これ↑は、「毎日新聞」に載っていたグラフ。サブプライムローン証券化問題に端を発したアメリカの金融危機。にもかかわらず、日本の落ち込みの何と激しいことか!!
要するに、この間の日本経済の「成長」が輸出頼み、外需頼みだったことの反映なのだが、じゃあ、それ以前は輸出で「成長」していたかと言えば、日本の成長率が特に高かった訳でもない。つまり、外需を差し引いて考えれば、日本はむしろ成績が悪かったといえる。
しかし、ともかくこの落ち込みの急激さは前例がない。来月になれば、年末以上の大量解雇「非正規切り」がおこなわれ、日本経済の落ち込みはさらに激しくなる。文字通り「景気の底が抜ける」事態になりそうな状況だ。
GDP大幅減:財政出動、圧力強まる 問われる成長戦略(毎日新聞)
GDP:年率12.7%減、落ち込み深刻 10?12月期(毎日新聞)
GDP大幅減:財政出動、圧力強まる 問われる成長戦略
[毎日新聞 2009年2月16日 21時58分 更新:2月16日 23時15分]
08年10?12月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が歴史的な落ち込みとなり、政府・与党は景気底割れ回避に新たな追加経済対策の策定を迫られることになった。日本経済の成長基盤だった輸出が総崩れとなり、外需頼みの経済構造を転換することが求められている格好だが、追加策は90年代のような「痛み止め」や選挙目当てのバラマキに終わり、「財政赤字を増やすだけ」(アナリスト)との警戒感も強まってきた。
政府は昨夏以降3回にわたり、事業規模総額75兆円の経済対策を打ち出し、08年度の1次補正、2次補正、09年度当初予算を「景気刺激の3段ロケット」(麻生太郎首相)と位置づけ、総額12兆円の財政支出を計上した。
しかし、大和総研の試算によると、2兆円の定額給付金の大半が貯蓄に回ると見られるなど、政策効率の悪さもあって、一連の経済対策がすべて実行されても、GDP押し上げ効果はわずかに1%程度にとどまる見込みだ。
政府は中小企業の資金繰り対策の資金枠30兆円まで拡大するなど金融安定化の努力もアピールするが、今の日本経済は「貸し渋りだけが問題なのではなく、輸出急減で企業活動そのものが縮小する危機的な状況」(経済官庁幹部)だ。財政出動で需要の急激な落ち込みを少しでも埋め合わせなければ、企業倒産や失業が一気に広がる懸念がある。
「痛み止め」だけでは不十分で、成長力を高める政策が必要だが、与党内の議論は「規模は20兆円超」(幹部)など、追加財政出動の規模に集中。中身については後回しの状態だ。環境投資を増やす日本版グリーンニューディール政策や羽田空港拡張の前倒し工事などは、効果を上げるのに時間がかかることもあり、結局は「手っ取り早い従来型公共事業に多くのカネがばらまかれるのでは」との懸念が指摘されている。バラマキ型の公共事業が一時的な雇用創出につながっても景気を持続的に持ち上げる効果がないことは小渕政権時代の失敗で証明済みだ。
与党内では次期衆院選もにらみ、「赤字国債を増発してでも20兆?30兆円に追加対策を」との声が高まる。将来の成長戦略が伴わない財政出動では、先進国で最悪の財政状況をさらに悪化させる。【清水憲司】◇「30兆円規模の対策必要」野口悠紀雄・早大院教授
日本の景気後退が深刻化したのは、米国の住宅・消費バブル、日本の円安バブル、輸出バブルなど世界的なバブルが同時崩壊したためだ。日本は02?07年の景気拡大期に、輸出から輸入を引いた純輸出が国内総生産(GDP)に占める割合が大きく伸びた。国内の設備投資も拡大したが、世界的なバブルに依存した成長構造だった。
米消費バブルなどが同時に崩壊すれば急激な反動減に見舞われるのは必然で、最終的に日本のGDPは累計で10%縮小、02年の水準まで戻ると見ている。今や輸出製造業の期待成長率はゼロで、悪夢のような話だ。
生産・雇用調整の一段の加速で完全失業率は6%くらいまで上昇する懸念があるが、日本はそんな社会不安を甘受できない。今こそ有効需要を創出するケインズ政策を取るべきで、経済の落ち込みを和らげるには政府は国債発行額を2倍にしても30兆円規模の財政出動をすべきだ。
GDP:年率12.7%減、落ち込み深刻 10?12月期
[毎日新聞 2009年2月16日 9時02分(最終更新 2月16日 11時42分)]
