税/ISBN978-4-14-088276-4