1月のコンサートまとめ

1月のコンサート。日フィルのラザレフ就任披露演奏会のことは書きましたが、他にもこんなコンサートに行きました。

1月20日 東京フロイデ合唱団「第9」演奏会
1月21日 藤川真弓ヴァイオリン・リサイタル
1月25日 東京フィルハーモニー交響楽団第763回オーチャード定期演奏会
1月27日 東京都交響楽団 第675回定期演奏会Bシリーズ

1月20日 東京フロイデ合唱団「第9」演奏会

 ベートーヴェン:劇音楽「アテネの廃墟」序曲 op.113
 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱」

東京フロイデ合唱団は、東京高齢協が母体となって1998年に発足したアマチュアの合唱団。2006年から「東京フロイデ合唱団」と改称して、高齢協とは独立した組織となりましたが、そうはいってもやっぱり熟年者が中心。毎年12月に「第九」の演奏会を開いていますが、今回は会場の都合で1月になったそうです。

歌の方は、アマチュアですから上手い下手を言ってみても始まらないでしょう。(^^;) しかし、正直言って、ほんとに「第九」の演奏中ずっと後ろにスタンバってて大丈夫なのかしらと思うような方もいらっしゃいますが、そういう熟年者の方々が熱唱される様子は、不思議な「感動」があります。年末恒例の「第九」ですが、1月に聴くというのも、また乙なものでした。

演奏:日本フィルハーモニー交響楽団/指揮:外山雄三/ソプラノ:佐藤ひさら/メゾ・ソプラノ:竹田弥加/テノール:小林一男/バリトン:パク・ウン・ウー/合唱指導:富沢裕/会場:東京芸術劇場大ホール/開演:1月20日(火) 午後7時?

1月21日 藤川真弓ヴァイオリン・リサイタル

 コレルリ:ヴァイオリン・ソナタ op.5 No.5
 ラモー(ハイフェッツ編曲):リゴードン
 フォーレ:アンダンテ op.75
 ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
 サン=サーンス:序奏とロンドカプリチオーソ op.28
 バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ 第1番

藤川真弓さんは、1970年にチャイコフスキー国際コンクールで第2位を獲得したベテラン?のヴァイオリニスト。

藤川真弓:悪魔のトリル ヴァイオリン名曲集(東芝EMI)

何年前か忘れてしまいましたが、たまたまCDショップで見つけた藤川さんの「悪魔のトリル」(写真上、1971年録音、CD発売は2002年、東芝EMI:TOCE-55408)を聴いて、1曲目の最初の音からいきなり引き込まれてしまいました。それ以来、チャンスがあったらナマで聴いてみたいと思ってきたのですが、ようやく念願かなって、リサイタルへ行くことができました。(^^;)

この日のプログラムのなかでは、聴いたことがあるのはサン=サーンスの曲ぐらい。それに「悪魔のトリル」に入っているような曲とは、だいぶ趣きの違う曲ばかりでしたが、それでもやっぱり、弓が弦に触れた瞬間に引き込まれる音の凄みというか、魅力は、やっぱりすごい!! ということで、たっぷり堪能させていただきました。

しかし、会場のお客さんはというと、これがほとんど「うちの子、バイオリを習ってるんざ?ますよ」的な親と、「昔、藤川先生にレッスンしてもらった」的な関係者ふうな人ばかり…。私のようなのは、ちょっと浮いていた感じでした。(^^;)

藤川真弓:ベートーヴェン&フランク ヴァイオリン・ソナタ(DENON)藤川真弓:ヴァイオリン・リサイタル(ミッテンヴァルト)藤川真弓さんのサインをいただきました(^^;)

会場で新しいCDも買った(写真左、中)し、藤川さんのサイン(同右)もしっかりいただきました。(^_^)v

ちなみに、この日ピアノを弾いていたオリヴァー・マークソン君は藤川さんの息子さんだそうです。

1月25日 東京フィルハーモニー交響楽団第763回オーチャード定期演奏会

 モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 「ジュピター」 K.551
 R・シュトラウス:「バラの騎士」組曲
 R・シュトラウス:劇楽「サロメ」より “7つのヴェールの踊り”

指揮:ペーター・シュナイダー/コンサートマスター:青木高志/会場:Bunkamuraオーチャードホール/開演:2009年1月25日 午後3時

休憩前がモーツァルトで休憩後はR・シュトラウス、しかも1曲目31分、2曲目22分、3曲目9分と、だんだん演奏時間が短くなってゆく不思議なプログラム。指揮のペーター・シュナイダーはオペラ指揮者として有名だから、後半は分かるとして、なぜ前半が「ジュピター」だったのか?

