「毎日新聞」25日付に載っていたグラフです。
いかに10月以降、日本経済が落ち込んできたかが一目で分かります。
解読エコノミー:指標が示すマイナス成長 頼みの輸出「壊滅」 雇用、消費に波及(毎日新聞)
解読エコノミー:指標が示すマイナス成長 頼みの輸出「壊滅」 雇用、消費に波及
[毎日新聞 2009年1月25日 東京朝刊]
世界的な金融・経済危機が深まり、輸出頼みの成長を続けていた日本経済が深刻な不況に突入している。日銀は22日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で09年度の経済成長率をマイナス2%と予測、戦後最悪の落ち込みになるとの厳しい認識を示した。「輸出」「生産・雇用」「消費」の最新データから、景気の急激な悪化の背景と先行きを読み解いた。
日本経済の成長の根源だった「輸出」が、世界的な金融・経済危機の直撃を受けて「壊滅的な状況」(欧州系証券)に陥っている。
財務省の貿易統計によると、昨年11、12月の輸出は2カ月連続で過去最大の減少率を記録。特に12月には、日本経済をけん引してきた半導体、デジタル家電などの電機製品や自動車の輸出が軒並み前年比半分近くに落ち込み、自動車や電機メーカーは未曽有の販売不振に追い込まれた。
日本経済は02年以降の景気拡大局面では、好調な輸出を起点に▽生産拡大▽雇用増▽個人消費下支え??との好循環を続けていた。それが、輸出の急激な腰折れで逆回転し、企業の生産・雇用削減が加速、個人消費を冷え込ませる悪循環に入り込んだ。
「極めてショッキングな内容だ」。22日に発表された昨年12月の輸出の極端な落ち込み方に、財務省幹部は先行き不安を隠せなかった。米地区連銀報告などによると、米国では消費者が新車や大型家電を買いたくても、金融危機の影響で思うようにローンが組めなくなり、販売不振で自動車ディーラーや家電量販店の破綻(はたん)が相次いでいる。
日本製品への需要も急速にしぼみ、12月の日本の対米輸出は前年同月比36.9%減と激減。米国発の金融危機は全世界に広がっており、欧州向けが41.8%減、アジア向けも36.4%減と輸出は総崩れに。「ある地域の落ち込みを世界のどこかの販売増で埋め合わせるこれまでの戦略が成り立たない」(大手自動車メーカー幹部)危機に直面している。【清水憲司】◇正社員も調整対象
国内製造業の生産活動を示す「鉱工業生産指数」は11月、前月比8.5%低下と過去最大の落ち込みとなった。12月も9.0%以上の低下とみる市場関係者が多く、生産縮小は加速する一方だ。
象徴的なのは、わずか1年前まで米国を中心とした海外での新車販売が好調で史上最高益を上げていたトヨタ自動車が09年3月期に大幅な営業赤字に陥る見込みになったこと。2?4月の国内生産も前年より4?5割減らす。トヨタのおひざ元の東海地方の経済について早川英男・日銀名古屋支店長は「ジェットコースターの下りの加速がついた局面」と指摘する。他の自動車メーカーに加え、シャープやソニーなど電機大手も軒並み液晶パネルやデジタル家電の大幅減産に追い込まれた。
自動車や電機メーカーは生産縮小に合わせて、期間従業員や派遣社員の削減を拡大している。ホンダは非正規従業員をゼロにする方針を打ち出したほか、ソニーも希望退職による正社員削減に踏み込むなど、雇用調整は正社員にも波及。11月の有効求人倍率(季節調整値)は0.76倍と、10カ月連続で前月を下回り、04年2月以来の低水準になった。工場の操業の一時停止などに伴う賃金カットも広がり、所得環境は急速に悪化している。
生産縮小傾向に歯止めを掛けるには、輸出の回復が不可欠だが、その兆しはない。クレディ・スイス証券経済調査部は「09年の鉱工業生産は前年比20%減となる可能性があり、これだけで日本の実質成長率は4?4.5%程度押し下げられる」と予想する。【平地修】◇個人の財布、ひも固く
企業の減産加速に伴う雇用・所得環境の悪化で、過去数年間、底堅く推移してきた個人消費にも底割れのシグナルが点灯している。
08年12月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比9.4%減と、稼ぎ時の12月としては過去最悪の下げ幅を記録。主力の婦人服や宝飾など高額品の販売不振のためで、販売現場は「おせちなどの季節商品を除き、良いところが見当たらない」(高島屋)と嘆く。内閣府によると、消費者心理を示す消費者態度指数(一般世帯)は12月、前月比2.2ポイント低下の26.2となり、データ比較可能な82年6月以降の最低水準を3カ月連続で更新。消費者の節約志向を裏付けた。
トヨタ関連の法人需要が激減した名古屋地区が地盤の松坂屋の12月の売上高は前年同月比13.5%減。特に、海外ブランド品は約25%も落ち込んだ。松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングの奥田務社長は「消費者の日常生活から離れた商品に(百貨店の品ぞろえが)偏り過ぎていた」と分析。売り上げ減に歯止めをかけようと、各社は衣料品を値下げするなど必死だが「一段の悪化も覚悟」(日本百貨店協会の平出昭二顧問)せざるを得ない状況は変わらない。
スーパーの昨年12月の既存店売上高も2.8%減と低迷した。外食需要が減退し、自宅での食事が増えたため、食料品の売り上げは堅調だったが、値下げセールにもかかわらず衣料品は13.2%減に。百貨店より低価格帯の商品を扱うスーパー業界も消費不振の波に洗われていることが、今回の不況の深刻さを物語っている。【小倉祥徳】◇内需に目を向けた戦略とるべきだった――BNPパリバ証券、河野龍太郎・チーフエコノミスト
米国の過剰消費がいつかは限界に達することは分かっていた。日本の製造業はもっと内需に目を向けた成長戦略を探るべきだったが、バブル的な輸出ブームに流れてしまった。04年3月まで続いた政府の多額の円売り・ドル買い介入や日銀の超低金利継続による「円安政策」も、日本経済の輸出依存体質を一層強めた。米国をはじめとした外需の落ち込みは年後半には止まるだろう。だが、バブルだった近年の輸出水準まで戻るとは考えられず、日本は国内の過剰設備・雇用の大幅な縮小を余儀なくされる。仮に08、09年度の2年間、2%のマイナス成長になれば、失業者数が100万人増加する可能性もある。
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