内閣府が16日発表した08年10?12月期の国内総生産(GDP)速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は、前期(7?9月期)比3.3%減、これが1年間続いた場合(年率換算)で12.7%減と3四半期連続で減少した。2けたマイナスは、第1次石油危機時の74年1?3月期(3.4%減、年率13.1%減)以来、戦後2度目。深刻な金融危機と世界景気悪化で輸出が戦後最大の落ち込みとなり、個人消費も減少。内外需の総崩れが鮮明となった。09年1?3月期も大幅なマイナス成長の見通しで、日本経済は戦後最悪の不況に陥ろうとしている。
実質GDPの3四半期連続の減少はIT(情報技術)バブル崩壊後の01年4?6月期から10?12月期以来、7年ぶり。08年の実質GDP成長率は0.7%減となり、99年(0.1%減)以来、9年ぶりのマイナス成長となった。
10?12月期は、輸出が前期比13.9%減と2四半期ぶりに減少に転じ、減少幅は75年1?3月期(9.7%減)を上回った。自動車、電子部品、建設機械などを中心に米国、欧州連合(EU)、アジア向けがすべて大幅に減少した。外需依存で輸出との連動性が高まっている設備投資は5.3%減と4四半期連続の減少で、マイナス幅は加速度的に拡大している。
昨年夏にかけ、急激な物価高で打撃を受けた個人消費は、物価上昇が一服した昨秋以降も、実質賃金の減少や雇用不安の追い打ちで0.4%減とマイナスに転じた。自動車、家電、航空旅客輸送、衣服などの落ち込みが大きかった。輸出から輸入を差し引いた外需寄与度は、輸出の記録的減少によりマイナス3.0%と過去最悪に、内需寄与度もマイナス0.3%だった。
物価変動の影響を含み、生活実感に近い名目GDPは前期比1.7%減(年率換算6.6%減)で、98年1?3月期(2.0%減、年率換算7.7%減)に次ぐ、過去2番目のマイナス幅となった。【尾村洋介】
内閣府が発表したGDP統計は、こちら↓。
これを見て不思議に思ったのは、GDPの落ち込みは、実質で-3.3、名目で-1.7と名目成長率の方が高くなっていること。ということはインフレだということなのだが、民間最終消費支出を見ても家計最終消費支出を見ても、さらに民間企業設備投資を見ても、どれも名目の方が落ち込みが激しい。つまり、デフレなのだ。
デフレなのに、GDPでは名目の方が高くなっているのは、なぜ?
それを解くカギはGDPデフレーターにある。GDPデフレーターを見てみると、7-9月期-1.6%から10-12月期+0.9%へと、2.7ポイントも拡大している。
では、GDPデフレーターとは何か? Wikipediaでは、次のように説明されている。
GDPデフレーター
GDPデフレーターは、名目GDPを実質化して実質GDPを計算する際に用いる一種の物価指数である。このGDPデフレーターの変動が物価変動となり、変化率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみることができる。
GDPデフレーターが消費者物価指数や企業物価指数など他の物価指数と著しく異なる点は、GDPデフレーターは輸入物価の上昇による影響を控除した国内の物価水準を表しているという点である。このため、原油価格の上昇など輸入物価が上昇して国内のガソリン価格が上昇するというような場合には、消費者物価指数や企業物価指数が上昇しているにも関わらず、GDPデフレーターが下落をするということがしばしば起こる。
消費者物価指数は家計の消費支出のみを対象とし、企業物価指数は企業間で取引される商品だけを対象としているなど、消費者物価指数や企業物価指数は、経済活動の一部だけを対象とした物価指数である。これに対してGDPデフレーターは経済活動全般を対象とした総合的な物価指数であるが、輸入物価が上昇すると下落しやすく、逆に輸入物価が下落すると上昇するという、直感と異なる動きをすることがある。
つまり、大幅に円高になったため輸入物価が急激に下落して、本来ならもっと物価が下落してもいいはずなのに、実際の物価はそれほど下がっていない、かっこうになっている訳だ。その差が、インフレとして表われているということだ。分かりやすく言えば、たとえば石油や、日本人が日々食べている食料の60%を占める輸入食料は、円高でずっと安くなっているはずなのに、それが国内価格に反映していない、ということが考えられる。
このあたりは、GDPデフレーターというものをどう考えるか、ということにもかかわって、またいろいろ議論を呼びそうだ。