ただ当日の演奏は、全体としてこれという印象に残らなかった。

【追記】今日の新聞に音楽評が出ていた。う〜む、これってほめてんのか、すかしてんのか…。いろんなブログを眺めてみても、よかったという感想とイマイチという感想が拮抗しているような気がする。

1月27日 東京都交響楽団 第675回定期演奏会Bシリーズ

都響第675回定期演奏会(2009年1月27日)

 ケージ:バレエ音楽「四季」
 一柳慧:ヴァイオリン協奏曲「循環する風景」
 一柳慧:交響曲第2番「アンダーカレント」
 コリリアーノ:ファンタスマゴリア(歌劇「ヴェルサイユの幽霊」による) 日本初演

指揮:HKグルーバー/ヴァイオリン:山田晃子/コンサートマスター:山本友重/会場:サントリーホール/開演:2009年1月27日 午後7時

1月の都響は、別宮貞雄氏プロデュースの「日本管弦楽の名曲とその源流」シリーズ。ということで、いつもはもわもわ、ぞわぞわと演奏が始まるなり寝てしまう現代音楽でしたが、珍しく全部しっかり聴くことができました。(^^;)

1曲目は8-6-4-2-2の小ぶりな編成。「ギャマットによる作曲法」で「機能和声がもつ先へ先へと進んでいく動きが抑制される」そうです。(^^;) 確かにメロディアスな曲ではないのですが、ところどころに“シーン”を感じさせる旋律が登場して、気持ちよく聞けました。

2曲目は、ソリストに山田晃子さん登場。ヴァイオリン協奏曲とはいうものの、ソロ・ヴァイオリンが華々しく主題を弾きまくる、というところはなく、「ヴァイオリン独奏つきの交響曲」(一柳氏の言葉、プログラム・ノーツによる)ふうの作品。曲としては、シェーンベルクふうの展開があるかと思うと、ショスタコーヴィチ的な不協和音も登場して、面白い曲でした。それを山田さんがぐわしぐわしと弾いていくさまが、実に魅力的。ちなみに、山田さんはメガネをかけて演奏されておりました。オケは14-12-10-10?-8の編成。

4曲目のファンタスマゴリア(phantasmagoria)というのは、英和辞典を引くとこんなふうに書かれています(小学館「ログレッシブ英和中辞典 第3版」CD版)。

  1. 幻灯、走馬灯;(幻灯による)目の錯覚
  2. (去来する)一連の幻想[幻影]
  3. めまぐるしく移り変わる光景

実は、『資本論』にも登場します。第1章第4節「商品の物神性とその秘密」のなかです。

 したがって、商品形態の神秘性は、単に次のことにある。すなわち、商品形態は、人間にたいして、人間自身の労働の社会的性格を労働生産物そのものの対象的性格として、これらの物の社会的自然属性として反映させ、それゆえまた、総労働にたいする生産者たちの社会的関係をも、彼らの外部に存在する諸対象の社会的関係として反映させるということである。この“入れ替わり”によって、労働生産物は商品に、すなわち感性的でありながら超感性的な物、または社会的な物になる。……労働生産物の商品形態およびこの形態が自己を表わすところところの労働生産物の価値関係は、労働生産物の物理的性質およびそれから生じる物的諸関係とは絶対になんのかかわりもない。ここで人間にとって物と物との関係という幻影的形態をとるのは、人間そのものの一定の社会的関係にほかならない。だから、類例を見いだすためには、われわれは宗教的世界の夢幻郷に逃げ込まなければならない。(『資本論』新日本新書版<1>、pp.123-124)

この「幻影的形態」というところが、ドイツ語では、die phantasmagorische Form となっています。「ファンタスマゴリア的な形態」ということです。(^^;)

この曲のもとになったのは、コリリアーノが1992年につくった歌劇「ヴェルサイユの幽霊」。プログラム・ノーツの解説によれば、この歌劇は、「マリー・アントワネットをはじめとする幽霊たちが住む永遠の世界と、ボーマルシェがフランス貴族の幽霊たちのために上演する劇中劇の世界、フランス革命のまっただなかの現実界という3つの世界が同時進行するストーリー」なのだそうです。そういうふうに、現実界に重なってふわふわと漂う幽霊の世界が phantasmagoria ということでしょうか。

HKグルーバーは達者な指揮ぶりを披露していました。

それにしても、都響はやっぱり上手いですね。日フィルのプロコフィエフと比べると、つくづく都響の実力を実感しました。

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