日頃、そうだと思っていても、なかなか言えないこと。
1つは、クリスマス・イルミネーション。昨日の「毎日新聞」夕刊で、作家の室井佑月さんが、幸せそうに見られたくてイルミネーションを見に行っているのでは? とクリスマス・イルミネーションに疑問を呈しています。
特集ワイド:言いたい! 街を覆うXマス・イルミネーション(毎日新聞)
2つ目は、香山リカさんの最新刊。
いまのご時勢、「若者が嫌いだ!!」などというと社会的なバッシングを受けそうだし、「若者の悩みに寄り添って」というのに反しているように思われそうですが、それでも、やっぱり「よくぞ言ってくれました」と思ってしまいました。
もちろん香山さんは、若者みんなが嫌いだと言っているわけではありません。香山さんが「嫌いだ!!」と言っているのはこんな若者です。
- すぐ音を上げて逃げる若者
- 居場所がない、とさまよいすぎる若者
- 「キレた」「オチた」「真っ白になった」と言えば許されると思う若者
- 大人を信頼しすぎる若者
- 大人に甘えすぎる若者
- 学力がない、知識がないのに開き直っている若者
- 自信がありすぎたり、なさすぎたりする若者
- 自分のことしか考えられない若者
- 他人に厳しすぎる若者
- 簡単に傷つきすぎる若者
僕自身、若者バッシングには反対だし、彼らが実際何に悩み、どんなふうに苦しんでいるかということを理解することはとても重要だと思っています。さらに、いまの若者が、状況に甘んぜず、声を上げ始めていることに注目もしているし、その変化に目を見張るところもあります。そういう若者も、いろいろ傷つきやすかったり、「居場所がない」と悩んだりしていたのだろうと思いますが、大事なことは、そこから一歩すすんで、みずから声をあげ、自分たちの居場所を自分たちでつくりだそうとしていることです。
だから、香山さんが「嫌い」だというような若者論は、同時に、そこから抜け出す若者たちがいるということをきちんと見なければ、一面的なものになってしまうと思います(香山さんも、おそらくそう考えているに違いありません)。
しかし、その反面で、そうした現状から抜け出せないでいる若者がいるのも事実。そうした若者たちに、みずからを省みて、一歩を踏み出してほしい。香山さんは、そんなふうに考えて、この本を書いたのではないかと思います。
それから、よく考えてみると、香山さんが嫌いだという10カ条、これって若者だけでなくて、その上の世代にも相当程度当てはまるんじゃないんでしょうか?
さすがに「居場所がない」とさまよってるオジサンたちはあまりいないかも知れませんが、会社とか家庭とか趣味とかにとりあえず「居場所」を見つけると、それ以外の世界に出ていこうとしない、プチ閉じ籠りオヤジはいくらでもいるのではないでしょうか?
学力、知識がないのに開き直っているオヤジたちはいうまでもありません。自分のことしか考えられず、他人、とくに若者に厳しすぎるオヤジたちは、枚挙にいとまがないでしょう。反省しなければなりません。(^_^;)
特集ワイド:言いたい! 街を覆うXマス・イルミネーション
[毎日新聞 2008年12月22日 東京夕刊]
街を彩るイルミネーションは駅前や商業施設の枠を超え、住宅地にまで広がっている。経済危機、雇用不安が広がる08年師走、きらめく光は人々が込める希望の表れなのか、それとも虚飾にすぎないのだろうか。【鈴木梢】
◇「私って幸せ」のアピールでは???室井佑月さん(作家)
前からずっと思っていたんですよね、イルミネーションはおかしいって。私は反対です。
カップルは、周囲の人から「すごく幸せそう」って言われたくて、イルミネーションを見に行くんじゃないのかな。そうじゃないと、自分の幸せが見えてこない。ホリエモンがアイドルと付き合い、六本木ヒルズに住んで、ポルシェに乗る、というのに似ている気がします。
幸せそうに見られたくてイルミネーションを見ることがロマンチックだと思う女性は、自分の部屋が100円ショップの品物で占められているような安い女の人、という気さえします。
ホテルもこの時期、外壁に大きなツリー型のイルミネーションをつけますよね。泊まるにも、クリスマス料金といって値段をつり上げる。でも逆に、もっと宿泊費を安くした方がいいと思う。泊まりに来ている人は、部屋から光が見えない。意味がありません。
そもそも、クリスマスってそれほど大々的にやるものなのでしょうか? 靴下一つに入るようなプレゼントがちょうどいい。消費者は、商業戦略にまんまと乗せられてしまっている感じがします。日本のバレンタインデーにしても、チョコレートメーカーとかデパートがあおっているだけでしょう。
イルミネーションをつけることで人が集まったり、消費が伸びるようなら、まだいい。でも、個人の家の庭やマンションのベランダに飾る気持ちは、よく分かりません。どんな家族なのか、一度家の中に入ってのぞいてみたいぐらい。
同じように、出窓にアンティークドールを置いている家がありますが、人形の顔が道を歩いている側を向いています。自分が好きな人形をみせびらかしたい、という感じさえします。
芸能人夫婦がよく、2人はうまくいっているとアピールしたくて、手をつないで現れるでしょう。それと一緒だと思います。アピールですね。幸せじゃないから、幸せそうに周囲に振る舞う。そのようにイルミネーションを飾る家族は、円満だということを演じようとしているように映ります。
飾り付けの電気代だけでも、月に3、4万円かかるとも聞いたことがあります。それなら、家族で高級な焼き肉店に行ったり、カニを食べたりした方が、よっぽどいいのではないでしょうか。クリスマスでも、ご飯が食べられない子どもや、困っている人は世界中にたくさんいる。そのような人たちを思い、募金をした方が世の中のためになると思います。
家を飾るイルミネーションではないけれど、街灯を青いライトにすると、犯罪を抑止する効果があるそうです。同じ光なら、地域に役立つものを増やした方が有効だと思う。
人工衛星から地球を見ると、日本列島はすごく明るくてくっきり見えるそうです。クリスマス前はさらに輝いて見えるらしい。
不況といっても、やはり日本は豊かなんですね。
【書誌情報】
著者:香山リカ(かやま・りか)/書名:私は若者が嫌いだ!/出版社:KKベストセラーズ(ベスト新書207)/発行:2008年12月/定価:本体686円+税/ISBN978-4-584-12207-5