期間従業員の契約期間中の解雇は無効である(再論)

非正規雇用の雇い止め、“派遣切り”“期間工切り”が横行しているが、労働契約法が施行されたもとで、契約期間中の解雇は厳重に制約されており、決して企業側の都合で一方的に解雇することはできない。

そのことは、今年1月に厚生労働省が出した「通知」でも明記されている。

日本は法治国家なのだから、行政は、最低限として、企業側にはこのルールを守らせてもらいたい。

労働契約法の施行について(2008年1月23日 基発第123004号) ←PDFファイル(228KB)が開きます。

まず、期間従業員の契約期間中の解雇について。

2 契約期間中の解雇(法第17条第1項関係)
(2) 内容
 イ 法第17条第1項の「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものであるが、契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められる場合よりも狭いと解されるものであること。

「解雇権濫用法理」については、このブログでも何度も紹介してきたが、次のような4つの条件を満たさない解雇は無効とする法理だ。

  1. 人員整理の必要性(どうしても整理解雇しなければならないような切迫した経営状態にあるか)
  2. 解雇回避努力義務の履行(解雇を回避するために、あらゆる努力をつくしたかどうか)
  3. 被解雇者選定の合理性(解雇の人選基準が合理的であり、その適用基準も合理的であるか)
  4. 手続の妥当性(労働者および労働組合と事前に協議を尽くすなど、合理的で相当性のある手続きを踏んでいるかどうか)

「通知」では、「雇用期間の定めのある労働契約」について、契約期間にかんしてわざわざ労使双方で合意したのだからきちんと守る必要がある、と指摘。だから、「やむを得ない」解雇だと認められる範囲は「解雇権濫用法理」よりも「狭い」、つまり、上記4つの条件よりもさらに厳しい、といっている。

さらに、労使間で「一定の事由により解雇できる」と取り決めていた場合――たとえば就業規則で「会社の都合により雇用の必要がなくなったときには、契約期間中でも解雇できる」と決めていた場合についても、次のように指摘している。

 ウ 契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合であっても、当該事由に該当することをもって法第17条第1項の「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断されるものであること。

つまり、就業規則で「会社の都合により解雇できる」と決めているからと言って、契約期間中に解雇できる訳ではない。実際に「やむを得ない事由」があるかどうかは個々のケースによって判断されなければならない、つまり、個別具体的に検討した結果、「やむを得ない事由」とは認められない場合には、就業規則に何と書いてあっても、契約期間中の解雇は認められない、ということだ。

このように、厚生労働省の「通知」によっても、期間従業員を契約期間中に解雇することは、明らかに解雇権の濫用にあたるのであり、「やむを得ない事由」があるとは認められず、したがって無効である。

※厚生労働省の「労働契約法」についての解説ページ
厚生労働省:労働契約法について

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